歯科矯正全般

前歯に口紅がつくのはなぜ?実は“出っ歯”が関係しているかも

前歯に口紅がつくのはなぜ?

「前歯に口紅がついてるよって、また言われた…」
もちろん親切で教えてくれているのはわかります。
でも、言われたご本人は、嫌な気分になるのではないでしょうか。

自分では全く気付かないのに、他人から指摘されるのって、嫌ですよね。(指摘してくれた人の責任ではありません。)
「なんで口紅が歯についてしまうんだろう?」と不思議に思う方も多いはずです。

その原因は、“出っ歯”による前歯の突出が関係しているかもしれません。
口紅の色やつけ方だけでなく、歯並びや唇との位置関係によっても、前歯に口紅がつきやすくなることがあるのです。

この記事では、
「なぜ出っ歯だと口紅がつきやすいのか?」
「どんな対策や治療法があるのか?」
など、気になるポイントをわかりやすく解説していきます。

まずお口の中の保湿をして、口紅を少なめに塗ってみよう

口紅が歯についてしまう原因に、「お口の中が乾燥している」というものがあります。口呼吸が原因で乾燥する場合もありますので、口呼吸をしている方は、この機会に治すことをおすすめします。

また、口紅をごく少量つけることも参考にしてみて下さい。保湿もしているし、多く塗っているわけでもないのに、やはり歯についてしまうという場合は、歯並びが悪いことが考えられます。

前歯に口紅がつく原因は“出っ歯”が関係していることもある

外出中や会話中に前歯に口紅がついてしまい、恥ずかしい思いをしたことがある方は少なくありません。実はその原因のひとつとして、「出っ歯」と呼ばれる前歯の突出が関係している可能性があります。出っ歯の方は、前歯が唇に触れやすいため、知らず知らずのうちに口紅がついてしまいやすくなるのです。

出っ歯が原因で口紅がつきやすいことがあります。

口紅をつけて数時間たってから、ふと鏡を見たら、前歯に色がついていた! そんな経験ありませんか? それは、出っ歯によって唇が前歯に触れやすくなっていることが原因かもしれません。とくに上の前歯が前に傾いている「上顎前突」の傾向がある方は、口紅がつきやすくなる傾向があります。

唇と前歯の位置関係がポイントになる理由

出っ歯の場合、唇と前歯の位置関係が崩れ、口を閉じたり話したりするたびに唇が前歯に触れやすくなります。正常な歯並びでは唇と歯に適度な距離が保たれますが、前歯が前に出ているとこのバランスが崩れ、摩擦や接触が増えることで、口紅が歯につく確率が高くなるのです。

出っ歯だと唇が前歯に当たりやすくなります。

通常、唇は前歯よりもやや前にある状態が理想ですが、出っ歯の場合は前歯が唇より前に出てしまうことがあります。そうなると、口を閉じたり、話したり笑ったりする際に、唇が前歯に触れやすくなるため、口紅がつきやすくなるのです。

出っ歯によって口紅がつきやすくなる仕組みとは?

出っ歯の方は、前歯が突出していることにより、唇が歯に直接あたりやすくなります。また、口を閉じる際に力が必要になることで、唇が前歯に押し付けられ、口紅がこすれるように付着してしまいます。これは会話中や笑顔の際など、日常の自然な動きの中で頻繁に起こるため、本人が気づかないうちに前歯に口紅がついてしまうのです。

出っ歯だと唇と歯がこすれて口紅がつきやすいです。

具体的には以下のような仕組みが関係しています。

  1. 前歯が前方へ突出している
     →唇と接触しやすくなる
  2. 唇を閉じるときに無理な力がかかる
     →唇の内側が前歯に押しつけられる
  3. 話す・笑う動作で摩擦が生まれる
     →摩擦により口紅が転写されやすくなる

下記のように、「出っ歯」と「正常な歯並び」での口紅がつきやすさの違いを表にまとめました。

比較項目 正常な歯並び 出っ歯(上顎前突)
唇と前歯の距離 適度にスペースがある 前歯が前方に出て唇と接触しやすい
唇を閉じるときの力 自然に閉じられる 無理に閉じようとして唇が前歯に押しつけられる
会話・笑顔時の前歯露出 目立ちにくい 前歯が目立ち、動作時に唇とこすれやすい
口紅の付きやすさ つきにくい つきやすい

この表からわかるように、唇と前歯の位置関係や日常動作時の接触頻度が、出っ歯の方では口紅の付きやすさに大きく影響しています。

出っ歯の方は、口元が常に軽く開きやすく、唇の内側が前歯に接触しやすい状態になっています。また、口を閉じる際に力がかかることで、口紅が前歯に押し付けられる場面が増えるのです。

つまり、前歯への口紅の付着は、「メイクの仕方の問題」だけでなく、「歯並びの構造的な問題」が根本にあることが多いといえます。

歯科的に見る「出っ歯」と唇の接触のメカニズム

歯科医学の観点から見ると、「出っ歯」とは上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれ、上顎の前歯(中切歯・側切歯)が前方へ突出している状態を指します。この状態では、上顎前歯の唇側傾斜(しんそくけいしゃ)や、下顎骨の劣成長などが原因となり、上下の前歯の被蓋(ひがい)のバランスが崩れているケースが多く見られます。

その結果として、以下のような現象が起こりやすくなります。

  1. 前歯が唇と接触する面積が増加
     → 特に閉口時や発話時に前歯と唇の摩擦が強くなる
  2. 唇が閉じにくくなり、口呼吸傾向になる
     → 口元が開きがちになり、前歯に異物(口紅など)が触れやすい
  3. 口輪筋(こうりんきん)の緊張によって唇が不自然に押し戻される
     → 唇の内側が前歯に押し付けられる動きが日常化する

このように、咬合(こうごう:噛み合わせ)や骨格の構造的な問題が、審美的・機能的なトラブルへと波及していることが、専門的に見た際の大きなポイントです。

さらに、「口紅が前歯につきやすい」というお悩みには、咬合異常や顎顔面のバランスの乱れが背景にある場合があります。そのため、単に口紅の塗り方といったテクニック的なもので解決するのではなく、歯科医師による咬合診断や矯正治療の検討が根本的な解決策となることもあります。

実際に多いお悩みの具体例:こんな場面で気になる!

前歯に口紅がつくことは、日常生活の中でさまざまな場面に影響を与えます。とくに人前での会話や写真撮影など、自分の表情が注目される場面では、口紅による前歯の汚れが大きな不安材料になりがちです。

また、皮肉なことに、歯が白ければ白い程、歯についたピンクや赤の口紅の色がはっきりと目立ってしまいます。

こうした悩みを抱えている方は少なくなく、生活の質にもつながるストレスとして見過ごせないものになっています。

歯に口紅がつくことで、人前での会話や笑顔が気になることも。

たとえばこんな場面で、前歯の口紅移りに悩む方が多いです。

  1. 会話中に相手の視線が気になる
     →自分では気づきにくいので不安に
  2. 写真撮影で笑った時に気づく
     →後で写真を見て落ち込むケースも
  3. お出かけ中に頻繁に鏡チェックが必要
     →メイク直しの手間が増える

このようなちょっとした悩みでも、積み重なると大きなストレスになってしまいます。とくに笑顔や第一印象を大切にしたい方にとっては、気になる問題です。

出っ歯が原因の場合の対処法・改善策とは

前歯に口紅がついてしまう悩みを解消するためには、まず原因を見極めることが大切です。出っ歯が根本的な原因である場合には、口紅の種類や唇の使い方を工夫するだけでなく、歯科医院での相談を通じて歯並びの改善を検討することが、より根本的な解決につながります。症状や悩みの程度に応じた対策がポイントです。

出っ歯の改善が根本的な対策です。

口紅がつくのを防ぐには、まずは現在の口元の状態を把握することが重要です。以下の対策が考えられます。

  1. こまめに鏡でチェックする
     →応急的ですが、外出時は便利
  2. 口紅の選び方を見直す
     →マットタイプやティント系はつきにくい
  3. 唇の動きを意識してみる
     →口を閉じるときに無理な力をかけない
  4. 歯科での相談・矯正の検討
     →根本的に改善したい場合は歯科医院へ

応急処置としての工夫も大切ですが、根本原因が出っ歯であれば、矯正治療などの選択肢も視野に入れると、より快適な生活が手に入ります。

矯正治療で改善できること・注意点

出っ歯が原因で口紅がつきやすくなっている場合、矯正治療によって歯の位置を整えることで改善が見込めます。特に前歯の傾きや出方をコントロールすることで、唇との接触頻度を減らし、日常的な不快感を軽減できます。ただし、矯正には適切な診断と治療計画が必要となるため、専門的な判断が欠かせません。

矯正で唇と歯のバランスが整います。

出っ歯の改善には、次のような矯正方法があります。

  1. ワイヤー矯正
     →目立つが、しっかり動かせる
  2. マウスピース矯正(例:インビザライン)
     →見た目が気になりにくく人気
  3. 部分矯正
     →前歯だけ動かす治療も可能な場合あり

ただし、矯正には時間や費用がかかるため、まずは歯科医院で現在の歯並びや骨格を診てもらうことが大切です。

まずは歯科医院での相談が安心の第一歩

「前歯に口紅がつく」というお悩みも、歯並びやかみ合わせの専門的な視点で見ることで、意外な原因が見えてくることがあります。自己判断だけで済ませず、歯科医院でしっかりと相談することで、最適な治療法や対策が明確になります。自分に合った方法で、口元のストレスを少しずつ減らしていきましょう。

まずは相談からはじめてみましょう。

口紅がつく悩みは、ちょっとしたことのように感じるかもしれませんが、実は歯並びやかみ合わせの問題が関係しているケースも少なくありません。出っ歯以外にも不正咬合がある可能性もあるため、まずは医院での健診をおすすめします。

まとめ

「前歯に口紅がつく」という日常のお悩みの裏に「出っ歯」という歯並びの問題が潜んでいることもあります。「鏡を見るたびに気になったり、メイク直しが増えるのは、出っ歯のせい?」と疑問に思っておられるなら、まずクリニックで相談してみて下さいね。

矯正相談では、「平均的な状態よりもどの程度出っ歯なのか」、「治療した方がいいのか」、「治療方法は?」など、疑問に思っていることを担当医にご質問くださいね。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。歯科医師免許取得後、医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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