
矯正治療では歯を動かして歯並びを整えていきますが、歯を動かすためにはスペースが必要です。どのようにしてスペースを作るかについてご説明します。
矯正治療におけるスペースとは?
歯列が重なってデコボコになっている場合、歯をきれいに一列に並べようとしても、顎が小さいために歯を並べるためのスペースが足りません。子供の矯正では顎を大きく成長させることが出来ますが、大人は骨の成長が終わってしまっています。そのため、一般的には小臼歯の抜歯をするか、前歯の側面を削るかといった方法をとります。
出っ歯もまた、スペースが不足していると起こります。歯列矯正には必ず歯を動かすのに利用するスペースが必要です。
歯列矯正ではどうしてスペースが必要なの?
「歯並びを整えるためにスペースを作る必要がある」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
「そもそも、なぜスペースが必要なの?」
「スペースが足りないとどうなるの?」
そんな疑問をお持ちの方のために矯正治療においてスペースが重要な理由についてご説明していきます。
1. 歯をきれいに並べるには十分なスペースが必要
歯列矯正では、歯を正しい位置に移動させることで美しい歯並びと噛み合わせを作ります。
しかし、歯が並ぶためのスペースが足りないと、歯が収まる場所がなく、きれいな歯並びを作るのが難しくなります。
スペース不足の原因
- 顎が小さい → 生まれつき顎のサイズが小さいと、歯が並ぶスペースが不足します。
- 歯が大きい → 歯の大きさに対して顎が小さいと、歯がぎゅうぎゅうに詰まりやすくなります。
- 歯並びがデコボコ → スペースがないと、歯が押し合い、重なったり斜めになったりしてしまいます。
つまり、歯が正しい位置に並ぶためには、まずスペースを確保することが必要なのです。
2. スペースがないと起こる問題とは?
「歯が並ぶ場所がないと、どうなるの?」と思われるかもしれませんね。
実は、スペースが不足すると、以下のような問題が起こることがあります。
① 歯並びの乱れ(叢生)
スペースが足りないと、歯がデコボコに並びやすくなります。
これを叢生(そうせい)といい、ガタガタの歯並びの原因となります。
② 噛み合わせのズレ
歯が正しく並ばないと、上下の噛み合わせもズレてしまいます。
その結果、
- 食べ物をしっかり噛めない
- 顎関節に負担がかかる
- 発音がしにくくなる などのトラブルにつながることも。
③ むし歯や歯周病のリスクが上がる
歯が重なっていると、歯磨きがしにくくなり、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。
その結果、むし歯や歯周病になりやすくなるのです。
「見た目だけじゃなく、健康のためにもスペースを確保することが大切なんですね!」
3. 矯正でスペースを作る方法
では、矯正治療ではどのようにスペースを作るのでしょうか?
主な方法をいくつかご紹介します。
① 歯を少し削る(IPR)
IPR(Interproximal Reduction)とは、歯と歯の間をほんのわずかに削る方法です。
「歯を削るなんて大丈夫?」と思われるかもしれませんが、ご安心くださいね。
削る量は0.2~0.5mm程度と非常に少なく、歯の健康には影響しません。
② 奥歯を後ろに動かす
奥歯を後方に移動させることで、前歯のスペースを確保する方法です。
特にインビザライン矯正では、この方法をよく使います。
③ 歯を抜く(抜歯矯正)
重度のスペース不足がある場合、小臼歯(前から4番目か5番目の歯)を抜くこともあります。
「歯を抜くのはちょっと怖い…」と感じるかもしれませんが、矯正のために抜歯することでバランスの取れた美しい歯並びを作ることができます。
④ 歯列を広げる
顎の幅を広げて歯が並ぶスペースを作る方法もあります。
特に子どもの矯正では、この方法がよく使われます。
4. スペースを作ると歯並びがどう変わる?
「スペースを作ることで、本当に歯並びが改善するの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。実際にスペースを作ることで、以下のような変化が期待できます。
① デコボコが解消
スペースができると、歯が正しい位置に移動しやすくなり、ガタガタだった歯並びが整っていきます。
② 噛み合わせが改善
歯が正しい位置に並ぶことで、上下の噛み合わせも整い、しっかり噛めるようになります。
③ 口元がスッキリする
スペース不足による前歯の突出(出っ歯)や口元のもたつきが改善し、横顔のバランスが整うこともあります。
歯列矯正のためのスペースを作る方法
歯を動かすためのスペースを作る方法は以下の5つがあげられます。
- 小臼歯を抜歯する
- 矯正装置を使って顎を横に拡げる
- 歯の側面のエナメル質を削る
- 矯正装置で歯を後方に移動させる
②の顎を横に拡げるのは、専用の装置を歯に付けて行います。子供の場合は骨格の成長を利用して顎を拡げますが、大人は成長が終わっているため、あまり横には拡がりません。
IPRとはどんな処置?
IPRは、歯の側面を僅かに削る処置のことをいいます。ディスキング、ストリッピング、スライスなどと呼ぶこともあります。
削る量は、1歯あたり0.5mmまでです。エナメル質の厚さは平均1.5mm程度で、薄い所で焼く1mm位です。そのうちの0.5mmを削るだけですので、痛みが出ることはありません。
前歯6本の側面を削れば、3mmのスペースが出来、前歯以外の歯の側面も削れば、5mm程度のスペースが出来ます。

IPRで出来たスペースを2で割ると、前歯を何mm下げられるかがわかります。
IPRでは僅か数ミリのスペースしか出来ませんので、ガタガタや出っ歯が酷い方は、より大きなスペースが使える抜歯矯正の適用になります。
抜歯矯正だと何ミリくらいのスペースが出来る?

抜歯矯正では主に小臼歯を抜歯します。小臼歯のサイズは1本7~8mmくらいですので、左右の小臼歯を抜歯すると、14~16mmくらいのスペースが出来ます。
IPRと比べると、随分大きなスペースです。そのため、重度のガタガタや八重歯の歯並びをきれいに一列に並べたり、重度の出っ歯もかなり後ろに下げられる可能性があります。
まとめ

歯並びを整える矯正治療では、歯を動かしていくためのスペースが必ず必要になります。どのようにしてスペースを作っていくかは、患者さんの不正咬合がどのような状態かによって決まります。
その結果、スペースを確保するために抜歯をするのか、IPRを行うのか、担当の歯科医師が判断し、患者さんと話し合ってどの方法にするかを決定します。
矯正でスペースを作る主な方法
- 歯を少し削る(IPR)
- 奥歯を後ろに動かす
- 歯を抜く(抜歯矯正)
- 歯列を広げる
スペースを作ることで、歯並びが美しくなるだけでなく、健康にも良い影響があります。
矯正を考えている方は、ぜひ歯科医院で相談してみてくださいね。