歯科矯正全般

再矯正で歯の寿命は縮む?過去に矯正を受けた方が気をつけたいポイントとは

再矯正で歯の寿命は縮む?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

「せっかく歯列矯正をしたのに、数年経ったらまた歯並びが戻ってきた気がする…」
「噛み合わせに違和感があるので、もう一度矯正を受けたい」

このように、過去に矯正治療を受けた経験がある患者さんが、再矯正を検討されるケースは決して珍しくありません。

しかし、再矯正を考えるとき、多くの方が気になるのが「歯の寿命」への影響です。

「何度も歯を動かして大丈夫なのか?」
「歯ぐきや骨に負担がかかって、歯が早くダメにならないか?」
といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、再矯正そのものが歯の寿命を縮めるとは限りませんが、やり方やタイミングを間違えるとリスクが高くなることもあるのです。

このコラムでは、「再矯正で歯の寿命は縮むのか?」という疑問に丁寧にお答えしながら、過去に矯正を経験した患者さんが注意すべきポイントや対策について詳しく解説していきます。

今後の治療に後悔しないために、ぜひ最後までお読みください。

再矯正で歯の寿命は本当に縮むの?

女性

再矯正を考えている患者さんの中には、「再び歯を動かすことで歯の寿命が縮むのでは?」と心配される方も多くいらっしゃいます。確かに、無理な力をかける矯正は歯や歯周組織にダメージを与え、寿命を縮める可能性があります。

しかし、適切な診断と治療計画のもとで行う再矯正であれば、歯の健康を維持しながら望む歯並びを実現することが可能です。

再矯正で歯の寿命が縮むリスクはありますが、適切な診断と治療で回避できます。

再矯正で歯の寿命が縮む理由とは?

再矯正のリスク

再矯正が歯の寿命に影響を与える場合、その主な原因は「歯根への負担」「歯周組織のダメージ」「過去の矯正治療の影響の蓄積」などにあります。特に前回の矯正治療で歯や骨にすでに負担がかかっていた場合、無理な再矯正によってダメージが蓄積されることがあり、最終的に歯の寿命を縮める可能性が高くなります。

再矯正では歯根や歯周組織への負担が増し、歯の寿命が縮まるリスクがあります。

再矯正で歯の寿命が縮む3つの主な理由

以下のような要因が、再矯正による歯の寿命への悪影響を引き起こす可能性があります。

1. 歯根吸収が進行するリスク

矯正治療では、歯に力を加えて少しずつ移動させますが、その際に歯の根(歯根)にも負担がかかります。特に再矯正の場合は、すでに一度動かされた歯に再度力が加わるため、歯根が短くなってしまう「歯根吸収」が進行する恐れがあります。歯根が短くなると、将来的に歯がぐらつきやすくなり、寿命が縮まるリスクが高まります。

2. 歯周組織へのダメージ

歯を支えているのは、歯槽骨や歯茎といった歯周組織です。これらが弱っている状態で無理に再矯正を行うと、支える力が不足して歯が動揺したり、歯周病が悪化したりすることがあります。とくに中高年の患者さんでは、年齢とともに歯周組織が弱くなっている場合が多いため注意が必要です。

3. 前回の矯正治療での影響が残っている

以前の矯正治療で歯や骨に大きな力がかかっていた場合、歯や顎の骨がすでにダメージを受けている可能性があります。こうした状態で再度の矯正を行うと、骨の再生能力が追いつかず、歯の支持構造がさらに弱体化するリスクがあります。

これらの理由から、再矯正は「過去の治療によるダメージの蓄積がある状態に、さらに負担をかける」ことになりかねません。
しかし、これらはすべて事前の検査や治療計画によって予防・回避が可能な問題です。

そのためにも、再矯正を検討する際は、過去の治療履歴を明確にし、CTやX線撮影による骨や歯根の状態のチェック、歯周病の有無の確認などをしっかり行うことが大切です。

知らずに再矯正すると、歯や骨にダメージが及ぶことも

女性

矯正治療は、歯根や顎の骨に圧力をかけて歯を動かす治療です。すでに一度矯正を経験している歯は、歯根が短くなっていたり、歯周組織が弱っていたりすることもあり、再矯正のリスクが高まる可能性があります。特に以下のようなケースでは注意が必要です。

再矯正には歯や骨への負担がかかりやすくなります。

再矯正で起こりやすいリスク例

  1. 歯根吸収が進行する可能性
    → 一度矯正を行った歯は、再び動かすことでさらに歯根が短くなる恐れがあります。
  2. 歯周病リスクの増加
    → 歯ぐきや骨の状態が弱っていると、再矯正中に歯周病が悪化しやすくなります。
  3. 噛み合わせの悪化
    → 無理な再矯正により、上下の噛み合わせが合わなくなることもあります。

これらのリスクは、歯の寿命に直接的な影響を与える可能性があるため、再矯正の際には慎重な診断と計画が不可欠です。

過去に矯正を受けた方が再矯正で失敗するケースとは

再矯正の失敗例には、「過去の記録がないまま治療を始めてしまった」「骨の状態を無視して矯正を進めた」などが見られます。失敗を防ぐには、過去の治療歴や現在の口腔環境を正確に把握することが重要です。

過去の治療履歴や骨の状態を無視した再矯正は失敗の原因になります。

失敗しやすいパターン

  1. 前回の矯正記録がなく、治療計画にズレが生じた
  2. 歯周病の進行に気づかず、再矯正で悪化した
  3. 保定装置の未使用で後戻りした歯を無理に動かした

このような失敗を防ぐためには、精密検査と治療計画の段階で、過去の治療履歴の確認と現在の歯や骨の状態のチェックが不可欠です。

歯の健康と美しさを両立するための正しい再矯正とは

適切な再矯正を行うことで、歯の寿命を縮めることなく、見た目と機能の両立が可能です。必要に応じて矯正方法を変えたり、事前に歯周病治療を行ったりといった対策も有効です。

正しい手順を踏めば、再矯正でも歯の寿命を守ることができます。

歯に優しい再矯正の工夫

  • マウスピース矯正(インビザライン)など低負担の方法を選択
  • 再矯正前に歯周病や歯のぐらつきのチェックを実施
  • 必要に応じて部分矯正を選ぶことで負担を軽減

再矯正は、必ずしもリスクが高いわけではありません。大切なのは、個々の状態に合わせた治療計画と、専門医の的確な判断です。

より安全に再矯正を行うためにチェックしておくべきポイントとは

再矯正を成功させるには、事前の準備が重要です。自分の口腔状態を正確に把握し、歯科医院としっかり相談することが大切です。

再矯正前の確認ポイントを押さえておくことで、リスクを軽減できます。

再矯正前に確認したい5つのポイント

  1. 過去の矯正記録が残っているか
     → 使用した装置や動かした範囲などがわかると診断が正確になります。
  2. 歯周病や虫歯の治療は済んでいるか
     → 治療前に歯の健康状態を整えることでリスクを減らせます。
  3. 歯のぐらつきや歯根の長さは正常か
     → X線検査などで骨や根の状態を事前に把握しましょう。
  4. 再矯正の目的は明確か
     → 審美目的か、噛み合わせ改善かで治療内容が変わります。
  5. 矯正後の保定装置使用を継続できるか
     → 後戻りを防ぐための装置を着用する意識が大切です。

これらの点を歯科医師と一緒に確認しながら計画を立てることで、安全で確実な再矯正につながります。

治療に関するQ&A

矯正治療を始めるタイミングはいつが最適ですか?

一般的に、歯並びや噛み合わせに気になる点が出てきた時が相談のタイミングです。成長期のお子さまだけでなく、大人になってからでも遅くありません。

矯正治療の装置にはどのような種類がありますか?

表側矯正、裏側矯正(リンガル)、マウスピース型矯正(インビザライン)など、患者さんの希望や症状に合わせて選択肢があります。

矯正治療中に気をつけるべきことは何ですか?

歯磨きを丁寧に行い、虫歯や歯周病を予防することが大切です。また、装置の破損や違和感があればすぐに歯科医に相談しましょう。

矯正治療を受けるメリットは何ですか?

見た目の改善だけでなく、噛み合わせや発音、歯の健康維持など、長期的な口腔内の健康にもつながります。

矯正治療にかかる期間はどのくらいですか?

症状や治療法によって異なりますが、数ヶ月から数年かかる場合が多いです。装置や治療内容によって幅がありますので、カウンセリング時にしっかり確認しましょう。

まとめ

後悔しない再矯正のためにできること

再矯正は慎重に計画すれば、歯の寿命を縮めることなく理想の歯並びを実現できます。ポイントは、「信頼できる歯科医選び」「検査を重視する姿勢」「治療後のセルフケア継続」です。

後悔しないために、再矯正は慎重に進めましょう。

再矯正の成功のために心がけたいこと:

  1. 信頼できる矯正専門の歯科医師を選ぶ
  2. 定期的な健診で歯の健康状態を確認する
  3. 歯磨きやマウスピースの使用を継続する
  4. 些細な違和感も早めに相談する

歯の寿命を守るためには、再矯正後の生活習慣も非常に重要です。丁寧な歯磨きや定期的な健診の継続が、健康な歯を長く保つカギとなります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。歯科医師免許取得後、医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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