固定 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

固定(Anchorage)7

3.種   類

3.抜歯症例における抜歯空隙利用のための固定の分類

抜歯症例においては技術空隙が正しく利用されるような固定源が選ばれなければなりません。そして、抜歯によって得られた空隙を閉鎖するのに前歯および犬歯を遠心に移動させる距離と臼歯を近心に移動させる距離の割合が治療方針どおりに遂行されなければなりません。そのために、下顎臼歯の近心移動の抜歯空隙への許容量によって次のように分類されます。

1)最小の固定(Minimum anchorage)
2)中等度の固定(Moderate anchorage)
3)最大の固定(Maximum anchorage)

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1)最小の固定

最小の固定とは通常臼歯が抜歯空隙の1/2またはそれ以上近心に移動することが許容されます。一例として、I級の最小の固定の症例においては、犬歯間の排列を行うことが主な仕事となり、通常加強固定を使用する必要はありません。

2)中等度の固定

中等度の固定とは臼歯の近心移動の許容量が抜歯空隙の1/4~1/2の範囲である場合をいいます。Ⅱ級の中等度の固定の症例は最も典型的な治療例です。上顎大臼歯の位置を保持してⅡ級関係を改善しやすくするための加強固定としての顎外固定と、下顎臼歯の近心傾斜を防ぐための準備固定、tip back bend、lip bumper などが使用されます。

3)最大の固定

最大の固定とは、抜歯空隙の1/4以上に臼歯の近心移動が許されない症例です。したがって強力な顎外固定や準備固定が要求されます。
臨床的には、おのおのの症例に応じた固定の重要さを認識して、その固定が治療目的沿って維持されているかどうかに十分な注意を払わなければなりません。歯は常に近心移動の傾向があり、わずかな固定に対する不注意から、固定の破壊・喪失(anchorage loss)をおこし、空隙の不足に悩まされることがあるので、治療中に最大の考慮を要求されます。

歯を動かすためには固定源が必要で、どのように歯を動かすかによって固定の種類が変わることがわかりました。

次は矯正治療を実際に始める前に、歯科医院でどのような検査をするのか、見ていきましょう。

2015年1月7日


3.種   類

2.抵抗の性質による分類

5)準備固定

準備固定とはTweedによって提唱されたもので、固定の保護に対する画期的な技術であるとされています。従来の方法ではAngleⅡ級1類の矯正治療を行う場合、下顎を抵抗源としてⅡ級ゴムを用いて顎間固定によって上顎歯の後退を行い、たとえ不動固定を行ってもゴムリングの相反的な力で下顎歯群が近心に傾斜する傾向があります。これを防ぐためにあらかじめ下顎歯群を遠心に傾斜させておき(図14-14A)、Ⅱ級ゴムによる下顎における固定の破壊をできるかぎり防止しようとする前準備的な方法が、準備固定です。

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そのためその段階では上顎歯の後退を試みることなく、下顎のアーチワイヤ一に下顎歯群を遠心に傾斜させるための複雑な屈曲すなわちsecond order bendを与えておき、Ⅲ級ゴムを使用して遠心傾斜を肋け、その後上顎歯の後退をはかる方法です(図14-14B)。

この一連の手順を準備固定といいますが、これはedgewise法のみに適用される技術です。

これに似た理論で大臼歯の近心傾斜を防いで歯体で抵抗させたり,歯体移動をさせたりするために犬臼歯部のみに用いるアーチワイヤーのtip back bend があります。これに関してはedgewise法、Begg法を参照してください。

 

以上が、抵抗の性質による5種類の分類の説明です。

次に抜歯症例の場合の固定の分類を見ていきましょう。

2015年1月5日


固定(Anchorage)5

3.種   類

1.部位による分類

2.抵抗の性質による分類

2)不動固定

抵抗となる歯(固定歯)が傾斜せずに歯体で矯正力に抵抗するものを不動固定といいます。いいかえれば固定が崩れるような場合には固定歯は歯体移動をするような形の固定をいいます。

このためには固定歯は傾斜移動かおこりにくいような装置で被移動歯と連結される必要がある。図14-12は両中切歯の離開を矯正するために両者にバンドを装着し、傾斜を防ぐために長いスロット(溝)のあるブラケットをつけ、この両者をスロットに適合するワイヤーで連結して、ループあるいはゴムリングで牽引すると、両中切歯は歯体
移動をしながら近接していきます。

3)相反固定

歯および歯群の抵抗を、これに対抗する歯および歯群の移動に利用するかたちの固定を相反固定といいます。この場合、あい対する両者ともに不正位置にあり、同量かつ相反する矯正力が両者を共に正常な位置に移動するようなかたちが多いのが特徴です。

最も代表的な例は前にもあげた中切歯の正中離開を局所的な装置で矯正する場合で、ゴムリングなり金属線の弾力が両中切歯に相反的に働いて両者は正中に向かって相接するまで移動します。すなわち双方が被移動歯とも固定歯ともなるものをいいます。

ひろい意味では矯正的歯あるいは顎の移動は顎内・顎間固定であるかぎり多かれ少なかれ相反固定であることが多くなります。

4)加強固定

前項で述べたように矯正学的歯あるいは顎移動は相反的な固定であることが多いので、抵抗源をさらに補強して固定を保護(anchorage preservation)しようというのが加強固定です。

この目的のためには、固定歯を増加したり、付加装置を加えて口蓋や歯槽部に抵抗を求めたり(たとえばpalatal button),筋肉の機能力を応用したり(たとえばlip bumper)することがあります。

次に述べる準備固定や顎外固定(図14-13B)も加強固定の一種です。

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2014年12月29日


固定 (Anchorage)4

3.種   類

1.部位による分類

2.抵抗の性質による分類

固定はその抵抗の性質によって次のように分類されます。

1)単純固定(Simple anchorage)
2)不動固定(Stationary anchorage)
3)相反固定(Reciprocal anchorage)
4)加強固定(Reinforced anchorage)
5)準備固定(Prepared anchorage)

1)単純固定

抵抗となる歯(固定歯)が傾斜するような形で矯正力に抵抗するものを単純固定といいます。いいかえれば固定歯の傾斜移動に対する抵抗を歯牙移動に利用することをいいます(Graber)。

簡単な例では、図14-11Aに示すように正中離開のある両中切歯をお互いに一点で連結することで、弾線なりゴムリングなりで近心移動を行う場合、両中切歯は傾斜をしながら近心に移動し相接するようになります。

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この両中切歯は根面積がほぼ同じであるため、お互いが披移動歯ともなるし固定歯ともなります。その意味では単純固定でもあり、後述する相反固定でもあるといえます。

次に図14-11Bに示すように大臼歯を固定歯として前方歯を遠心に移動する場合を考えると、両者を一点で連結した場合、大臼歯は多根歯で根面積がはるかに大であることから抵抗が大きく、強大な矯正力を用いないかぎりは前方歯だけが傾斜移動をしながら遠心に移動します。

この場合でも強い矯正力を用いれば大臼歯でも傾斜移動をします。
このようなかたちの固定を単純固定といいます。

2014年12月27日


固定 (Anchorage)3

3.種   類

1.部位による分類

3)顎外固定
歯や顎を移動する場合の抵抗原を口腔外に求めた場合を顎外固定といいます。通常、その抵抗源は頭部か頚部に求められ、この場合の抵抗源は口腔内にある場合より強固で、作用される領域に強い力を加えることができます。影響を受ける部分は歯のみにとどまらず、周囲の骨にも作用して、いわゆる整形力(orthopedic force)となり得ます。主なものとしてヘッド・ギアーと順帽装置が挙げられます。

(1) ヘッド・ギアー(Head gear)

通常、フェイスボウとヘッド・キャップまたはネックバンドから構成されます。フェイスボウは内線(inner bow)と外線(outer bow)とからなっており、内線の先端の近くには止めをつくり、大臼歯バソドに付けられた頬面管内へそう人します。外線の先端は曲げられており、その部とヘッド・キャップまたはネックバンドとの間をゴムで牽引することによって、大臼歯を遠心に移動させるような力を与えます(図14-7)。

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これは大臼歯を遠心に移動させる目的から、さらに拡大されて、上顎骨の前方成長を抑制するはたらきをもちます。ヘッド・キャップの形態はその牽引方向によって種々のものがあります。すなわち、垂直牽引(vertical pull)、上方牽引(high pull)、水平牽引(straight pull)、下方牽引(low pull)などがあります(図14-8)。

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(2)頤帽装置(Chin cap)

オトガイ部に頤帽をあてがい、頭部のヘッド・キャップを抵抗源として、下顎頭の方向へ牽引することによって、下顎の成長を抑制しようとする装置のことです(図14-9)。
また、頤帽装置の応用として後頭部とオトガイ部と2つの抵抗源をもった後頭オトガイ部固定装置があり、後頭部を抵抗源として下顎の成長を抑制する一方、オトガイ部を抵抗源として上顎を前方へ牽引し移動させようとします(図14-10)。

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2014年12月25日



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