
口呼吸とは、鼻ではなく口で呼吸を行っていることを指します。何らかの理由で口呼吸が習慣化してしまうと全身の健康に様々な影響があります。口呼吸がもたらす影響や、それによって形成される「特徴的な顔」についてご説明します。
口呼吸が顔に与える影響とは?
口呼吸が習慣化することで、お顔に以下のような特徴が現れることがあります。
- 口元が突出する・・口呼吸により、唇や頬の筋肉が正しく使われないため、口元が前に出てしまう傾向があります。
- 顔が縦に長くなる・・下顎が適切に発達しなくなり、顔全体が縦に長く見えるようになります。
- 鼻の形や位置の変化・・鼻呼吸ができないと鼻の発達が妨げられ、結果的に鼻の形にも影響が出ることがあります。
これらの特徴は、医学的には「アデノイド顔貌」とも呼ばれ、特に成長期の子供に影響が出やすいと言われています。
アデノイド顔貌の特徴とは?
1. 口元の突出と唇の変化
口呼吸が続くことで、下唇が常に緩んだ状態になり、結果的に上唇と下唇の位置が不均衡になります。この変化は「口元が開きっぱなし」などの見た目にも現れることがあります。
- 口が開きっぱなしになる
- 口角が下がることで、不機嫌そうな印象を与える
- 唇が乾燥しやすくなる
特に、下唇が常に乾燥している場合や、口角が下がるケースも見受けられます。これにより、表情が不機嫌そうだったり、疲れた印象を与えることがあります。
2. 顔の縦方向への成長
顔が縦に長くなる要因としては、上顎骨の成長が正常に進まず、下顎が後退することが挙げられます。特に成長期の子供では、この影響が強く現れます。
- 面長な顔立ちになる
- 顎関節症のリスクが高まる
- 咀嚼機能の低下で消化に影響を及ぼす
また、顎関節症のリスクが高まり、咀嚼(そしゃく)の効率が悪くなり、消化に悪影響が出る可能性もあります。
3. 頬骨や顎の発達への影響
頬骨の発達が不十分になることで、顔の横幅が狭くなる傾向があります。このため、顔が細長く見えるようになります。また、下顎の発達が妨げられることで、顎から首へのラインがはっきりしない輪郭になることもあります。
- 顔の横幅が狭くなる
- 顎の発達が不十分で、輪郭がぼやける
- 表情筋が衰え、老けた印象になる
頬の筋肉が衰えると、顔が平坦に見え、年齢以上に老けた印象を与えることがあります。
4. 歯並びや口腔内の影響
上顎が狭くなることで歯が並ぶスペースが不足し、不正咬合の原因となります。また、舌の位置が低くなることで、歯列の崩れや口腔内の乾燥が進むことがあります。
- 上顎が狭くなり、歯が並ぶスペースが不足する(不正咬合)
- 舌の位置が低くなり、歯並びが悪化する
- 唾液の減少による乾燥で、虫歯や歯周病のリスクが上昇する
加えて、口呼吸により唾液の分泌が減少し、口腔内の自浄作用が低下することで虫歯や歯周病のリスクが高まります。
5. 全体的な顔のバランスの崩れ
鼻呼吸と比べて口呼吸では、顔全体の筋肉が適切に使われないため、顔が左右非対称になったり全体的なバランスの崩れが生じる可能性があります。
顔の表情筋が正しく使われないため、微笑んだ際の笑顔が不自然になる場合もあります。
なぜ口呼吸が顔の形に影響を与えるのか?
顔の形成に影響を及ぼす理由は、主に以下の2つです。
1. 筋肉の不均衡
口呼吸を続けていると、頬の筋肉や舌の位置が適切に機能しなくなります。その結果、顎や頬骨の発達が妨げられ、顔の形に変化をもたらします。
筋肉のバランスが崩れると、肩こりや首の痛みなどの全身的な問題にもつながることがあります。
2. 骨の発達への影響
子供の頃に口呼吸を続けていると、骨格の発達に影響を及ぼします。特に、上顎が狭くなることや、下顎が後退することが報告されています。
骨の発達不全は姿勢の悪化にもつながり、猫背や反り腰を引き起こす可能性があります。
起こりうる健康リスク
顔の特徴的な変化だけでなく、口呼吸は以下のような健康リスクを引き起こす可能性があります。
不正咬合
上下の歯が正しく噛み合わなくなり、矯正治療が必要になる場合があります。
口呼吸を続けると、開咬(オープンバイト)、上顎前突(出っ歯)、交叉咬合(クロスバイト)、下顎前突(受け口)などの不正咬合。
口内環境の悪化
口腔内が乾燥し、唾液による洗浄効果などが働かないため歯垢がたまりやすくなります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
- 口腔内が乾燥し、唾液の自浄作用が低下することで、歯垢や細菌が増えやすくなります。
- その結果、虫歯や歯周病のリスクが上がります。
睡眠の質の低下
鼻呼吸が妨げられることで、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。
- 口呼吸によって気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
- しっかりと深い睡眠が取れず、朝起きたときに疲れが取れないこともあります。
集中力の低下
酸素摂取が不十分になることで、日中の眠気や集中力の低下が見られることがあります。
- 酸素摂取が不足し、日中の眠気や集中力の低下を引き起こします。
- 学習や仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性があります。
免疫力の低下
- 口呼吸では鼻のフィルター機能が使われず、ウイルスや細菌が直接体内に入りやすくなります。
- 風邪やインフルエンザにかかりやすくなるリスクが高まります。
口呼吸を防ぐための方法
口呼吸の改善は、子供のうちに行うことが大切です。大人になるにつれ、癖を治すことは困難になります。改善するためには、以下のアプローチが有効です。
鼻の通りを良くする
アレルギー性の鼻炎のため、鼻が常に詰まっている状態でやむなく口呼吸になってしまっている場合があります。アレルギーに対する治療や、お薬で症状を抑えることで、鼻炎が改善すれば、自然に鼻呼吸が出来るようになります。
- 慢性的な鼻詰まりが原因の場合は、耳鼻科での治療を検討しましょう。
- 自宅でできる鼻うがいを試すのも効果的です。
口呼吸矯正のエクササイズ
簡単なトレーニングを取り入れることで、正しい呼吸方法を習得できます。例えば、「舌を上顎に押し付ける」、「口角を引き上げる」などの練習が有効です。
- 「舌を上顎に押し付ける」「口角を引き上げる」などのトレーニングを行う
- ガムを噛む習慣をつける
日常生活の改善
姿勢の改善やストレスの軽減も、口呼吸を防いでくれます。十分な睡眠やバランスの取れた食事も欠かせません。
- 姿勢を正し、口を自然に閉じる習慣をつける
- ストレス管理をしっかり行い、リラックスした呼吸を意識する
子供の口呼吸への早期対策が重要

特に成長期の子供では、口呼吸による顔や骨格への影響が大きいため、早期発見と対策が重要です。以下の点に注意してみましょう。
子供の寝顔を観察する
寝ているときにいつも口が開いている場合、口呼吸の可能性があります。呼吸音が大きい場合も注意が必要です。毎晩親が寝る前に、子供の様子を観察するようにしましょう。
学校健診でのチェック
学校の健診で指摘された場合は、専門医への相談を検討しましょう。
家庭での習慣づけ
子供に鼻呼吸を意識させるために、家庭内で正しい姿勢や口を閉じる習慣を教えましょう。特に、食事の時に口を閉じて噛むことが出来ているかをこまめに確認しましょう。
学会サイトでの掲載内容
1. 日本小児歯科学会
- URL:日本小児歯科学会 公式サイト
- 関連する情報:「口呼吸が続くと歯並びや顔つきに影響を与える可能性がある」といった趣旨の説明が見られます。
- 補足:小児の口腔習癖が歯並びや顔の発育に影響を与えることについての言及があります。
2. 日本矯正歯科学会
- URL:日本矯正歯科学会 公式サイト
- 関連する情報:口呼吸が「歯並びや顔貌の発育に悪影響を及ぼす」可能性があると記載。
- 補足:矯正治療の観点から口呼吸の影響が示唆されています。
3. 日本耳鼻咽喉科学会
- URL:日本耳鼻咽喉科学会 公式サイト
- 関連する情報:口呼吸が続くと「口腔機能の低下や健康への悪影響」を及ぼす可能性があると記載。
4. 日本歯科医師会
- URL:子どもの口呼吸について
- 内容:「口呼吸が続くと、顎の発達や歯並びに影響を与え、顔の形が変わる可能性がある」といった情報が記載されている可能性があります。
まとめ
口呼吸は顔の形だけでなく、全身の健康にも影響を与える可能性があります。早期の対策と習慣改善により、健康的な呼吸方法を取り戻すことができます。もし口呼吸が気になる場合は、専門家に相談することをお勧めします。
もし、ご自身やお子さんに口呼吸の兆候が見られる場合は、
- 生活習慣の見直し
- 鼻の通りを良くする治療
- 口周りの筋肉のトレーニング
などを取り入れ、鼻呼吸の習慣を身につけましょう。
生活習慣の見直しと専門的な治療を組み合わせることで、顔や健康への悪影響を最小限に抑えることができます。家族や友人と情報を共有しながら、正しい呼吸方法を実践していきましょう。