1月 | 2015 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

4.口腔模型製作

(6)トレーの撤去と印象材の固定

印象材が硬化したらトレーの撤去を行います。撤去しにくい場合には鎖側に手指を入れ静かに押したり、印象材と粘膜面との間に少量の空気や水を入れると比較的簡単にはずすことができます。口腔外に取り出したらすぐに水洗し、固定液2%ZnS04溶液に入れて30秒ぐらい固定し、できるだけ早く石膏を注入します。

(7)石膏泥の注入

矯正用の口腔模型には一般に白色石膏、シュールストーン(Surstone 而至化学)、プラストーン(Plastone 而至化学)などが用いられます。石膏泥の注入時に気泡を入れないように吸引混和法、真空埋没法やパイブレータを用いるとよいでしょう。

(8)咬合状態の採得

パラフィン・ワックスを1~2枚重ねるかバイトワックスにて行います。採得方法は、ワックスを軟化して下顎歯列上に静かに保持し、緊張を緩和させてゆっくりと中心咬合位へ誘導します。
上下歯が十分に強く接触したことを確かめ、水で冷やし硬化させます。

(9)模型の調整

咬合面や歯頸部に存在する気泡を取り除き、余分の石膏も切除します。先に採得したワックスにて咬合状態を確かめ、ワク付けの準備をします。咬合が不安定な場合には、モデリングを舌側よりそう入して咬合状態を記録するとよいでしょう。

(10)模型のワク付け

準備された模型にやや大き目にワクを付け、削合用モデル・トリーマーにてトリミングします。咬合平面は、上下顎の基底面と平行になるようにし、模型の高さを6~8cmにすると見やすい模型になります。模型の外部の角度は一定にした方が観察しやすく、整理しやすいでしょう(図15-6)。

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(11)研  磨

模型を乾燥させたのち、模型切石ケン溶液に15~30分入れると表面が硬化され、滑沢になり、よごれも少なくまたよごれをおとしやすくなります。

(12)仕上げ

症例番号、印象採得年月日、氏名、年齢を印記し、模型箱へ収納します。

2015年1月15日


4.口腔模型製作

矯正治療を行う前準備の一つとして、きわめて重要なことは、患者の正確な口腔模型をつくることです。これは、症例の分析、正確な診断、治療方針の決定、治療の経過、予後の判定などに必要な資料となるからです。

一般に、矯正診断で用いられる口腔内模型には、顎態模型と普通模型(平行模型)とがあります(図15-4)。顎態模型についての詳細な説明は他項にゆずることにし、ここでは普通模型の作り方について述べます。

(1)患者の体位および頭の位置

印象を採得する前に、術者のひじの高さと患者の口の位置をほぼ一致させます。頭の位置は上顎の印象の場合はややうつむきの状態に、下顎の場合はややあおかけにすします。

(2)口腔内の清掃

(3)トレーの試適

全顎印象用トレーの種類(図15-5)には,網トレー(林)、アルミニウム製で穴あきトレー(三金)、アルミニウム製で全く穴のないY.S.トレー(山浦)、プラスチック製のD.D.アルギン酸トレー(松風)などがあります。トレーが浅かったり、わずかに小さい場合には、ユーティリティワックスを利用するとよいでしょう。

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(4)印象材の練和

印象材には、シリコンの精密印象材からモデリング印象材にいたるまで種々ありますが、矯正では一般にアルギン酸印象材が使用されています。この種の印象材には、粉末状のアルジエース(Algiace 三金)、ハイ・テクニコール(Hi-Technicol 而至化学)、D・P社のKey to Alginates(松風)、アルジックス(Algix.S 藤森)などがあり、ペースト状のものにはAlgipaste(而至化学)などがあります。

矯正用の模型においては、印象材はやや硬目に練和するのがよく、また硬目の方が嘔吐をふせぐためにもよいとされています。印象面を精密にするためには、印象材をラバーボールにおしつけ十分に練和することが大切です。

(5) トレーのそう入

練和した印象材は、トレーの辺縁よりやや多目に盛りましょう。ただし、あまり多いと後縁から流れ出て嘔吐の原因になったり、あまり少ないと十分に流入しないことになりやすいため気をつけます。
そう人するときには口唇を緊張させないように患者さんをリラックスさせ、鼻呼吸をさせるよう注意します。

1)上顎の印象は、トレーの前方辺縁より約10~15mm離れた所に中切歯切縁をおき、徐
徐に後上方へ加圧します。つぎに上唇を前上方へ伸張し、印象材の流入を確かめます。
トレーは印象材が十分に硬化するまで保持しなくてはなりません。

2)下顎の印象は、まずトレーを歯列上に置いて少し加圧します。つぎに舌を上げてトレー上におかせ、さらに加圧して舌下部へ印象材を流入させます。また下唇を前下方へ伸張し、印象材の流入を確かめます。

3)印象採得時の嘔吐の予防について

① 印象をとる姿勢を正しくします。治療椅子の背盤をおこしてやや前方にうつむかせます。
② 嘔吐をするのは上顎の採得時が多いため、下顎から先に印象するのも良いでしょう。
③ 患者さんの不安感を取り除くため、肩の力をぬいて大きく深呼吸してもらうのも良いでしょう。
④ 軟口蓋部にあまり多くの印象材が流れ出ないように注意します。
⑤ 舌を後下方に引き、あまり動かさないように指示します。
⑥ 嘔吐が始まっても、ラバーボールか膿盆などで汚物をうけ、印象採得はできるかぎり途中でやめない方がよいでしょう。

2015年1月13日


矯正治療の前準備
(Orthodontic examination)

2.顔貌の診査

不正咬合と顔の形態および口腔周囲組織とは、密接な関係がある。

視診および触診

1)顔の形状
円型、卵円型、おも長など

2)左右の対称性

3)顔の表情の観察
とくに自然な状態、話をしているとき、微笑しているときの表情に注意

4)上下口唇の形態および口腔周囲軟組織の緊張状態

5)舌を含めた口腔周囲筋の動きを観察
嚥下癖、弄舌癖などに注意

6)額部から鼻尖へ、鼻尖からオトガイ部へいたる側貌の観察(図15-2)
上顎部の凸型(convex type)、直線型(straight type)、凹型(concave type)など

7)上下顎骨の発育状態

8)オトガイ部および下顎角の大小

不正咬合の方は顔貌に特徴がある場合があり、顔貌の特徴から不正咬合がわかる場合が多くあります。
それを探るために、様々な角度からお顔の形や左右対称であるか、舌や口の周りの筋肉の動き等について、細かく観察を行います。

特に反対咬合特有の顔貌の場合は、それが強いコンプレックスになっている方が多くおられますので、自然な顔貌になることを治療の目標とします。

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3.口腔内の診査

つぎに口腔内の診査を行う。

1)主訴の確認
患者と術者では咬合の不正をとらえる観点に相違がある

2)顔面の正中線と上下歯列弓の正中線との関係

3)咬合状態の観察
前歯の被蓋、上下顎の近遠心的、頬舌的、垂直的な咬合状態を調べる

4)個々の歯の状態を観察
歯数の確認、乳歯の早期喪失、晩期残存の有無、う歯の処置状況など

5)歯周組織疾患と口腔の清掃状態
歯ぐきの健康状態、歯面の清掃状態、小帯の付着部位と状態など

6)舌の大きさと機能の状態など
口の開閉時、安静時、会話時、唾液嚥下時などにおける舌の位置や動き、またそれに伴う口腔周囲筋の動きを観察

7)下顎の閉鎖路および運動様相の観察
早期接触の有無、習慣性閉鎖路など

8)不良習癖(悪習慣)の歯列弓への影響

 

2015年1月11日


矯正治療の前準備
(Orthodontic examination)
1.一般的診査

調査用紙(表15-1)に基づく問診。不正校合の状態により項目の重変性は多少相違するが、一応次の事項については碩かめておかなくてはなりません。

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1)本人の氏名:在学校名と学年、生年月日、年齢

2)保護者の氏名:本人との続柄、住所、職業あるいは勤務先、転勤あるいは移転の有無、
電話番号

3)遺伝関係の調査:①全身的および口腔歯に関する遺伝的背景ならびに先天性異常の有
無、②祖父母、父母、兄弟、姉妹、伯父伯母、従兄弟などについての咬合状態および顔
貌の診査

4)出生および授乳方法:①異常分娩かどうか、②保育器の使用の有無、③母乳、混合
栄養あるいは人工栄養か、④ゴム製乳首使用の有無

5)発育および健康状態:①身長,体重の増加量(図15-1)(過去数年にさかのぼって調べた方がよい)、②幼死期の重篤な疾患の有無;内科的、耳鼻科的、内分泌系の疾患、口腔および顎顔面の外傷などについて

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6)不良習癖の有無:①種類、動機、期間および程度について習癖の不正咬合への影響な
ど、②弄唇癖、弄指癖、弄舌癖、口呼吸などの有無

7)口腔内の変遷状態:①乳歯う蝕と治療の様相、②永久歯の萌出状態、③不正咬合の
出現時期

8)心理的背景:①気質について、②家庭内における患者の地位、③嗜好品などについ

9)矯正治療に対する要求の度合い、知識および協力態度:①主訴について、②治療の要
求は本人か保護者か、③矯正治療を知った動機、④紹介してくれた人、あるいは歯科医
師名

10)その他、特記すべき事項:特異体質の有無などについて
なお、記載してもらった事項と術者が観察する実際の症状が相違する場合があるから注意しなくてはなりません。その相違を発見するためには、顔貌の診査や口腔内の診査について術者が記載する院内診査用紙(表15-2)を用意する必要があります。大切な項目については、調査が重複するのもやむをえないでしょう。

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矯正歯科医院では、実際に治療に入る前に以上のような問診が行われています。

様々なご質問をすることによって、患者さんに最適な治療計画を立てていきます。

 

2015年1月9日


固定(Anchorage)7

3.種   類

3.抜歯症例における抜歯空隙利用のための固定の分類

抜歯症例においては技術空隙が正しく利用されるような固定源が選ばれなければなりません。そして、抜歯によって得られた空隙を閉鎖するのに前歯および犬歯を遠心に移動させる距離と臼歯を近心に移動させる距離の割合が治療方針どおりに遂行されなければなりません。そのために、下顎臼歯の近心移動の抜歯空隙への許容量によって次のように分類されます。

1)最小の固定(Minimum anchorage)
2)中等度の固定(Moderate anchorage)
3)最大の固定(Maximum anchorage)

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1)最小の固定

最小の固定とは通常臼歯が抜歯空隙の1/2またはそれ以上近心に移動することが許容されます。一例として、I級の最小の固定の症例においては、犬歯間の排列を行うことが主な仕事となり、通常加強固定を使用する必要はありません。

2)中等度の固定

中等度の固定とは臼歯の近心移動の許容量が抜歯空隙の1/4~1/2の範囲である場合をいいます。Ⅱ級の中等度の固定の症例は最も典型的な治療例です。上顎大臼歯の位置を保持してⅡ級関係を改善しやすくするための加強固定としての顎外固定と、下顎臼歯の近心傾斜を防ぐための準備固定、tip back bend、lip bumper などが使用されます。

3)最大の固定

最大の固定とは、抜歯空隙の1/4以上に臼歯の近心移動が許されない症例です。したがって強力な顎外固定や準備固定が要求されます。
臨床的には、おのおのの症例に応じた固定の重要さを認識して、その固定が治療目的沿って維持されているかどうかに十分な注意を払わなければなりません。歯は常に近心移動の傾向があり、わずかな固定に対する不注意から、固定の破壊・喪失(anchorage loss)をおこし、空隙の不足に悩まされることがあるので、治療中に最大の考慮を要求されます。

歯を動かすためには固定源が必要で、どのように歯を動かすかによって固定の種類が変わることがわかりました。

次は矯正治療を実際に始める前に、歯科医院でどのような検査をするのか、見ていきましょう。

2015年1月7日



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