歯科矯正全般

口腔習癖は不正咬合の原因になるの?-舌で歯を押す癖や口呼吸-

舌で歯を押す癖や口呼吸などの口腔習癖は不正咬合の原因になるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

舌で歯を押したり口呼吸したりという癖のことを口腔習癖といいます。どのような口腔習癖がある場合に歯並びを悪くする原因となるのか、ご説明します。

口腔習癖は不正咬合の原因になる

頬杖

歯や顎などに力がかかって口腔周囲の軟組織が動いてしまい、不正咬合を起こす場合もあります。歯や顎などに影響を与えて不正咬合を起こすような習慣的な行為を「口腔習癖」といいます。口腔習癖には様々な種類があり、下記の中に当てはまるものがあれば、歯並びを悪くする原因になっているかもしれません。

口腔習癖の種類

爪噛み

口腔習癖には様々な種類がありますが、歯並びを悪くする原因になりやすいので注意が必要です。

  • 弄指癖(ろうしへき)・・指を吸う、指しゃぶりなど
  • 弄舌癖(ろうぜつへき)・・舌癖、舌を前に突き出す癖など
  • 弄唇癖・・唇を噛む、唇を吸う
  • 口呼吸
  • 異常嚥下癖・・舌で歯を押しながら飲み込むなど
  • 頬杖
  • 睡眠態癖・・睡眠時の姿勢(横向き寝、うつ伏せ寝など)
  • 爪噛み

口腔習癖にはどんな影響があるの?

口腔習癖の影響

口腔習癖があると、どのような影響があるのでしょうか。その影響は歯並びだけに止まらないため、口腔習癖は出来るだけなおす必要があります。以下のものは代表的な口腔習癖による影響です。

  • 開咬(前歯が噛み合わない)
  • 上顎前突(出っ歯)
  • 上顎歯列弓の狭窄
  • 反対咬合(受け口)
  • 交叉咬合
  • 空隙歯列
  • 口元の突出感
  • アデノイド顔貌
  • 表情
  • 咀嚼、嚥下障害
  • 発音障害、入れ歯の不安定、歯の病的移動など

参考:矯正歯科治療 歯並びコーディネーター入門書/日本成人矯正歯科学会 編

指しゃぶりをやめさせるのに適しているのは乳歯列期

指しゃぶり赤ちゃんや幼児期の指しゃぶりは、生理的な現象で、4~5歳頃までには自然にしなくなる子が多いといわれます。しかし指しゃぶりの吸う力の強さや頻度や期間によっては、指しゃぶりによって歯が前方に押し出されるように動いてしまい、上顎前突などの不正咬合に繋がることがあります。

乳歯列期中に指しゃぶり等の癖をやめることが出来れば、永久歯の歯列には殆ど影響がないとみられます。しかし混合歯列期以降も続く指しゃぶりは、永久歯列の咬合とお口や顎の発育にも影響を与えるため、やめさせる必要があります。

とはいえ、無理にやめさせると別の好ましくない行動に移り、代償的な他の行動に繋がることがあるため、やめさせる場合は十分に注意しながら行う必要があります。

舌がスポットの位置にあるか注目

正しい舌の位置

リラックスした状態で黙って口を閉じて鼻呼吸をしている時、舌はどの位置にありますか? 下の正しい位置は、「スポット」とよばれ、上顎の真ん中の前歯の根元よりも少し後方(顎の方)に舌の先端が触れて、舌全体が上顎の口蓋のくぼんだ部分に収まっている状態のことをいいます。

舌が正しい位置にあり、舌と頬の筋肉の歯列に対する圧力が正常に働いていると、歯はそのバランスによって安定した位置に配列されます。

不正咬合は何が問題?

不正咬合は上下の歯の噛み合わせに問題があるということです。不正咬合の原因には、遺伝が関係することもあり、先天的な問題(生まれつきの問題)と後天的な問題(成長発育の過程で起こる問題)があります。

不正咬合で問題とされる点

・歯などの組織自体の大きさや形に問題がある
・歯などの組織が存在する場所に問題がある
・歯が生える顎骨の大きさに問題がある
・上下の顎の位置関係に問題がある

口腔習癖は不正咬合の原因になるのかに関するQ&A

口腔習癖とは何ですか?

口腔習癖は、指しゃぶりや舌で歯を押すなど、口の周りの習慣的な行動のことを指します。これらの習癖が口腔や歯の不正咬合の原因となることがあります。

口腔習癖はどうして不正咬合を引き起こすのですか?

口腔習癖により、口の周りの軟組織に過度の力がかかり、歯や顎の位置が変化することがあります。これが不正咬合を引き起こすメカニズムです。

口腔習癖の主な種類にはどんなものがありますか?

口腔習癖には指しゃぶり、舌で歯を押す、唇を噛む、口呼吸などさまざまな種類があります。これらの習癖は歯並びを悪化させる原因となります。

まとめ

歯のキャラクター

不正咬合の原因が全て口腔習癖というわけではありませんが、不正咬合をこれ以上悪化させないために、口腔習癖の有無を調べることは重要です。

舌で前歯を押すなどの癖が残ったままでは、一度きれいに歯並びを矯正しても、また後戻りする可能性があります。

口腔習癖は不正咬合の原因になり得ます。以下の研究がその関連性を示しています。

1. 口腔習癖と不正咬合の関連
口腔習癖、例えば口呼吸、吸引、唇や舌の習慣などは、不正咬合につながる重要な要因です。これらの異常な圧力は口腔および顎顔面複合体の筋肉のバランスを乱し、顎顔面複合体の正常な発達を妨げます。そのため、口腔習癖の早期診断と成功した治療は、不正咬合の早期治療にとって重要です。【Zhao, 2022】

2. 口腔習癖と不正咬合の影響
非生理的な口腔習癖は、異常な習慣であり、これらが持続し繰り返されると、頭蓋顔面の成長に影響を及ぼし、不正咬合につながる可能性があります。鼻呼吸から口呼吸への適応は、中耳炎、副鼻腔炎、上気道感染症、睡眠障害、顔の成長障害などの不健康な状態を引き起こすことがあります。【Pawinru, 2020】

これらの研究結果から、口腔習癖が不正咬合を引き起こす原因の一つであることが理解されます。特に口呼吸のような習慣は、顎や歯の正常な成長に影響を与えることが示されています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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