固定 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

固    定 (Anchorage)2

3.種   類

固定はいろいろな観点から分類され、命名されています。ここでは部位による分類、抵坑の性質による分類、抜歯空隙利用のための分類について述べます。

1.部位による分類

固定はその固定源となる部位によって次の3つに分類されます。

1)顎内固定(lntramaxillary anchorage)
2)顎間固定(lntermaxillary anchorage)
3)顎外固定(Extraoral anchorage)

1)顎内固定
抵坑源となる歯が移動される歯と同じ顎内にある場合を顎内固定といいます。たとえば、舌側弧線装置に補助弾線を鑞着して歯を移動する場合を考えると、舌側弧線装置の維持歯である第1大臼歯は固定歯となります。また第1小臼歯を技去して犬歯を遠心に移動させる場合のセクショナル・アーチも、第2小臼歯、第1大臼歯を固定歯とした顎内固定です(図14-4)。

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2)顎間固定

歯や顎を移動させる場合にその抵坑源を対顎に求めた場合を顎間固定といいます。これは通常上下顎のアーチをゴムリングで連結して行われ、そのゴムリングの牽引の方向によって次のように分類されます。

1)Ⅱ級ゴム、 2)Ⅲ級ゴム, 3)垂直ゴム

(1)Ⅱ級ゴム

上顎歯列弓のほぼ犬歯部から、下顎大臼歯部に向かってかけられるゴムリングで、上顎前歯の舌側移動、下顎の近心移動、上顎大臼歯の遠心移動などに用いられます(図14-5A)。

(2)Ⅲ級ゴム

下顎歯列弓の犬歯部から上顎大臼歯部に向かってかけられるゴムリングで、下顎前歯の舌側移動、下顎の遠心移動、下顎大臼歯の遠心移動などに用いられます(図14-5B)。

(3)垂直ゴム

上下顎間に上下的に大体垂直になるようにかけられるゴムリングで、開咬の治療などに用いられます。また、鋏状咬合の治療に用いられる交叉ゴム(cross elastics)も垂直ゴムの一種です(図14-6)。
このほか三角形、四角形などにゴムリングを緊張する場合もあります。

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2014年12月23日


1.定   義

1)固定とは歯あるいは顎の移動を行う場合にその抵抗源となるものをいう(高橋)。
2)矯正力にうちかつ抵抗をいう(Salzmann)。

2.意   義

物体がある力で牽引された場合、その反作用として必ず同じ力が牽引する側にも加わることは、初等力学の法則でも明らかなことです。矯正で歯や顎の移動を行う場合も同じことで、その移動に対する抵抗となる場所が存在しなければならず、これを固定源といいます。

矯正装置によって歯や顎を移動する場合、力が加わる場所として、装置によって生ずる力に対して抵抗する領域と、作用して移動が行われる領域とが生じます。そして、力に抵抗する固定源が十分に大きな抵抗を示すならば、作用する歯や顎も十分に移動されることが可能ですが、逆に固定源における抵抗が不十分であった場合には、その固定源は不安定となり相反的に移動することになります。したがって、矯正装置を装着して力を作用させる場合には、固定源と作用される領域との間の抵抗の強さの関係を熟知して,合目的な移動が行われるよう設計されなければなりません。

問題を個々の歯の移動ということに限定して考えてみましょう。個々の歯の移動を行って歯列弓内の抵抗を改善するごく簡単な方法の一例として舌側弧線装置に補助弾線を鑞着して、補助弾線の力で前歯を唇側に移動する場合を考えてみましょう(図14-1)。

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この場合前歯を唇側に移動する力は同時に抵坑源(固定歯)である第1大臼歯に対しては遠心に移動する力となります。この装置では補助弾線は単に一点で歯に接して矯正力を加えているため、前歯は傾斜移動をしますが、第1大臼歯は精密な維持装置で連結されているので、歯根で抵坑しています。したがって歯根面積の大小、移動方法などの遠いから第1大臼歯が遠心に移動することはまずおこり得ないため前歯の唇側移動が可能となります。
Stonerは歯の移動のおこりやすい、いいかえれば抵坑が少なくてすむ歯牙移動は次のような順序であるとしています。

1)小さな歯の挺出           9)前歯の舌側への歯体移動
2)大きな歯の挺出           10)臼歯の遠心への傾斜
3)前歯の傾斜             11)犬歯の遠心への歯体移動
4)犬歯の遠心への傾斜         12)臼歯の近心への歯体移動
5)臼歯の近心への傾斜         13)前歯の圧下
6)臼歯の頬側または舌側への傾斜   14)臼歯の遠心への歯体移動
7)前歯の近心または遠心への歯体移動 15)臼歯の圧下
8)犬歯の近心への歯体移動

同じ大きさの力が反対方向へ加わる場合、歯の大きさと移動の型が同じであれば、同じ距離の反対方向への移動が生じます。たとえば正中離開の治療の場合には、左右中切歯は互いに同じ量で離開された空隙の中央への移動が可能となります(図14-2)。

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しかし、両中切歯の一方へ圧下の力を、他方へ挺出させる力を加えた場合は、挺出はされやすく、圧下はされにくいので、同じ大きさの力を加えた場合には、挺出の効果は著明に現れ、圧下の結果は少しわかりにくくなります(図14-3)。

このように効果的な歯の移動を考える場合には、固定源がどれくらいの強さを持っているかを知って固定をコントロールする能力が要求されます。とりわけ、抜歯症例においては、固定がどのように用いられるかを考慮して力系をたてることが重要になってくる。これは抜歯という歯列弓の連続性の破壊によってくる、後方歯の近心移動の傾向に対して、抜歯で得られた空隙をいかに有効に利用するかにかかっており、そのために固定の方法を最も効果的に選ばなければなりません。

2014年12月21日



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