矯正治療と組織変化 2.歯の移動と組織変化 -9 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

矯正治療と組織変化 2.歯の移動と組織変化 -9

3.顎の移動と組織変化

顎の近遠心関係を改善するための矯正装置としては、顎間固定装置や顎外固定装置、機能的矯正装置などがあります。それらは症例に応じて用いられていますが、どのような変化が現れて顎の移動が行われているか、2、3の動物実験でのデータを述べます。

顎間固定法を応用した下顎遠心移動の場合Breitnerは、関節結節の骨の添加や後関節突起前壁の骨吸収、後壁の骨添加、下顎頭前壁の骨添加、後壁の骨吸収がみられたと述べています。一方、太田は関節結節に骨の添加が認められなかったと述べています。

勝間が述べている内容は以下の通りです。関節窩については、関節結節部の骨の吸収、後関節突起前壁の骨吸収、後壁の漸加がみられ、関節窩天蓋部から後方にかけて波トウ状の変形がみられる。そして関節円板については、関節窩、下顎頭の波トウ状の変形に一致した像を呈し、外力が最も加わった部分は非常に薄くなって、cell free の像を呈していた。

下顎頭については、上記の関節窩の変形に一致したトウ状の位を呈し、下顎頭、頭頂部付近で後上方への増殖、下顎頭後壁骨の吸収、下顎頭後縁部での後方への彎曲を認めています。なお彼は、年齢的には成獣になるにつれて変化がおそくなると述べています。

チンキャップによる下顎遠心移動は、松井が家兎で実験しました。彼は下顎骨の後方転位と下顎角の狭少を認めたほか、下顎体部の前方への成長発育は著しく抑制され、下顎枝部においてもその後縁より前縁部にかけて骨添加量は減少していたが、下顎体部下縁および下顎角部後縁より外側にかけて、骨皮質への骨添加量は不規則であるが増大し、下顎体部は全体として太く短く著しい変形を認めています。

p242_01

Haupl、Psanskyたちは、成然したサルに筋の機能力を応用した機能的顎矯正法を用いて実験し、関節窩、下顎骨の関節突起の遠心部にはいずれも骨の新生を認め、そのほか上行枝、下顎角部などの筋付着部にもまた明瞭な骨の新生添加を認めています。また、LiebとSchlagbauerは、乳歯列期の赤毛ザルを用い、上下顎の咬合状態に変化をきたすような矯正装置として、図13-19に示したようなアクチバートル(A,B)、顎間固定(C)、Head-gear(D)、下顎を牽引する装置(E)、下顎骨を前突させる装置(F)を装着し、骨のremodelingの状態をfernrontgen写真とtetracyclineによる生体染色法を用いて調べました。

その結果、Breitner、Derichsweiler、Haupl、Psanskyらのサルを用いた実験結果と異なって、骨格の形態変化や測定可能な臨床的変化をおこしたと報告しています。すなわち、片側に(左側)class Ⅱ elastic を6週間位用した顎間固定法の実験では、下顎骨が右側に移動し、左側は正常咬合から下顎近心咬合となり、正中線の偏位をおこし、X線的には中顔面および上顎骨に左右の非対称位が現れたが、頬骨弓までにはその影響は及ばず、歯列弓は歯胚を含めて位置的変化をおこしており、左右の下顎骨のX線写真上では、歯列弓の後端の形態が左側の方が大きくなっています。これは左側の歯列が近心転位をおこし、第1大臼歯と第2大臼歯との間にspaceを生じたためであるとしています。

下顎上行枝では、下顎頸部と頭部に骨増殖が認められています(図13-20)。このことによって外力が下顎の成長にどのように影響を及ぼすかがわかります。

p243_01

一方、下顎骨を顎外力により近心に牽引する実験の場合、昼間6時間と全夜間にわたり装置を作用させたのに、6週目では何の変化もありませんでした。しかし、8~12週目では、咬合状態に変化を生じたため、顎関節部の生体染色の状況より判定すると、下顎骨の関節突起の遠心頭蓋線における骨成長量は対照群の3倍でした(図13-21 C,D)。

このことは実験群と対照群との発育が異なっていることを示しています。対照動物における生理的な成長によって、関節頭の辺縁と骨増殖線まで一定距離をおいて染まっていますが、実験動物では、とくに関節頭の後ろ、関節窩の遠心頭蓋面において骨添加が多く認められました(図13-21 E,F)。

なお、彼らは、矯正治療による下顎骨基底部の変化は、量的には歯槽突起部に比べてはるp244_01かに少ないものの、成長過程のおこる場所に成長方向と一致して観察されたと述べています。

このように、動物に矯正装置を実際に用いることで、骨や歯の移動についての詳細が明らかになりました。

2014年12月17日



PAGETOP