ワイヤー矯正中の痛みはどれくらい続く?ピーク・原因・和らげる方法を解説

執筆・監修:大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

ワイヤー矯正中の痛みはどれくらい続く?

ワイヤー矯正の痛みは、装置をつけた直後やワイヤーを調整した後に起こりやすく、一般的には24時間前後から強くなり、その後数日かけて徐々に軽くなっていきます。多くの場合は1週間ほどでかなり落ち着きます。 固定式矯正装置による痛みは4~24時間ほどで強くなり、2~3日程度は比較的強く感じ、その後7日ほどで低下する傾向が複数の研究で報告されています。

ただし、「ワイヤー矯正の痛み」といっても原因は一つではありません。歯が動くことで感じる痛みもあれば、ブラケットやワイヤーが頬に当たって起こる痛みもあります。

この記事では、ワイヤー矯正の痛みがいつまで続くのか、ピークはいつなのか、痛みが起きる理由、和らげる方法、歯科医院へ相談した方がよい症状まで詳しく説明します。

この記事を読むとわかること

  1. ワイヤー矯正はどのくらい痛いのか
  2. 痛みはいつがピークで何日続くのか
  3. ワイヤー調整後にも痛くなる理由
  4. 歯が動く痛みと装置が当たる痛みの違い
  5. ワイヤー矯正の痛みを和らげる方法
  6. 痛いときに食べやすいもの
  7. 痛み止めを使用してよいのか
  8. どんな痛みなら歯科医院へ相談した方がよいのか

 

ワイヤー矯正の痛みはどれくらい続く?

ワイヤー矯正の痛みはどれくらい続く?の図解

ワイヤー矯正では、装置をつけた直後から数時間後に違和感や痛みが現れ、翌日頃に強く感じることがあります。その後は少しずつ軽くなり、多くの場合は1週間ほどでかなり落ち着いていきます。 痛みの程度には個人差がありますが、治療期間中ずっと同じ強さで痛み続けるわけではありません。

ワイヤー矯正の痛みは24時間前後に強くなりやすく、その後数日かけて軽くなるのが一般的です。

初めてワイヤーを装着した日は、「締め付けられている感じがする」という程度でも、翌朝になると、
「歯が浮いたように感じる」
「噛むと痛い」
「前歯で食べ物を噛み切れない」
と感じることがあります。

これは、矯正装置によって歯に力が加わり、歯の周囲の組織が反応しているためです。

ワイヤー矯正の痛みの経過

痛みの経過をあらかじめ知っておくと、「この痛みはいつまで続くんだろう」という不安を減らしやすくなります。

以下は一般的な目安です。痛みの程度や続く日数には個人差があります。

時期 痛み・違和感の目安
装置をつけた直後 締め付け感や歯が押されるような違和感が出ることがあります
数時間後~翌日 痛みが強くなりやすい時期です
2~3日程度 噛んだときの痛みが残ることがありますが、徐々に軽くなる傾向があります
4~7日程度 痛みがかなり落ち着く方が多くなります
次回のワイヤー調整後 再び一時的な痛みや締め付け感が出る場合があります

「1週間」というのは、必ず7日間痛み続けるという意味ではありません。

最初の1~2日は食事のときにかなり気になったものの、3日目には楽になり、数日後にはほとんど気にならなくなる、といった経過も珍しくありません。参考記事でも、装着直後や調整直後の痛みは通常1週間ほどで和らぐケースが多いと説明されています。

ワイヤー矯正はなぜ痛いの?

ワイヤー矯正で痛みを感じる主な理由は、歯を動かすために持続的な力を加えるからです。歯は顎の骨に直接固定されているわけではなく、歯根膜という組織を介して支えられています。

歯に矯正力が加わると周囲の組織に反応が起こるため、押されるような痛みや噛んだときの痛みを感じることがあります。

ブラケットにワイヤーを通すと、歯を治療計画で設定した方向へ少しずつ移動させる力が加わります。その際、歯の周囲では骨を吸収する働きと新しい骨を作る働きが起こり、時間をかけながら歯が移動していきます。

この過程で炎症に関係する物質なども関与するため、歯に圧痛が生じます。固定式矯正装置による痛みは、装置装着後の最初の24時間に特に感じやすいことが報告されています。

ただし、「痛ければ痛いほど歯がよく動いている」というわけではありません。痛みの感じ方には個人差があります。あまり痛くないから治療が進んでいない、と考える必要もありません。

ワイヤー矯正ではどんな「痛い」が起こる?

ワイヤー矯正の痛みは、大きく「歯が動く痛み」「装置が当たる痛み」「装置のトラブルによる痛み」に分けて考えるとわかりやすくなります。原因によって対処法が違うため、まずどの部分が痛いのかを確認しましょう。

「ワイヤー矯正だから痛い」とまとめず、どこが・いつ・どのように痛むのかを見ることが大切です。

1.歯が押される・噛むと痛い

装置をつけた直後やワイヤー調整後に多い痛みです。

何もしなければそれほど痛くなくても、食事をすると歯に響いたり、歯が浮いたように感じたりすることがあります。

2.ブラケットが頬や唇に当たって痛い

ワイヤー矯正では、歯の表面につけたブラケットが頬や唇の内側へ擦れることがあります。

繰り返し擦れると傷や口内炎ができ、会話や食事のたびに痛む場合があります。

3.ワイヤーの端が刺さって痛い

歯が移動すると、奥歯の後方からワイヤーの端が少し出てくる場合があります。

頬にチクチク当たる程度から、粘膜を傷つけて強く痛むケースまであります。

痛み方から原因を見分ける

痛みがあるときには「痛みの強さ」だけでなく、「どこが痛いか」も確認してみましょう。原因がわかれば、自宅で対応しやすいものと歯科医院へ連絡すべきものを区別しやすくなります。

痛み方 考えられる原因 主な対応
歯全体が押される感じ 矯正力による歯周組織の反応 柔らかい食事などで負担を減らす
噛んだときに歯が痛い 装置装着・調整後の圧痛 硬いものを控える
頬・唇が擦れて痛い ブラケットの接触 矯正用ワックスで保護する
一点だけチクチク痛い ワイヤーの端が当たっている可能性 ワックスで保護し、歯科医院へ相談する
強い痛みが長く続く 矯正以外の原因を含め確認が必要 歯科医院へ相談する

この分類は、ワイヤー矯正中の痛みを考えるうえで重要です。

例えば「ブラケットが頬に刺さって痛い」という方に、柔らかい食事だけを勧めても根本的な解決にはなりません。反対に、歯が動くことで噛むと痛い場合には、矯正用ワックスをつけても歯そのものの痛みは改善しません。

痛みの種類を見分けてから対処することが、無理なく矯正治療を続けるコツです。

ワイヤー矯正の痛みを和らげるにはどうしたらいい?

歯が動くことによる痛みには、数日間だけ噛む負担を減らすことが基本です。一方、装置が粘膜に当たる場合は、矯正用ワックスなどで刺激を減らします。

痛みを完全になくそうとするより、「痛みの原因を増やさない」工夫をすると過ごしやすくなります。

柔らかい食べ物を選ぶ

痛みが強い日は、

  • おかゆ・雑炊
  • うどん
  • スープ
  • 豆腐
  • 茶碗蒸し
  • 卵料理
  • ヨーグルト
  • やわらかく煮た野菜
  • バナナなどの柔らかい果物

などがおすすめです。

肉や硬いパンなども、大きなまま前歯で噛み切るのではなく、小さく切るだけで食べやすくなることがあります。

ブラケットには矯正用ワックスを使う

ブラケットが頬や唇へ当たる場合は、矯正用ワックスで装置を覆う方法があります。

使用前に手をきれいに洗い、装置周辺の水分を軽く拭き取ってから、適量をブラケットへ押しつけるようにつけます。

痛い歯を何度も噛んで確認しない

「まだ痛いかな?」と上下の歯を何度も噛み合わせたり、舌で押したりすると、そのたびに刺激になります。

痛みの強い数日間は、歯を必要以上に刺激しないことも大切です。

ワイヤー矯正中に痛み止めを飲んでも大丈夫?

痛みが強く、食事や睡眠など日常生活に支障がある場合には、鎮痛薬を使用できることがあります。ただし、持病や服用している薬によって適した薬が異なるため、担当の歯科医師や医師、薬剤師に確認してください。

我慢できない痛みを無理に耐える必要はありませんが、鎮痛薬を何日も必要とする場合は歯科医院へ相談しましょう。

固定式矯正装置による痛みに対する薬物療法を検討したレビューでは、イブプロフェンなどの鎮痛薬がワイヤー装着後6時間・24時間の痛みを軽減したとの報告があります。

一方で、「矯正中に痛み止めを飲むと必ず歯が動かなくなる」と単純に考える必要はありません。大切なのは、市販薬を自己判断で長期間飲み続けないことです。

数日たっても強い痛みが続き、鎮痛薬がなければ過ごせない場合には、薬で我慢し続けるのではなく、装置や歯の状態を歯科医院で確認してもらいましょう。

ワイヤー矯正で痛いときは何を食べればいい?

治療直後の食事は「柔らかい食べ物」だけでなく、「前歯で強く噛み切らなくても食べられるもの」を選ぶのがポイントです。

痛い日は「何を食べるか」と同じくらい、「小さく切ってどう食べるか」を工夫すると負担を減らせます。

ワイヤー矯正で痛い日に食べやすいもの

装置をつけた翌日などは、普段なら何でもない食べ物でも噛みにくく感じることがあります。無理にいつも通りの食事をする必要はありません。数日だけ歯への負担を減らしてみましょう。

食べやすいもの 負担になりやすいもの
おかゆ・雑炊 硬いせんべい
やわらかいうどん フランスパンなど硬いパン
豆腐・茶碗蒸し ナッツ類
卵料理 硬い肉
スープ・煮込み料理 大きなまま噛み切る必要がある食品
ヨーグルト・柔らかい果物 装置に強く付着する粘着性の高い食品

ワイヤー矯正中は、装置の周囲に食べ物が残りやすくなる点にも注意が必要です。日本矯正歯科学会も、矯正装置が入ると歯磨きが難しくなり、特に奥歯の装置周辺には食べ物がたまりやすいと説明しています。

痛みが落ち着いて食べられるものが増えてきても、食後の歯磨きは丁寧に行いましょう。

ワイヤー調整のたびに毎回痛くなるの?

ワイヤーを交換したり力を調整したりした後には、再び歯が押されるような痛みが出ることがあります。ただし、毎回まったく同じ強さで痛むとは限りません。

初回だけでなく調整後にも痛みは起こりますが、多くの場合は一時的です。

治療が進むと、
「最初に装置をつけたときほどではなかった」
「翌日だけ少し噛みにくかった」
など、患者さんによって感じ方が変化することがあります。

逆に、ワイヤー交換によって歯に新たな力が加わったときには、以前より痛みを感じる場合もあります。

つまり、「何回目の調整なら痛くない」と決めることはできません。
大切なのは、調整後に痛みが出ても徐々に軽くなっているかどうかです。

表側矯正と裏側矯正では痛み方が違う?

どちらもワイヤーを使って歯を動かすため、歯そのものの圧痛は起こり得ます。一方、装置が当たる場所には違いがあります。

表側矯正では頬や唇、裏側矯正では舌への刺激が気になりやすいという違いがあります。

表側矯正ではブラケットが歯の表側についているため、頬や唇の内側が擦れやすくなります。裏側矯正では装置が舌側についているため、舌が装置へ当たり、話すときや食事のときに刺激を感じる場合があります。

表側矯正と裏側矯正の痛み方

歯が動くことで起こる痛みと、装置が粘膜へ当たる痛みは分けて考えましょう。装置をつける位置によって、「どこが痛みやすいか」が変わります。

比較項目 表側矯正 裏側矯正
歯が動く痛み 起こることがあります 起こることがあります
装置が当たりやすい場所 頬・唇の内側
口内炎 頬や唇にできる場合があります 舌に傷ができる場合があります
主な対処 矯正用ワックスなどで刺激を減らします 矯正用ワックスなどで刺激を減らします

どちらが必ず痛い、痛くないというものではありません。
治療方法を決めるときには、痛みだけでなく、不正咬合の状態、装置の見た目、費用、治療期間、歯磨きのしやすさなども含めて比較することが大切です。

どんな痛みなら歯科医院へ相談した方がいい?

ワイヤー矯正では一時的な痛みは珍しくありませんが、すべての痛みを「矯正だから」と我慢する必要はありません。痛みが長引く、悪化する、装置が刺さるなどの場合は歯科医院へ相談しましょう。

「時間とともに軽くなっているか」が、矯正による一般的な痛みを判断する一つの目安になります。

特に次のような症状がある場合には、担当の歯科医院へ連絡してください。

  1. 1週間程度たっても強い痛みが続いている
    → 通常の矯正痛であれば徐々に軽くなることが多いため、長引く場合は状態を確認してもらいましょう。
  2. 痛みが日ごとに強くなっている
    → 軽減するどころか悪化している場合は、矯正以外の原因も含めて確認が必要です。
  3. 特定の1本だけ激しく痛む
    → 虫歯や歯の神経など、ほかの原因が関係している可能性もあります。
  4. ワイヤーが頬や歯ぐきへ刺さっている
    → 矯正用ワックスで一時的に保護できる場合がありますが、繰り返し刺さる場合は調整してもらいましょう。
  5. ブラケットが外れた
    → 無理に元へ戻そうとせず、歯科医院へ対応方法を確認してください。
  6. 歯ぐきが大きく腫れている、膿が出る
    → 一般的な矯正治療による圧痛とは異なる可能性があります。

参考記事でも、痛みが1週間以上続く場合や異常を感じる場合は、早めに歯科医院へ相談することが勧められています。また、「ワイヤー矯正だから痛くて当然」と考えすぎないことも大切です。

ワイヤー矯正の痛みで治療期間や通院回数は増える?

一般的な一時的な痛みだけで治療期間や通院回数が増えるとは限りません。ただし、装置の破損やワイヤーの突出などがある場合には、予定外の受診が必要になることがあります。

痛みを我慢するほど治療が早く進むわけではありません。装置に問題があるときは早めに相談しましょう。

ワイヤー矯正では、定期的に通院して歯の移動状態を確認し、必要に応じてワイヤーの調整や交換を行います。

治療後の痛みが通常の範囲で徐々に落ち着いているのであれば、痛みだけを理由に追加受診する必要がないケースもあります。

一方で、

  • ワイヤーが外れた
  • ブラケットが取れた
  • ワイヤーが強く刺さっている
  • 痛みが強く食事や睡眠に支障がある

といった場合には、次回の予約まで我慢せず歯科医院へ連絡しましょう。

追加の処置に費用がかかるかどうかは歯科医院の料金体系によって異なります。治療を始める際には、装置のトラブルなどで臨時受診した場合の費用についても確認しておくと安心です。

まとめ|ワイヤー矯正の痛みは数日が山場。長引く痛みは我慢しないで

ワイヤー矯正では、装置をつけた直後やワイヤーを調整した後に、歯が押されるような痛みや噛んだときの痛みが出ることがあります。

固定式矯正装置による痛みは装置装着後の24時間前後で強くなり、その後数日かけて軽減し、1週間ほどでかなり落ち着く傾向が報告されています。

痛みがあるときには、

  1. 柔らかい食事を選ぶ
  2. 食べ物を小さく切る
  3. 痛む歯を必要以上に刺激しない
  4. ブラケットが当たる場合は矯正用ワックスを使う
  5. 必要に応じて鎮痛薬について歯科医師などへ相談する

といった方法で負担を減らしましょう。

そしてワイヤー矯正中の「痛い」は、すべて同じではありません。歯が動く痛みなのか、ブラケットが擦れているのか、ワイヤーが刺さっているのか。
ここを分けて考えると、必要な対応がわかりやすくなります。

痛みが1週間以上強く続く、日ごとに悪化する、特定の歯だけ激しく痛む、装置が外れたなどの場合は、「矯正中だから仕方ない」と我慢せず担当の歯科医院へ相談してください。

一時的な痛みにうまく対処しながら、無理なく治療を続けていくことが大切です。

関連ページ:大阪矯正歯科グループのワイヤー矯正