12月 | 2014 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

2.歯の移動と組織変化

2.矯正力の特性と組織変化との関係

2)作用様式(Duration of the force)

歯が移動すると、これに加えた力は減少するがその程度、あるいは働き方によって、矯正力を3種類に大別できます。

1)持続的な力(Continuous foree)
2)断続的な力(lnterrupted force)
3)間歇的な力(lntermittent force)

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矯正力の減少してゆく程度が比較的ゆるやかな力をcontinuous force といい(例えば舌側弧線装置の補助弾線による力や、コイルスプリング、エラスティックによる力)、これに対して減少が早く、すぐに0となり、これを繰り返すことによって歯を動かす場合の力をinterrupted force といいます(例えば結さつによる力や、スクリューによる力)。

一方、アクチバートル、咬合斜面板のように、一定時間だけ作用させるものをintermittent forceといいます。
組織学的には、continuous force の場合、歯根膜が圧縮、あるいは牽引され続け、interrupted、intermittent force では圧縮または牽引が、休止と交互におとずれます。そのため力が強い場合は、前者の方が硝子様変性が残留しやすいといわれていますが、どちらが歯の移動に適しているかについては、現在結論が出ていません。

2014年12月9日


2.歯の移動と組織変化

2.矯正力の特性と組織変化との関係

1)力の大きさ

(2)最適な矯正力(Optimal orthodontic force)
最適な矯正力について、0ppenheimとSchwarzは、毛細血管の血圧20~26g/cm2以下の
力が、歯根膜の血行障害をおこさず、最も生物学的に好ましい歯の移動を可能にするものだとしています。これに対して、近藤は80g/cm2というかなり大きい値を示しています。

StoreyとSmithは、第1小臼歯の抜去後その抜歯空隙に向かって犬歯を牽引する必要の
ある患者の、一側にlight force(175~300g)、他側にheavy force(400~600g)の力を与えました。
その結果、light force が使用された側では、犬歯は最少load level に到達するまで動きませんでした(B-level)(図13-9)。
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荷重のA-B範囲では、圧追側において歯根膜は圧迫されているものの骨の吸収は始まっていない状態にあります。
B-level以上の荷重では骨吸収をおこし、C-levelに到達するまで、犬歯を速かに動かしました。
荷重がこのlevelを越えると歯の移動が全く止まることから、C-levelが犬歯牽引に対するoptimal force であるとしています。

一方、heavy force が使用された側では、初期には犬歯がほとんど移動しないか、ほんの少ししか移動しませんでした。しかし、anchor units (第1大臼歯と第2小臼歯)は近心に動かされました。

力が200~300 g のleve1に減少したときには(anchor unitsの移動に起因)、anchor unitsの移動は止まり、犬歯はlight force に記述されているように遠心に動かされました。このことは、歯を動かすのに必要な根面積に対するoptimal load が、ほぼ同じであって、差は全根面積に起因していると述べ、矯正力として最適な力が使われた場合の歯槽骨の吸収の割合は、1日当りほぼ0.1mmであるとしています。

そのほか、歯の移動に最適な矯正力については、種々の考え方があるが、それは歯の移動速度が最大のときの力で、しかも歯の移動に伴う歯周組織の改造が最も効果的に現れるときの力であるといえよう。

臨床的に、矯正力が適当であるときには、以下の状態であるとされています。

1)矯正力の働いている歯に自覚的疼痛がない
2)打診に対して著しい反応がない
3)歯の弛緩動揺が著しくない
4)歯および顎の位置が、治療方針に従って変化する有様が明瞭にわかる
5)X線診査の結果、歯根膜、その他周囲組織に病的な変化が認められない

2014年12月7日


矯正治療と組織変化 2.歯の移動と組織変化 -3

2.歯の移動と組織変化

2.矯正力の特性と組織変化との関係

生理的な歯の移動と矯正学的な歯の移動とにみられる組織反応には、根本的には大きな違いはありませんが、矯正治療では歯はより早く大きく動くため、その結果として、矯正力によって誘発される組織変化は、より著明で広範囲にわたります。

一般的に歯に加えられる矯正力の性質が異なると、それによって生ずる組織変化も異なってきます。矯正力が有する特性としてStonerは4つあげています。すなわち、
力の大きさ(Degree of force)
作用期間(Duration of force)
作用方向(Direction of force)
作用分布(Distribution of force)

それぞれの特性と組織変化との関係を以下に述べます。

1)力の大きさ

(1)強い力(Heavy force)と弱い力(light force)

力の強弱により圧迫側、歯根膜の圧縮度が異なり弱いときには僅かに圧縮されますが、強いときには歯根膜は強く圧縮されます。極端に力が強い場合には歯根と歯槽骨が接触することもあります。圧縮の度合いが少ないときには、歯根膜はわずかな充血をきたし、これに接している歯槽壁に破骨機転が生じます。これを、直接性吸収(direct resorption)といいます(図13-7)。

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これに対して圧縮の度合いが強いときには、圧の中心近くの歯根膜は貧血をきたし、程度が強ければ、歯根膜は硝子様変性に陥り(図13-8)、これに接した歯槽壁からは吸収機転はおこらずに、圧の中心部を少し離れた所や近接の歯槽骨髄に骨の吸収機転が始まり、圧の中心部の歯槽壁へ側面あるいは背面から吸収が進行します。

この型の吸収を穿下性吸収(undermining resorp-tion)、またはindirect resorptionといいます。穿下性吸収をとると歯根にも吸収機転が生じやすいという特徴があります。

牽引側では骨の添加の活性は増加しますが、それが一定の水準に到達するのは、圧追側の骨が取り除かれてからになります。そして、束状骨(bundled bone)と呼ばれる新しい骨が歯槽骨表面に形成されます。

なお、歯根膜の圧縮の度合いと組織変化との間には、上に述べたような関連がありますが、歯根膜の圧縮は必ずしも力の大きさと直接的に結びついているものではありません。歯根の形態、歯槽骨の状態、歯根膜の形態、力の加え方などにより異なるために、何グラム以下がlight force であるとかそれ以上がheavy force であるとか決めることのできるものではありません。

また、組織の感受性は、同じ量の矯正力を与えたとしても、個体によって、また同一個体においても年齢、性差によって違います。たとえばReitanは、若年者では、組織変化は30~40時間後に現れ(ときには10~20時間後に現れることもある)、成人の場合には、若年者の場合の約4倍の時間が必要になるとしています。

2014年12月5日


2.歯の移動と組織変化

1.歯周組織の経時的変化

矯正治療中におこる組織反応の基本的様相を時間の経過を追って考察すると、歯の移動には通則があることがわかります。すなわち矯正力を歯に作用させると、歯は力の作用方向へ移動します。
そのとき作用方向の歯根膜は圧迫され、その部分の歯槽壁は吸収されます。一方、反対側の歯根膜は広くなり、その部分の歯根膜線維は牽引されて歯槽壁に骨新生をきたし、その結果、歯は力の作用方向へ移動していきます。このときの組織変化は次のような段階をたどって進んでいきます。

1)移動方向の歯根膜(圧迫帯歯根膜)の変化
① 貧血帯とモの周辺に充血帯が出現
② 貧血帯組織の退行変性一硝子様変性

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③ 充血帯のあとに破骨細胞、肉芽組織の増殖
④ 破骨細胞、肉芽組織により、歯槽骨の吸収と変性組織の消失
⑤ 肉芽組織中に膠原線維の形成一歯根膜線維
2)移動の反対方向の歯根(牽引帯歯根膜)の変化

① 歯根膜線維の伸展
② 骨芽細胞、セメント細胞、線維芽細胞の増殖
③ 類骨、類セメント質、膠原線維の形成
④ 類骨、類セメソト質に石灰沈着→線維骨、セメント質
⑤ 歯槽壁の改造(部分的な吸収と添加の組み合わせ)

 

2)歯槽骨の変化
1)歯槽骨髄の変化
① 充 血
② 骨髄壁の添加と吸収→歯槽骨髄の改造
2)歯槽骨外側の変化
① 移動方向外側に骨添加
② 移動の反対方向外側に骨吸収
歯のmigrate中に沈着した新しい組織には、石灰化の種々な段階がみられます。すなわち骨様組織(osteoid)、束状骨(bundle bone)および層板骨(lamellated bone)です(図13-5)。

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3)歯肉の変化
① 移動方向の歯肉が盛りあがり、反対方向の歯肉が牽引されます
② 歯肉組織の吸収と増殖による改造。なお、歯肉には図13-6のような線維が含まれています

 

力をかけることによって歯を移動させる際に、歯根膜と歯槽壁とにどのような変化が起こるのか、更に詳しくご説明していきます。

 

2014年12月3日


矯正治療と組織変化(Tissue changes incident to tooth movenlent)

2.歯の移動と組織変化

矯正学的な歯の移動に関して初めて実験的に証明したのはSandstedt(1904)で、イヌを材料として前歯の舌偏移動の実験を行い、そのさい現れた骨の組織変化を研究しました。その結果、圧迫側には骨の吸収を、牽引側には骨の新生添加があらわれ、さらに歯根膜に硝子様変性組織を観察しました。

ついで、0ppenheim(1911)は、若いヒヒによる実験で、組織反応の様相が矯正力の大きさによって違いがあることや、骨の改造機転が歯槽骨の全体に及ぶものであることなどを発表しています。そしてこれを骨転化説と名づけました。

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また1950~60年には、組織変化の経過の全貌を知るための研究が行われ、図13-1のように、破骨細胞や骨芽細胞の出現の時期や骨の吸収、添加の進 行についての研究が行われました。最近では従来の組織変化だけでなく、組織化学的な方法やラジオアイソトープの活用や、電子顕微鏡による超ミクロのレベル での観察、エレクトロニクスの生理学への応用によって広く研究されています。

 

2014年12月1日



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