歯科矯正全般

やらなきゃよかったと後悔しない歯列矯正とは

やらなきゃよかったと後悔しない歯列矯正とは

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

「歯列矯正なんてやらなきゃよかったと後悔している」
「矯正治療したのに前よりきれいになった感じがしない」
「前歯の歯並びをワイヤー矯正できれいにしたけど歯磨きがうまくできなくて、虫歯になってしまった」
など後悔の声をきくことがあります。歯並びの治療が、改善するどころか、逆に悪くなってしまっては意味がありません。そこで、「やらなきゃよかった」と後悔しないように治療を受けるためのポイントについてご説明します。

矯正治療中に「やらなきゃよかった」と後悔するのはどんな時?

矯正装置を歯に付けて、矯正治療が始まった途端に、「やらなきゃよかった」と思う方も、ごく少数ですがおられます。そう思われるタイミングは、主に以下のようなものです。

痛みが出た時

歯列矯正で痛むのは、矯正装置を歯に付けてから、あるいはワイヤーの交換などから2日~3日程度がピークで、歯に急激に力をかけて歯を動かそうとすることが原因です。

痛みの強さには個人差があります。ワイヤー矯正であまりにも痛い時には、歯科医院で少しワイヤーを緩める場合があります。

耐えがたいほど痛い時は矯正担当医にご相談ください。

※マウスピース矯正では歯を0.25mm、1週間程度かけて動かします。ゆっくりと動かすため、ワイヤー矯正程の痛みは起こりません。痛みよりも主に締め付け感や歯茎がムズムズする感じが起こる方が多いです。

ものが食べにくい時

矯正治療中は、歯に力をかけて引っ張っている状態ですので、一時的に噛み合わせが乱れていたり、噛むと痛みがあったりします。噛み合わせはある程度歯を動かした後に揃ってきます。痛みについては、ワイヤーを取り替えた時には2~3日痛む場合があります。

※マウスピース矯正では食事の際にはマウスピースを外すことが出来ますので、ものが食べにくいということはありません。

発音がしにくい時

矯正装置をつけることで、一時的に滑舌が悪くなることがあります。多くの場合は数日~1週間程度で徐々に慣れますので、ご心配には及びませんが、喋りにくいことがストレスになる方もおられるかもしれません。

歯磨きがしにくい時

歯磨き

ワイヤー矯正や裏側矯正の装置を付けると、装置が邪魔で歯磨きがしづらくなります。しかし装置に食べカスが引っ掛かりやすいため、毎食後に歯磨きをして汚れをきれいに取らねばなりません。

※マウスピース矯正では歯磨きの際にはマウスピースを外すことが出来ますので、歯磨きがしにくいということはありません。

装置を付けた部分が虫歯になった時

装置の種類に限らず、歯に装置を付けている間は、その部分に汚れがたまりやすく、歯周病や虫歯になるおそれがあります。

治療後に思わぬ症状が出て後悔することになったケース

矯正治療をしたことを後悔しておられる方の中には、治療そのものがうまく進まず、予想していない状態になってしまった方もおられます。

1. ブラックトライアングル

ブラックトライアングルとは

歯茎が下がってしまったために、ブラックトライアングルと呼ばれる、隣の歯と歯茎の間の隙間が出来てしまうことがあります。ブラックトライアングルは矯正治療には起こりがちですが、かなり目立つ場合は歯茎にヒアルロン酸注射をして歯茎をぷっくりさせ、ブラックトライアングルを見えなくさせたり、ラミネートベニアという薄いセラミックを歯の表面に張り付けて歯の形を変えることでブラックトライアングルが目立たないようにする、という治療を行います。

※ヒアルロン酸注射は行っていない歯科医院もありますので、事前にお問合せが必要です。

2. 噛み合わせが悪くて噛めなくなった

矯正治療で歯を動かすと奥歯の噛み合わせが狂ってしまい、しっかりと噛めなくなることがあります。治療中に一時的に噛み合わせが悪くなることは起こり得るのですが、治療後も噛めないケースでは、矯正治療を延長し、噛み合わせを整えるために少し歯を動かす必要があります。

顎関節症の発症

何らかの理由で顎の関節に負担がかかって顎関節部分に痛みを感じたり、食べ物を噛むと顎から音がしたり、お口を大きく開けると痛みが出たりと、顎関節にさまざまな症状が出る場合があります。

矯正治療中に顎関節症の症状が出た場合は、歯が動いて噛み合わせがずれるための一時的なものと考えられますが、治療終了後も顎関節症の症状が続く場合は、歯並びや噛み合わせの再検査をして、歯に原因がないかを調べたうえで、適切な治療を受けましょう。

雑誌の「歯列矯正をやらなきゃよかった」という記事より

困っている人

「11年の歯科矯正が台なしになった女性の悲劇~定期検診に加え”親知らずの積極抜歯”が大切」<東洋経済オンライン2018年3月9日掲載>

記事を要約しますと、この女性は子どもの頃に矯正を始め、中学卒業前にすべての治療を終えたのに、大人になるとまた歯並びが悪くなって他院で相談をされました。それは、大人になって親知らずが生えてきて、歯を押していることが原因だったのです。

この方は現在では歯並びの状態をきれいに治す事に成功されたとのことですが、子供時代に長い時間をかけて歯科矯正をしたのに、大人になってもう一度矯正しなければならないなんて、どなたも考えたくもありませんよね。

歯列矯正は一部を除きほとんどの場合は自由診療、すなわち保険適用外の治療となります。多額の費用が必要となりますし、治療期間も年単位です。

「先生の説明と全然違う」「先生が代替わりして治療方針が変わってしまった」「治療過程で疑問に思った事があったが聞いてくれない」という事がありますと、治療自体も上手くいかなかったのではないかと、とても残念に思います。

多額の治療費を払い、頑張って治療を続けて、それで期待したほどの仕上がりにならなければ「矯正なんてやらなきゃよかった」と後悔されても仕方ありません。では、確実に失敗しない矯正治療をするにはどうすればいいのでしょうか。

「やらなきゃよかった」と矯正治療を後悔しないためには

矯正治療中、治療後に後悔しないために、以下のような点を参考にしてください。

1. きちんと説明してくれる矯正歯科医院を選ぶこと

歯科医師イメージ

まず、その歯科医院の料金システムがきちんと明確にされていることが大前提です。次に、カウンセリングで矯正担当医や歯科医院のスタッフが信頼に値するものかどうかをしっかりと見極めてください。通常、1つの医院に行っただけではその医院の特性をつかむことは難しいかもしれません。矯正治療を始めようと考えられた場合、2つもしくは3つの歯科医院のカウンセリングを受け、より納得できる歯科医院を選ぶという方法もあります。

「この先生は説明がわかりやすいし、不安点も全て答えてくれたな」「あの医院は料金は安いけどあまり親切ではなかったな」などホームページの情報だけではない、コミュニケーションでしか得られない医院の姿勢も見ることができると思います。

2. 治療中の疑問や質問にきちんと答える担当ドクターがいること

クリンチェック

専門的な知識や経験のは豊富さ、技術や症例数はもちろん重視すべきですが、矯正治療は2~3年かかる場合もあり、通院期間中は担当医とずっと顔を合わせるわけですから、「この先生に任せてみよう」と思える人でなければならないと思います。

ナーシングプラザドットコムという医療関係者向けの情報サイトに、大変興味深いアンケートがありました。年齢がまちまちの約1000名の方に「診察時に不明な点や疑問があった時、どのように解決しますか?」と質問をすると、一番多いのが「医師に質問」が50%以上、その次に「インターネットで自分で調べる」が30%以下と回答されたそうです。
<下記図:ナーシングプラザドットコム参照>


また、「あなたやあなたのご家族が病院で治療を受けられるとき、医師の説明を聞いて、納得・同意(インフォームドコンセント)をされましたか?」という質問では、一番多いのが「納得ができ充分な説明を受けた」で43%、その次に「説明を受けたが、疑問点が発生したので質問して解決した」が30%と回答されたそうです。
<下記図:ナーシングプラザドットコム参照>


多数の方が担当医の説明に納得もしくは疑問点を質問して解決しておられますが、「説明もないし、質問もしない」と回答した人もおられ、納得・同意をあきらめている傾向が見られたようです。

しかし、歯並びの矯正のような長い期間がかかる治療においては、最初の説明と同意、つまり、徹底したインフォームドコンセントは大切です。

3. アフターケアをきめ細かに行う医院であるか

齧ったりんご

矯正治療が終わると、歯が動かないようにリテーナーと呼ばれる装置をつける保定期間というものがあります。これは、矯正治療直後の歯は歯槽骨の中で動きやすく、元の位置に戻ろうとする性質があるからです。リテーナーをつけることできれいな歯並びの位置を固定させます。

「治療が終わったからもう全て終わり」と、保定期間の重要性を考慮していない医院では、矯正装置を外した瞬間から歯の後戻りが始まり、数年後には前歯などの歯並びが気になるようになり、また矯正治療を行わねばならなくなります。

矯正後の歯並びのチェックだけでなく、患者さんへのブラッシング指導や、定期的なメンテナンス(クリーニング)のご案内をし、お口の中を健康に保てるようにアフターケアに注力している歯医者さんにかかられると良いでしょう。

やらなきゃよかったと後悔しない歯列矯正に関するQ&A

Q

後悔しない為の歯列矯正のポイントとは?

A

歯列矯正において後悔を避けるためには、適切な医院選びが重要です。説明が明確で信頼できる医師を選び、複数の医院でカウンセリングを受け、納得できる選択をすることが大切です。

Q

矯正治療中に「やらなきゃよかった」と後悔するのはどんな場合が多いですか?

A

矯正治療中の後悔の一例として、痛みや食事の制約、発音の難しさ、歯磨きの困難さ、装置部分の虫歯などが挙げられます。

Q

装置を付けた部分が虫歯になった時、どのように対処すれば良いですか?

A

矯正装置を付けている部分は汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクがあります。定期的な歯科検診と適切な歯磨きを行うことで予防しましょう。

まとめ

歯のキャラクター

治療前の矯正相談の段階で、ある程度歯科医院の雰囲気や担当医の患者さんに対する態度などを見極めて、しっかりと疑問点を解決してから、「やらなきゃよかった」と後悔しない矯正治療をなさってくださいね。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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