歯科矯正全般

矯正で「老け顔」「若返り」は本当に起こるの?

矯正で「老け顔」「若返り」は本当に起こるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

矯正をすると本当に「老け顔」になったり「若返る」ことがあるのですか?

はい、顔の印象が変わることはあります。
ただし、それは治療の内容や歯・顎・筋肉のバランスによって「老けて見える」場合も「若々しく見える」場合もあります。大切なのは、審美と機能の両方を意識したバランスの取れた治療計画を立てることです。

この記事はこんな方に向いています

  • 歯列矯正を検討しているが、顔が変わるのが不安な方
  • 「矯正で老け顔になる」と聞いて心配している方
  • 矯正で口元をスッキリさせたい、若々しく見せたい方
  • 自分に合った治療方法を知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. 矯正で「老け顔」や「若返り」が起こる医学的な理由
  2. 顔の印象に影響を与えるポイント
  3. 老けて見えないために注意すべきこと
  4. 若々しさを引き出す矯正の方法と考え方

 

矯正で「顔が変わる」は本当。ただし「老ける」「若返る」は治療内容とバランス次第

矯正治療によって歯や顎の位置が変わると、顔の輪郭や口元のバランスに影響が出ることがあります。これが「顔が変わった」と感じる理由です。老けて見える場合もあれば、若返ったように見えるケースもあります。その違いは、治療方針・骨格・口元の突出度・筋肉のバランスなど複数の要因によって生じます。

矯正で顔の印象は変化するが、「老ける」「若返る」は治療の方向性とバランスによって異なる。

影響を与える主な要素

  1. 歯の位置 → 歯が前後に動くことで、唇の張りや口元の厚みが変化します。
  2. 顎の位置 → 出っ歯や受け口の改善により、下顎や上顎の位置が調整されます。
  3. 筋肉バランス → 噛み合わせが整うことで、口の周囲や頬の筋肉の動きが自然になります。
  4. 姿勢 → 顎の位置変化が姿勢にも影響し、顔の印象全体を左右します。

これらの変化は、見た目だけでなく機能面にも関係しています。つまり、「顔が変わる」は単なる見た目の話ではなく、機能的な改善の結果として起こるものなのです。

矯正治療後に「老け顔」に見えることはあるの?

矯正後に「老けた気がする」と感じるケースもあります。主な原因は、歯を後方に下げすぎたり、唇の支えが減少したりすることによる口元のボリューム低下です。また、歯の高さや咬合のバランスが変化することで、ほうれい線や口角の印象にも影響することがあります。

歯を下げすぎると口元の張りが減り、老けて見える場合がある。

老け顔に見える主な要因

  1. 口元がへこんでしまう → 上顎前突の矯正で前歯を後ろに引きすぎると、唇の支えがなくなります。
  2. 口角が下がる → 噛み合わせの変化で表情筋の使い方が変わる場合があります。
  3. 頬がこける → 長期間のマウスピース装着や筋肉バランスの変化により、頬がやせて見えることがあります。
  4. 皮膚のハリの減少 → 噛み合わせ改善で筋肉の緊張が変化し、顔の印象が落ち着いて見えることも。

矯正治療では、機能を優先するあまり審美面の調整が不十分な場合に「老け顔」に見えることがあるため、事前に顔貌の変化について医師と十分に相談することが大切です。

矯正で「若返り」が起こることもある?

一方で、矯正治療によって「若々しく見えるようになった」と感じる方も少なくありません。これは、口元のバランスが整い、噛み合わせが改善することで、自然な笑顔や輪郭が引き立つためです。また、正しい顎の位置になることで表情筋が均等に働き、フェイスラインもスッキリして見えます。

矯正で口元や顎のバランスが整うと、顔立ちが若々しく見える。

若返りの効果が得られやすいポイント

  1. 出っ歯の改善で口元が引き締まる → 唇が自然に閉じられ、上品な印象に。
  2. 噛み合わせ改善でフェイスラインが整う → 筋肉がバランスよく使われるようになります。
  3. 笑顔が自然に見える → 歯並びが整うことで笑顔に自信が持て、表情が明るくなります。
  4. 鼻下から顎までの距離が整う → バランスが良くなることで、顔の下半分が若々しく見えることも。

このように、矯正は機能改善に加えて審美的な「若返り効果」をもたらす場合があります。

矯正による「老け顔」と「若返り」の違いまとめ

老け顔と若返りは、どちらも「矯正による変化」の結果として起こるものです。違いはそのバランスと方向性にあります。以下の表で比較してみましょう。

比較項目 老け顔に見えるケース 若返って見えるケース
口元の変化 前歯を下げすぎて唇の支えが減り、口元がへこむ 出っ歯が改善し、唇が自然に閉じられる
フェイスライン 頬がこけたり、下顎が引きすぎて平坦に見える 噛み合わせが整い、輪郭が引き締まる
ほうれい線・口角 唇のボリュームが減り、ほうれい線が目立つ 口角が上がり、明るい表情に見える
筋肉バランス 噛む力が偏り、表情筋の動きが不自然になる 咬合が整い、顔全体の筋肉が自然に働く
印象全体 落ち着いた印象・やや疲れて見える 若々しく健康的な印象を与える


同じ矯正でも、治療計画や骨格・筋肉の特性によって見え方が異なります。そのため、治療前のカウンセリングで「どんな顔の印象を目指すか」をしっかり共有することが大切です。

矯正で顔が変わる仕組みを医学的に見ると?

矯正は「歯の移動」だけではなく、「骨と筋肉のバランス調整」でもあります。歯が動くと、それを支える歯槽骨がリモデリング(再形成)され、口元や顎の形に影響を与えます。さらに、咬合バランスの変化により表情筋の使い方も変わるため、顔全体の印象が変化します。

矯正は歯・骨・筋肉のバランスを整える治療であり、その結果として顔の印象も変わる。

医学的な観点から見た変化のプロセス

  1. 歯槽骨の再構築 → 歯の移動に伴って骨の形が変化する。
  2. 筋肉の再調整 → 新しい噛み合わせに合わせて口周りの筋肉が再教育される。
  3. 表情筋への影響 → 笑ったときの表情や口角の動き方が自然になる。
  4. 顎関節の位置変化 → 適正な位置に顎が収まることで、フェイスラインが安定する。

これらはゆるやかに進む変化であり、急激に顔が変わるわけではありません。患者さんによって変化の程度も異なります。

老け顔を防ぐためにできることは?

矯正治療で老けた印象を避けるには、「骨格・口元・筋肉・審美のバランス」を意識した治療計画が重要です。歯を単に引っ込めるのではなく、横顔のライン(Eライン)や唇の支えを確認しながら、自然で若々しい仕上がりを目指します。

バランスを重視した矯正計画で、老け顔を防ぐことができる。

治療前後で意識すべきポイント

  1. 正面・横顔の写真を比較しながら計画を立てる
     → 見た目の変化を可視化しやすく、医師と共有できます。
  2. Eライン(鼻・唇・顎のライン)を意識する
     → 美しい横顔の黄金比を参考に、適切なバランスを保つことが重要です。
  3. 噛み合わせと表情筋のバランスを重視
     → 噛み合わせが整うと自然な表情を作りやすくなります。
  4. 過度な歯の後退を避ける
     → 唇の支えがなくならないように注意が必要です。

矯正は見た目だけでなく、機能・健康・審美の三位一体で考えることが大切です。これにより、自然で若々しい印象を維持できます。

顔の印象を整える矯正方法にはどんなものがある?

矯正といっても、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・外科的矯正など種類によって効果が異なります。顔の印象を大きく変えたいのか、自然に整えたいのかによって適した治療法が変わります。

矯正方法によって、顔への影響度や自然さが異なる。

矯正方法 顔への影響 特徴
ワイヤー矯正 顎や歯列の動きを細かく調整可能 骨格矯正も可能で、顔の印象が変わりやすい
マウスピース矯正 顔への影響は少なめ 目立ちにくく自然な仕上がりが得やすい
外科的矯正 骨格そのものを変化させる 顔の輪郭改善が目的のケースに適用される

患者さんの骨格や希望に合わせて選択することで、より自然なバランスを実現できます。

まとめ

矯正は「老け顔」にも「若返り」にもなり得るが、目的を明確にすれば理想的な結果を得られる

矯正治療は顔の印象を変える力を持っていますが、その方向性は治療方針と個人の骨格・筋肉バランスによって異なります。老け顔に見えるのは、口元のボリュームや筋肉の使い方が不自然になる場合。

若返って見えるのは、噛み合わせや輪郭が整い、表情が自然になる場合です。最も大切なのは、「機能と審美の両立」を目指すこと。信頼できる歯科医師と相談し、バランスの取れた治療計画を立てましょう。

矯正は顔の印象を左右する。若々しさを保つには、機能と見た目の両面から治療を考えることが重要。

ポイントのまとめ

  • 矯正で顔が変わるのは「歯・骨・筋肉」が連動して動くため
  • 老け顔になるのは、口元のボリューム減少や筋肉バランスの崩れ
  • 若返り効果は、噛み合わせ・表情・フェイスラインの改善で生まれる
  • 治療前に「審美面を含めたカウンセリング」を受けることが大切
この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。歯科医師免許取得後、医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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