セラミック矯正って味覚は変わらないの?

セラミック矯正って味覚は大丈夫なの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

通常、食べ物を噛む際、おいしいと感じられないと、食事は楽しめません。歯にセラミックを被せて歯並びを整えるセラミック矯正を行うと、味覚がおかしくなるのでは?と不安に思われる方がいらっしゃるかもしれません。今日は「矯正したら味覚はどうなるの?矯正が原因でおいしさを感じにくくなって味覚に変化ある?」という疑問についてご説明します。

おいしいと感じるために歯は関係ある?

大人でも子供でも、おいしいという感覚は、主に舌の表面にある味蕾が感じて、味覚となります。ただ、おいしさに関しては、舌だけではなく、お口の中の歯も少なからず影響を及ぼします。

出っ歯(前突)、ガタガタや八重歯などの歯並びの悪さ(叢生)などの不正咬合の問題を抱えている人、また虫歯や歯周病で抜歯をされて歯の欠損がある人は、歯が綺麗に並んでいる人に比べて、うまく噛めません。では、うまく咬めないと何が起こるのでしょうか。

一般的に、咬む効率が低下すると、食品が本来含有するうま味などの成分が唾液に溶け出すことが、綺麗な歯列の方より少なくなります。つまり、食品の成分が口腔内に溶け出さないと、味はあまり感じられず、美味しいとは思えないのです。

噛んだらキーンとなるのって治せる?

また、虫歯の治療を保険適用で虫歯の治療を行って、金歯や銀歯を両方かぶせている患者様の場合、口腔内に異種の金属が存在することになります。その異なる金属は唾液によって、物質が異なるためそれぞれに電位差が生じ、接触を起こすとわずかながら電流が流れる事があります。

その電流のことを、ガルバニー電流、ガルバーニ電流とも呼びます。当院ではガルバニック電流と呼んでいます。

簡単な例を挙げて説明すると、歯に金属を被せた患者様で、チョコの包装紙の銀紙や、金属製のスプーンを噛んで、キーンときたことがありませんか。あの不快な感覚がガルバニー電流です。ガルバニー電流が発生すると、それは直接神経を刺激します。そのため、不快な感覚を覚えることになります。

不正咬合で悩まれていて、なおかつ金属歯も抱える方にとっては、味覚や顎関節の違和感、不快な状態を解決するために行うセラミック矯正は、良い選択といえます。

セラミック矯正の治療の流れ

例えば前歯にオールセラミックを被せて矯正するケースでは、主に前歯の天然歯をドクターが削って、痛みが出なければ型取りをして、被せ物を製作します。

だいたい1~2週間程度で被せ物ができあがりますので、オールセラミックのかぶせ物を被せて、嚙み合わせを確認したら治療が完了です。もし、歯を削ったときに痛みが出た場合は、被せ物の型取りをする前に神経を抜く治療が必要になります。

セラミック矯正したら味覚って変化ある?

矯正治療の種類の中でも治療期間が短期間で終わるセラミック矯正は、味覚に変化があるのでしょうか。答えとしては、セラミック矯正は味覚に変化を及ぼしません。

むしろ、セラミックの矯正によって歯並びを改善することによって、唾液の分泌を促し、また食べ物を砕くことも可能な強度を備えられるので、食べ物をよりおいしく感じられるでしょう。

また、セラミックによる矯正治療は審美的にも美しいです。矯正装置の装着を行いませんので、装置を気にせず食べられます。治療期間はワイヤー矯正やインビザライン矯正よりも早いですし、治療費も抑えられるというメリットもあります。

ただ、セラミックは陶器と同じ特徴を持っています。大変強度があるものの、セラミックの歯にのみ負担がかかりすぎると、陶器ですので割れる可能性があります。噛みしめや食いしばり、歯ぎしりなどの癖のある方は、セラミックが欠けたり割れたりするリスクがあります。

矯正装置をつける治療とどちらが味覚に影響ない?

ワイヤー矯正やインビザラインによるマウスピース矯正は、患者さん自身の天然歯に、歯科医師が矯正装置をつけることで歯を正しい位置へ動かす矯正治療法です。

そのため、定期的にクリニックへ通院をしなければいけません。セラミック矯正の場合は、セラミックを被せてしまえば治療が終了しますが、装置を使う矯正は、担当医が歯の動きを確認し、ワイヤーやアライナー(マウスピース)を新しいものへと交換していく必要があります。表側からのワイヤー矯正でしたら約2年、裏側に装置をつける裏側矯正やインビザライン矯正でしたら約3年行いますので、大変時間がかかるのがデメリットといえます。

どちらが味覚に影響がない?という問題については、短期で終了できるメリットのセラミック矯正に分があるでしょう。ワイヤー矯正の装置に慣れるまでは、痛みや、食べ物がつまったり、装置が当たって口の中に口内炎ができやすい状態になる事もあります。

インビザラインは取り外しが患者様自身時で可能なため、装着忘れで歯が動かない、または装着したまま食べてしまい、透明な装置が着色汚れを起こしたり壊れたりするデメリットもあります。

ただ、ワイヤー矯正も慣れてしまえば歯磨きは快適に行えますし、口内炎はワックスで装置が口に当たる部分をカバーすると、防ぐことができます。

また、インビザラインは食事前に必ず取り外すことを習慣にすれば、大きな問題ではないです。つまり、患者様が、(例えば、短期・長期などの治療期間、費用、見た目など)何を重視し、判断されるかによります。

まとめ

いかがでしたか。今回は「セラミック矯正って味覚は大丈夫なの?」という事についてご説明しました。
味覚については、セラミック矯正を行っても、特に問題がないという事がお分かりいただけたと思います。むしろ、食事の度に噛む事や、お口の状態にモヤモヤを抱えるくらいならば、一度歯科医院のカウンセリングを予約し、先生やスタッフへ相談しましょう。以上の方法以外にも、どんな治療法があるのかという情報を、ご自身が知ることがモヤモヤ解消への糸口となります。