吹奏楽をしていますが矯正治療出来ますか?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

吹奏楽をしていますが矯正治療出来ますか?

吹奏楽を続けながらでも、矯正治療は可能です。
ただし、楽器の種類や演奏レベル、治療方法の選び方によって、配慮すべき点が変わります。

吹奏楽は、歯並びや口の中の状態が演奏に直結する、非常に繊細な活動です。そのため「矯正治療を始めたら音が出なくなるのでは」「アンブシュアが崩れるのでは」と不安を感じる方は少なくありません。本記事では、そうした不安に対して、歯科矯正の視点から丁寧にお答えします。

吹奏楽をしていますが矯正治療出来ますか?【マンガ】吹奏楽をしていますが矯正治療出来ますか?

この記事はこんな方に向いています

  • 吹奏楽部・楽団に所属していて、矯正治療を検討している方
  • 金管楽器・木管楽器を演奏しており、歯並びの影響が気になっている方
  • 演奏レベルを落とさずに矯正治療ができるか知りたい方
  • お子さんが吹奏楽をしていて、保護者として判断材料を探している方

この記事を読むとわかること

  1. 吹奏楽と矯正治療は両立できるのか
  2. 楽器の種類ごとに注意すべきポイント
  3. 矯正装置が演奏に与える影響と対処法
  4. 演奏者だからこそ知っておきたい治療計画の考え方

 

吹奏楽をしていても矯正治療は本当にできますか?

吹奏楽団

吹奏楽をしている方でも、矯正治療を行うことは可能です。多くの場合、演奏を続けながら治療が進められます。ただし「問題なくできるかどうか」は、治療方法をどう選ぶか、どの時期に始めるかによって左右されます。

吹奏楽と矯正治療は両立可能ですが、計画性が重要です。

吹奏楽では、歯・唇・舌・顎の位置関係が音色や安定性に影響します。そのため、矯正治療による変化を「違和感」として強く感じることがあります。

ただし、これは「演奏ができなくなる」という意味ではありません。多くの演奏者は、一定期間の慣れを経て、再び安定した演奏ができるようになります。

重要なのは、

  1. 楽器の種類
  2. 演奏頻度(部活動・趣味・音大生・プロ)
  3. 矯正装置の種類

これらを事前に整理し、歯科医師と共有した上で治療計画を立てることです。

矯正装置は演奏にどのような影響がありますか?

インビザラインとワイヤー矯正

吹奏楽部によっては部員の矯正治療に反対の立場の指導者がおられるところもあるようです。しかし矯正治療をしているからといって音が出ないわけではなく、楽器によっては矯正装置の影響を受けにくいものもあります。フルートはあまり装置の影響なしに音を出すことができるようですし、トランペットやトロンボーンなどの、マウスピースをつけて演奏する金管楽器もあまり影響がないようです。オーボエ、クラリネット、サックスなどの木管楽器はリードを噛む必要がありますので、矯正装置による影響がやや出るともいわれます。

最初は違和感が出やすいですが、慣れるケースがほとんどです。

矯正装置のために音が出しにくい

矯正治療では歯にブラケットなどの矯正装置をつけて歯並びをきれいに整えていきます。しかし矯正装置をつけると楽器のマウスピースやリードが装置に当たってしまい、隙間からわずかに空気が漏れてしまうために楽器を演奏する際に音が出にくいということが起こります。

吹奏楽のどの楽器であっても、矯正装置をお口につけていることで多少は音が出しにくくなります。音が出なくなるわけではありませんが、装置をつけて演奏することに慣れる必要があるため、練習量が、装置を付けない場合よりも多く必要になる場合があります。

矯正装置が当たって痛い

金管楽器は、マウスピースを唇に押し当てて吹くため、ブラケットが唇の内側の粘膜に押し付けられて痛みが起こることがあります。

木管楽器を吹く時は上の前歯にリードをあてた状態で、下唇を巻き込むようにして下唇と下の前歯で楽器を支えるようにして吹きます。下唇が歯と楽器の間に挟まれてブラケットに強く押し当てられて痛みが生じることがあります。

矯正装置が当たって口内炎が出来て痛くて吹けないこともあるようです。

矯正装置の影響で音が変わってしまう?

矯正装置をつけて初めて楽器の演奏をした当初は唇にマウスピースやリードが今までと違ったあたり方をします。矯正装置の影響でお口の中での空気の流れが微妙に変わり、音を出しにくくなったり、自分の本来の音色が出せなくなる可能性があります。

その場合は練習を続けて矯正装置をつけた状態での演奏に慣れていく必要があります。練習によって徐々に装置にも慣れ、音が出せるようになります。

長時間の演奏は大丈夫?

クラブ活動で一日3~4時間程度の演奏であれば矯正治療の影響は少ないと思いますが、毎日長時間の演奏をするようであれば矯正治療による影響が出るおそれがあります。

楽器の種類によって注意点は変わりますか?

はい、楽器の種類によって注意点は大きく変わります。
吹奏楽と一言でまとめられがちですが、実際には「歯がどのように使われているか」「唇や顎にどの程度の力がかかるか」が楽器ごとに異なります。

その違いを理解せずに矯正治療を始めると、演奏への影響を強く感じてしまうことがあります。

楽器別に影響の出方は異なります。

吹奏楽器は、見た目以上に歯並び・噛み合わせ・口周りの感覚に強く依存しています。ここでは、矯正治療と特に関係が深いポイントを、楽器の種類ごとに整理します。

金管楽器(トランペット・トロンボーン・ホルンなど)

トランペットを吹くこども
  1. 前歯と唇の位置関係が音に直結する
     → 金管楽器は、マウスピースを唇に当て、唇の振動で音を出します。そのため、前歯の位置や傾きが変わると、唇の支え方も変化します。
  2. 矯正初期はアンブシュアが不安定になりやすい
     → ワイヤー矯正の場合、唇の内側に装置が当たるため、マウスピースの当たり方が微妙に変わることがあります。
  3. 高音域・長時間演奏で影響を感じやすい
     → 高音やフォルティッシモでは唇への圧が強くなり、違和感が増す傾向があります。

金管楽器奏者の場合、矯正治療そのものよりも「慣れるまでの期間」をどう乗り切るかが重要です。治療開始のタイミングや、装置の種類選びによって、演奏への影響は大きく変わります。

上下の小臼歯を合計4本抜歯して矯正治療を行った方は、抜歯後2~3日と初めてワイヤーとブラケットの装置をつけた後、一週間ほどは鈍痛のためにトランペットの演奏が出来なかったという例もあります。

痛みがひいてからトランペットを吹いてみたところ、違和感があって高音を出せないなどの問題が起こりましたが、少しずつ練習を再開したところ、徐々に装置をつけての演奏に慣れて一ヶ月後には依以前と同じように吹けるようになったとのことです。

木管楽器(クラリネット・サックス・オーボエなど)

  1. 歯でマウスピースやリードを支える構造
     → 木管楽器は、上の前歯でマウスピースを支え、下唇をクッションのように使います。そのため、噛み合わせや前歯の角度の変化に敏感です。
  2. 噛み合わせの変化を早く感じやすい
     → 不正咬合の改善によって息の通りが良くなる一方、矯正途中では「噛みどころ」が定まらず不安定に感じることがあります。
  3. リードコントロールに影響が出ることがある
     → 特にオーボエやファゴットなど、繊細なコントロールが必要な楽器では、わずかな感覚変化が演奏に影響します。

木管楽器奏者は、「噛み合わせの変化」を強く意識する必要があります。矯正治療が進むにつれて、最終的には安定しやすい一方、途中経過の説明を十分に受けておくことが安心につながります。

フルート

  1. 歯よりも唇の形と息の角度が重要
     → フルートはマウスピースをくわえず、唇の形と息の方向で音を作ります。そのため、歯並びの影響は比較的間接的です。
  2. 唇の厚み・張りの変化に注意が必要
     → ワイヤー矯正では、唇の内側の違和感によって、息の角度が微妙に変わることがあります。
  3. 音の立ち上がりに影響が出ることがある
     → 特に治療開始直後は、音がかすれる・安定しないと感じることがあります。

フルート奏者は、他の楽器に比べると矯正治療の影響は出にくい傾向がありますが、「感覚の変化」を軽視しないことが大切です。

打楽器(参考)

口腔内の影響はほとんどない
 → 打楽器は歯や唇を直接使わないため、矯正治療による演奏への影響はほぼありません。

つまり、演奏への直接的な制限は少ないため、治療時期の選択肢が広がります。

楽器別注意点を踏まえた大切な考え方

楽器別注意点を踏まえた大切な考え方【図解】楽器別注意点を踏まえた大切な考え方

箇条書きで整理すると、次の点が重要です。

  • 楽器によって「歯の使われ方」が違う
  • 影響が出やすい部位(前歯・噛み合わせ・唇)が異なる
  • 演奏レベルが高いほど変化に敏感になる

これらを総合すると
「吹奏楽をしているから矯正は難しい」のではなく、
「楽器の特性を理解した上で矯正治療を計画できるかどうか」が重要だと言えます。

歯並びの改善は、将来的に演奏の安定性や口腔環境の維持にもつながります。
楽器と矯正治療の両立を考える際は、遠慮せず、演奏内容を具体的に伝えることが後悔しないための第一歩です。

矯正方法はどれを選ぶとよいですか?

吹奏楽を続けながら矯正治療を行う場合、矯正方法の選択は非常に重要です。それぞれの方法にメリット・注意点があります。

演奏状況に合わせた方法選びが大切です。

  1. ワイヤー矯正
     → 幅広い不正咬合に対応できますが、唇への刺激が出やすい傾向があります。
  2. マウスピース矯正
     → 取り外しができ、演奏時の違和感を抑えやすい一方、装着時間の管理が重要です。
  3. 部分矯正
     → 前歯のみなど、影響を最小限に抑えた治療が可能なケースもあります。

これらの選択肢は、「どれが一番良い」という話ではありません。演奏の優先度、治療期間、歯並びの状態を総合的に見て決めることが重要です。

演奏レベルが高い人ほど注意すべき点はありますか?

コンクールや進学、仕事など、演奏の完成度が求められる方ほど、治療開始のタイミングと治療計画が重要になります。

レベルが高いほど、計画性が必要です。


演奏レベルが高い方ほど、わずかな感覚の変化が結果に影響します。そのため、

  1. 大事な本番の直前は避ける
  2. 調整の間隔を演奏予定に合わせる
  3. 違和感が出やすい時期を把握する

といった配慮が必要です。
矯正治療は「歯並びを整える医療」であると同時に、「生活や活動に寄り添う治療」であるべきだと考えられます。

プロの奏者を目指している場合は?

プロの奏者を目指すレベルの方の場合は、演奏への影響を考えて、歯列矯正そのものを諦める必要があるかもしれません。指導者の方と良く話し合って、お決めいただければと思います。

特にワイヤー矯正や裏側矯正といった固定式の装置の場合は、ご自身で外すことが出来ません。マウスピース矯正ならばご自身で付け外しは可能ですが、1日に22時間以上は装置をつけていただかないと治療計画通りに歯が動きませんので、長い時間外すことを前提にしての治療はおすすめできません。

吹奏楽をしている人が矯正治療で後悔しないためには?

後悔を防ぐ最大のポイントは、事前の情報共有と現実的な期待値の設定です。

吹奏楽をしている方が矯正治療で後悔しやすいケースの多くは、「演奏への影響を十分に話し合わないまま治療が始まった場合」です。矯正治療は歯並びだけでなく、生活の質や活動全体に関わる治療です。演奏という大切な要素を含めて相談できる歯科医院を選ぶことが、納得のいく治療につながります。

 

 

吹奏楽をしている場合の矯正治療に関するQ&A

Q

吹奏楽部に入っていますが歯列矯正治療を始めることは可能ですか?

A

はい、吹奏楽の楽器によっては一時的に音が出しにくくなることがあるものの、演奏を続けることはできます。

Q

矯正治療中、吹奏楽の演奏にどのような影響がありますか?

A

矯正治療中、吹奏楽の演奏には一時的に音が出しにくくなる可能性があります。特に金管楽器ではマウスピースがブラケットに当たって痛みを感じることがあります。

Q

矯正装置をつけて演奏することで音色に変化が生じることはありますか?

A

はい、矯正装置をつけて演奏すると、音色に微妙な変化が生じることがあります。お口の中での空気の流れが変わるため、自分の本来の音色が出しにくくなることがあります。

まとめ

歯のキャラクター

矯正治療と吹奏楽は両立が可能ですが、今までと同じように演奏するにはどうしても支障があり、練習が必要です。吹奏楽部の活動をしながら矯正治療はできますか?というご質問へのおこたえは、「できますが、矯正装置を付けて演奏することに慣れるまではかなりの練習が必要になります」ということになります。

ただし個人差はあります。どうしても部活動への影響を避けたい場合は、部活動を引退するタイミングで歯列矯正を始めるという選択肢もありますので、治療期間や治療の開始時期についても矯正担当医や部活の顧問の先生とよくご相談ください。