矯正治療の開始時期-1.平均成長と個成長との問題 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

矯正治療の開始時期においては、顔や顎の成長発育が大きく関係しています。

図12-1は身長および骨などgeneral type (成長発育の項〈19頁〉参照)と呼ばれる成長発育型の成長率をグラフにしたものです。

p222_01

幼年期、少年期、青年期それぞれの時期での成長率が異なっていることがわかります。

成長率は幼年期に急激な減少をみせますが、少年期では緩やかな減少に移行し、青年期で思春期の急激な増加と減少を伴って末期に向かっていきます。このことは幼年期と思春期には大きく成長発育がしますが、その反面少年期では成長発育はあまり急激な変化を起こさず、やや停滞気味になることを意味しています。

顎、顔面についても、このグラフからその成長発育の経過を知ることが可能です。しかしこの曲線はgeneral type の一般的傾向を示しているため、これをそのまま個体の成長にあてはめるわけにはいきません。一人ひとりの成長は、遺伝的な要素も関係しており、必ずしもこのグラフ通りの成長率になるわけではありません。

図12-2はMeredithらが行った顔の成長研究でnasal height (Nasion-Anterior nasal spine)とsubnasal height (Anterior nasal spine-Menton)との成長の比率をグラフにしたものです。

p223_01

男女55名について連続的な観察を行い、その結果得た値でこれを平均成長と呼びます。その資料として用いたもののうち、4つの個体について比率をもとめ、これをグラフに表したのが図12-3です。

p224_01

それぞれの個体がそれぞれのカーブを描き、平均成長のカーブとはかなりかけはなれていることがわかります。このことはつまり平均成長は個体の成長発育(個成長)とは必ずしも一致しないということで、多くの個体を統計的に処理して得た平均成長は、あくまでも一般的傾向を示すものとして理解しなければなりません。したがって平均成長は、個体差の著しい個成長を知る手掛りとしては不十分なものといえます。

成長発育を矯正治療に有効に利用するためには、治療前に、今後の成長発育がどの程度なのか、どの方向にそれがおきるのか、あるいはいつごろあるのかなどをあらかじめ予測することが必要ですが、前述したように、残念ながら個成長の変異があまりにも大きく、一人ひとりで異なっているために、現段階では成長予測はまず不可能ということになります。

しかも「矯正臨床家の当面する問題は、顔の成長パターンが普通とは違って、望ましくない方向に成長するような患者であって、だからこそ予測が不可能なのです」とMooreが述べていることは、この問題をさらに深く掘り下げたものといえます。

以上の観点からわかることは、早期治療を開始するときには、個体の個成長については未知のものがあるということです。
さらにヒトの歯が二生歯であることも忘れてはならない点です。乳歯が永久歯に変わる、歯牙素材が別個のものとなります。そして後継永久歯や大臼歯群の大きさの予測も、顎の成長の予測と同じくむずかしいことです。
以上のことをふまえたうえでの早期治療の目標をどこにおくかが主要な課題となります。

 

2014年11月25日



PAGETOP