7月 | 2015 | 矯正歯科コラム

矯正歯科コラム

矯正治療に必要な器具および材料-23

2.ループの力学

2) ループの矯工力

つぎに、ループの形状として、simple loopとhelical 100pについて、嬌正力の変動を考えてみましょう。たとえば、elgiloy O.016〃φ(約4 mmφ)について、h=10mm,、R=1.5mmとした場合の荷重―たわみ線図は、図16-12のようになります。simple loopでは、1mmのたわみを与えるのに31.4gの荷重が必要ですが、helical loopではわずか17.1gの荷重が必要です。

このことから、ループに一定のたわみを与えるための荷重は、simple loopのほうがhelical loopよりも1.8倍だけ大きいことがわかります。逆に、一定荷重に対するたわみは、helttal loopのほうがsimple loopよりも大きいです。

このように、ループにhelicalをつけると、simple loopの場合よりも弾性エネルギーの吸収能力は増大し、いっそう弱い持続的な矯正力が得られます。

3)コイルスプリングの矯正力

ワイヤーをコイル状に巻いてコイルスプリングにすると、図16-13のように一定荷重当たりのたわみは非常に大きくなります。また、弾性限度に達するまでのたわみが大きいので、弾性が広範囲に及びます。したがって、エネルギーの吸収能力が大きいので、復元力が増加します。

そのようなことで,、コイルスプリングでは、ループの場合よりさらに十分な弾力性が期待できます。したがって、歯の移動距離は大きくでき、しかも弱い持続的な強制力が得られることになります。

2015年7月30日


矯正治療に必要な器具および材料-22

2.ループの力学

1) ワイヤーとループの関係

ワイヤーを歯の移動に利用する場合、実際にはワイヤーをループ状に形成して用いることが多くあります。

図16-8に示すとおり、ワイヤーにおける荷重とたわみの関係をOAとすると、ループの場合はOA′のように直線の勾配がかなり緩やかになります.

p306_02

ここで図169のようにたわみBを一定にすると、ワイヤーの荷重はC、ループの荷重はC′ となり、ループのほうが荷重は小さく、矯正正力は弱くなります。すなわち、“ light force”となります。

一方、図16-10のとおり、荷重Cを一定にすると、ワイヤーのたわみはB、ループのたわみはB′となり、ループのほうがたわみは大きくなります。

p307_01

両方の弾性エネルギーを比較すると、ワイヤーの弾性エネルギーは△OAB、ループのそれは△OA′B′となり、ループのほうが多くのエネルギーを蓄えていることになります。したがって、ワイヤーよリループのほうが、矯正力は長い間持続的に作用します。すなわち、“ continuous force”になります。
このようなわけで、ループからは矯正力として必要な弱い持続的な力、すなわち、”light
continuous force”が得られることになります。

 

2) ループの矯工力

図16-11のように、ループの寸法と形状が変わると、当然矯正力の大きさは変化する。一般に、ループの高さh、円弧部の半径Rは大きくなると矯正力は弱くなります。また、ワイヤーの太さは、太くなると矯正力は逆に強くなります。さらに、円型のフイヤーよりも角型のワイヤーのほうが矯正力は強くなります。

p307_02

p308_01

 

2015年7月23日


矯正治療に必要な器具および材料-21

3. 矯正治療に必要な力学

4) 弾性エネルギー

臨床的には、ワイヤーに蓄えられた弾性エネルギーの放出により、ワイヤーがもとに戻ろうとする弾力性が矯正力として利用されています。したがって、弾性エネルギーが大きいと弾力性は増加します。その結果、長期間にわたって持続的な矯正力が発現できるようになります。

図 16-6に示すように、弾性限度の高低で弾性エネルギーを比較すると、△OABと△OA′B′のように、弾性限度の高い後者のほうが弾性エネルギーは大き くなります。このことから、熱処理前後のワイヤーでは、熱処理後のほうが、弾性エネルギーは増大することがわかります。

5)強 度

図 16-7で示すとおり、弾性限度を越えてさらに荷重を大きくするとたわみが著しく増加し、最大応力を越えると、ついには内部に破壊応力が生じてワイヤーは 破折してしまいます。弾性限度を越えない荷重でも、その荷重が繰り返して加わると、ワイヤーには疲れ現象が起きて破折することがあります。このことは、ワ イヤーを屈曲する場合に、同一部位で曲げたり仲ばしたりを繰り返すと破折してしまうことは、誰でも経験していると思います。

p306_01

臨 床上、ワイヤーに生ずる応力としては、矯正力の発現のほかにも、ループなどに屈曲したあとにル―プ内部に残る残留応力、ブラケットヘの装着時に生じる曲げ とねじりの応力、咀嚼中口腔周囲筋の運動に伴う繰り返し応力などがあります。そのようなことで、治療中ワイヤーに加わる荷重は、弾性限度よりも小さい許容 応力以内に留めておく必要があります。

2015年7月16日


矯正治療に必要な器具および材料-20

3. 矯正治療に必要な力学

3)弾性係数(ヤング率)

図16-4でみられるように, 弾性限度内の応力σとひずみεとの比を弾性係数またはヤング率といいます。

EはOAの勾配に相当します。弾性係数はワイヤーの成分組成によって決まり、ワイヤーの特性を特徴づけます。ワイヤー自身の弾性係数は、すでに決まっているので術者が自由に変えることはできません。一般に、金属学的には、コバルトークロム系合金(elgiloyなど)の弾性係数は、ステンレス鋼(resilient wire Australian wireなど)の弾性係数よりもやや大きいことが知られています。

(1)式から、elgiloyのようにEが大きくなると、一定ひずみε当たりの応力σは増大して、矯正力は強くなります。臨床上は、弾性係数の大きいワイヤーでも、ループやコイルスプリング状に形成して,歯に加わる力を弱くしています。

4) 弾性エネルギー

ワイヤーに弾性限度内の荷重を加えてたわみを与えると、ワイヤーの内部にはエネルギーが蓄えられます。このエネルギーを弾性エネルギーまたはレジリエンスといいます。これは、図16-5における△OABで表される三角形の面積に相当します。

図p305-1

2015年7月9日


矯正治療に必要な器具および材料-19

3. 矯正治療に必要な力学

2) 弾性限度と熱処理

治療計画に従って、1本のワイヤーを屈曲して、種々な形態のループを形成することが多くあります。

この場合、術者が曲げやすいためには、弾性限度は低いほうがよいとされます。弾性限度が低いと、屈曲の際に術者がワイヤーに加える力は比較的小さくても、弾性限度を容易に越えて永久変形の領域に入りやすく、屈曲後も永久変形が残るため、ループ状の形態がくずれません。

一方、歯の移動に際して長期間にわたってワイヤーから合理的な矯正力を得るには、弾性限度は逆に高いほうが望ましいとされています。すなわち、弾性の範囲が広くなると、ワイヤーの弾力性が増大します。

さらに治療途中、咀嚼や会話などによって,、ワイヤーには種々な外力が加わり変形する機会が多くなります。このような変形に対する抵抗を増す意味からも、弾性限度は高いほうがよいといえます。

このように、ワイヤーの屈曲時と矯正力の発現時とでは、弾性限度の高低に対する必要条件が全く逆の関係になります。そこで、矯正用ワイヤーとしては、同一ワイヤーで弾性限度を自由に変えられるものが望まれます。

臨床上、このことは熱処理により解決できます。elgiloyやresilient wireでは、屈曲時に比較的柔らかく、種々の形態のループを形成しやすいものが、熱処理によって硬くなり、弾性限度が上昇するため、弾性の範囲が拡大し、矯正力の発現には、極めて都合のよい状態になります。

2015年7月2日



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