裏側矯正

裏側矯正で叢生は治るの?

裏側矯正で叢生は治るの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

歯の裏側にブラケット、ワイヤーをつける裏側矯正で叢生(ガタガタの歯)は治るのでしょうか? 叢生の治療と裏側矯正についてご説明します。

裏側矯正での叢生治療

裏側矯正インコグニト

インコグニトのワイヤーは、患者さんの歯並びのデータを元に、ベンディングロボットによって屈曲されたものが届きます。ガタガタの歯に合うように、精密にワイヤーが屈曲されています。

歯列を後ろに引っ張る場合は、口蓋の部分にアンカースクリュー(ミニインプラント)を打ち、それを固定源として歯を引っ張って後ろに下げていきます。

アンカースクリューは細く小さいネジ状のもので、打ち込むのも撤去するのも数分で可能です。口腔内は傷の治りが早いため、撤去痕は数日で治癒します

アンカースクリューを使うことで、歯のデコボコだけでなく、出っ歯気味の前歯を引っ込めることも出来ます。

叢生とはどんな歯並び?

叢生(八重歯)叢生(そうせい)とは、乱杭歯とも呼ばれ、ガタガタに乱れた歯並びのことをいいます。八重歯も叢生の一種で、八重歯は犬歯が外に飛び出た状態のことです。

叢生になる原因は、上顎や下顎があまり発育しなかったために小さい場合に、歯がきれいに一直線に並びきらずに歯列から飛び出たり、歯列そのものがガタガタになってしまうというものです。

また、1本1本の歯のサイズが大きいために、歯がきれいに並ぶためのスペースが十分になく、歯が斜めになったり重なったりしてガタガタになる場合もあります。

叢生はどうやって治療するの?

叢生の治療は、歯と歯の重なりの大きさによって抜歯を伴う矯正が必要がどうかが決まります。

歯のアーチが狭かったり小さかったりする場合には、歯列を広げるための装置を使います。小児矯正では子供の成長を利用してアーチを広げていきますが、大人の場合はもう骨の成長が終わっているため、アーチはあまり大きくは広がりません。そこで、インプラントアンカーを用いて歯全体を後方へ引っ張って下げることによって、歯を並べるためのスペースを作って治療を行います。

使用する矯正装置別の方法としては、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正が選べます。

※当院では裏側矯正の装置はインコグニト、マウスピース矯正の装置はインビザラインを使用しています。

矯正治療種類

裏側矯正ってどんなの?

インコグニト

裏側矯正は、歯の表側にワイヤーとブラケットを付けるワイヤー矯正に対し、歯の裏側に装置を付けます。

ワイヤー矯正は目立つので、なるべく目立たない装置で、矯正中であることを他人に知られたくない、というニーズから生まれました。

上の歯は裏側矯正で、下の歯はワイヤー矯正という、ハーフリンガルと呼ばれる方法もあります。この場合は、上下を裏側矯正で行うよりは治療費がやや抑えられます。

裏側矯正インコグニトの特徴

インコグニト

当院での裏側矯正の装置は、インコグニトを使用しています。

インコグニトはオーダーメイドの舌側矯正(リンガル矯正)システムです。歯の裏側にワイヤー、ブラケットを付けますので、他人から見えにくい装置です。

オーダーメイドならではの良さとしては、ブラケットを歯のカーブに合った形状に作ることが可能で、ブラケットの厚みを薄く出来るため、違和感が少なく発音障害も以前の装置よりも減っています。

【動画】インコグニトによる歯の動き方

裏側矯正で叢生は治るのかに関するQ&A

裏側矯正で叢生(ガタガタの歯)を治療するメリットは何ですか?

裏側矯正は、歯の裏側に装置を付けるため、外からはほとんど目立たず、見た目に配慮した治療が可能です。これにより、治療中でも他人に知られづらく、審美面でのメリットがあります。

叢生の治療において抜歯するかどうかの判断基準は何ですか?

叢生の治療において抜歯が必要かどうかは、歯と歯の重なりの大きさによって決まります。歯を一列に並べるためのスペースが足りない場合は、スペースをを確保するために抜歯を伴う治療が必要となることがあります。

裏側矯正とは何か、その特徴も教えてください

裏側矯正は、歯の表側に装置を付けるワイヤー矯正と異なり、歯の裏側に装置を取り付ける治療方法です。特に「インコグニト」はオーダーメイドの舌側矯正システムで、他人から見えにくく、装置をつけた時の違和感が少なく、発音障害も減少する特徴があります。

まとめ

歯のキャラクター

叢生を裏側矯正で治す場合の方法などについてご説明しました。裏側矯正は人からは見えにくい矯正装置のため、装置をつけたままで結婚式に臨まれる方もおられます。

裏側矯正(リンガルオーソドンティクス)を用いた叢生(歯の密集)の治療に関する研究は以下の通りです。

1. 裏側矯正と叢生の治療
裏側矯正は、患者の審美的要求に応えるための有効な治療法として注目されています。裏側矯正においては、アンカレッジ制御、間接接着、およびバイオメカニクスがラビアル技術とは異なります。この研究では、裏側矯正による叢生の治療法について具体的に言及していませんが、裏側矯正が歯列不正咬合の治療において広く用いられていることを示しています。【Shetty, Shetty, & Sarje, 2020】

2. 叢生における顎骨の変化
叢生の治療においては、顎骨の変化も重要な要素です。非抜歯による叢生の矯正治療後に、下顎切歯の歯槽骨と歯間骨隔壁の変化をコーンビームCTで評価した研究では、治療によって切歯の顔側の歯槽骨隆起と歯間骨隔壁の高さに有意な変化が観察されました。これは、叢生の治療において顎骨の変化を考慮することが重要であることを示しています。【Valerio, Cardoso, Araújo, Zenóbio, & Manzi, 2021】

これらの研究から、裏側矯正によって叢生の治療が可能であることが示唆されていますが、治療計画には顎骨の変化も含めて注意深く検討する必要があります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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