歯科矯正全般

歯並びは良いけれど出っ歯なので治療したい

歯並びは良いけれど出っ歯なので治療したい

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

歯並びは整っているのに、歯が前に出ていて出っ歯でお悩みの方がおられます。歯列矯正はガタガタの歯を治すといイメージがありますが、歯並びがきれいで出っ歯の場合は矯正で治療が出来るのかどうかご説明します。

歯並びは良いけれど出っ歯になっているパターン

歯並びが整っているのに出っ歯になっている場合は、顎が少し小さく、歯が並ぶために必要なスペースが少し足りていないということが考えられます。顎が小さすぎる場合は、歯並びが整っておらずガタガタになりますので、「わずかに小さい」というタイプです。

この場合も、矯正装置を歯に付けて歯並びを整えていきますが、抜歯矯正を行うとスペースが出来過ぎますので、ディスキングという方法で歯を動かすスペースを作ります。

その後、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正のどれかの装置を歯に付けて、歯を動かし、前歯を後ろに下げていきます。

出っ歯の程度によっては、前歯にだけ装置を付ける部分矯正で治療出来る場合もあります。部分矯正は全体矯正と比べると、治療期間や費用が少ないというメリットがあります。

出っ歯のタイプについて

日本人には出っ歯の方が比較的多いのですが、一言で出っ歯と言っても、様々なタイプがあります。

1. 顎が小さいために出っ歯になっている場合

小児矯正

小児矯正では、成長を利用して顎の大きさや歯並びを整えていきますので、顎が小さくて出っ歯になっている場合は一期治療を行い、顎骨の成長を促進させるような矯正装置を付けます。顎の骨が適度な大きさになってからは二期治療を行います。二期治療で使用する矯正装置は大人の矯正と同じもので、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の3種類があります。一期治療を終えている場合は抜歯の必要はありません。

大人の矯正

大人の方は、既に顎の成長が止まっていますので、顎の大きさは変わりません。そのため、歯に装置を付けて歯を動かして歯並びを整える矯正治療を行います。多くの場合は抜歯矯正になります。歯に装置を付ける矯正方法は、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の3種類があります。

2. 歯の傾斜によって前歯が突出している場合

骨格の大きさに問題はなく、前歯の傾斜によって出っ歯になっているタイプです。まず、歯をどのくらい動かさなければならないかを診断し、歯を動かすためのスペースを作って前歯を引っ込めていきます。

歯をあまり大きく動かさない場合は、前歯の両端のエナメル質の部分を削ってスペースを作ります。歯を大きく動かす場合は、小臼歯を抜歯してスペースを作ります。

歯に装置を付ける矯正方法は、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の3種類があります。

3.上顎の骨格が前に出ている骨格性の出っ歯の場合

骨格が前に出ているタイプの出っ歯は、口ゴボとも呼ばれ、歯に装置を付けて前歯を後ろに引っ張っただけでは、口元の突出感が治りません。

そのため、外科手術で上顎の骨を切って前歯を後ろに下げるセットバック手術という方法を取ります。セットバック手術は全身麻酔で行いますが、日帰り手術ですので入院の必要はありません。

4. 下の顎が後退しているために出っ歯に見えている場合

顎が下がって出っ歯に見えている

上の前歯はそれほど出ているわけではないのに、下顎が後ろに引っ込んでいるために、横顔を見ると出っ歯に見えてしまう場合があります。

このタイプの方は、下顎を前に出すオトガイ形成前方移動術と呼ばれる外科矯正を受ける必要があります。下顎が前に出れば、横顔のラインが整って見えます。

出っ歯を引っ込めるための矯正装置について

出っ歯を引っ込める時に使う矯正装置は、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の3種類です。それぞれについてご説明します。

ワイヤー矯正

 

歯にブラケットとワイヤーをつけて、ワイヤーに力を加えることで歯を動かしていきます。ワイヤー矯正は装置が目立つのがデメリットでしたが、当院では白いセラミックのブラケットと、白い樹脂を巻いたホワイトワイヤー(別料金)で、あまり目立たない状態でワイヤー矯正が可能です。

金属と白のブラケットとワイヤー

 

裏側矯正

 

歯の裏側に矯正装置を付けるのが裏側矯正です。当院ではインコグニトという裏側矯正装置を使用します。

インコグニトはオーダーメイドで、患者さんお一人おひとりの歯の形状にぴったり合ったブラケットを作製出来ます。そのため従来の裏側矯正の装置よりもブラケットが薄く、違和感が少ないのが特徴です。

マウスピース矯正

インビザライン

 

マウスピース矯正は透明なマウスピースを付け替えることで歯を動かしていきます。当院ではインビザラインというマウスピース型の矯正装置を使います。

インビザラインの特徴は、アタッチメントという小さな突起を歯に付けて、歯にかける力の強さや方向を決められることです。

マウスピースの装着時間は1日22時間以上とかなり長く、食事と歯磨きの時にはマウスピースを外して行うことが出来ます。患者さんが装着時間をきちんと守れるかどうかが、治療が成功するかどうかのカギとなる場合が多いです。

歯並びは良いけれど出っ歯なので治療したいに関するQ&A

歯並びが整っているけれど出っ歯の場合、治療は可能ですか?

はい、歯並びが整っているけれど出っ歯の場合も治療可能です。歯列矯正を行い、歯を後ろに下げて出っ歯を改善する方法があります。

出っ歯のタイプは何種類ありますか?

出っ歯のタイプには、顎が小さい場合、歯の傾斜によるもの、上顎の骨格が前に出ている骨格性のもの、下の顎が後退している場合などがあります。それぞれ異なる治療アプローチが必要です。

子供と大人の出っ歯の治療方法は異なりますか?

はい、子供と大人の出っ歯の治療方法は異なります。子供の場合は成長を利用して顎の大きさを整える小児矯正が行われ、大人の場合は歯を動かすための矯正治療が主に行われます。

まとめ

歯のキャラクター

歯列がきれいに揃っているけれど出っ歯になっているというお悩みに対しての治療方法などについてご説明しました。歯がガタガタに入り組んでいるタイプの不正咬合と比べると、比較的簡単に治る場合もありますので、ぜひ一度矯正医にご相談ください。外科矯正が必要なケースもありますが、その場合は丁寧にご説明いたしますので、ご安心ください。

歯並びが良いにも関わらず出っ歯である場合の治療に関する直接的な論文は見つかりませんでしたが、関連する研究を2件ご紹介します。

1. サウジアラビアの人々の笑顔に対する満足度 この研究では、歯科美容が自己信頼や生活の質に直接的な影響を与えるという観点から、サウジアラビアの人々が自身の笑顔に対してどの程度満足しているかを調査しました。1129人の参加者のうち、38.4%が一般的な歯の見た目に満足していないと回答し、29.8%が歯が突出していると報告しました。これは、歯の突出が顔面美容に関する満足度に影響を及ぼすことを示しています [Ahmed, 2017]

2. 透明な矯正装置の計算設計と工学 この研究は、透明で取り外し可能な矯正装置が、最小限の侵襲的な手順でさまざまな歯科の不正咬合を修正する効果的な解決策であることを説明しています。矯正治療において、患者は順次、歯列に合うシェルを着用します。これらのアライナーは、歯を正しい位置に動かすための力を適用します。この研究は、歯並びが良い場合でも、特定の歯の突出を修正するための矯正治療が可能であることを示唆しています [Barone et al., 2017]

これらの研究に基づくと、歯並びが良いにも関わらず出っ歯である場合、矯正治療が顔面美容の改善に役立つ可能性があります。透明な矯正装置などの最小限の侵襲的な治療手段が、特定の歯の位置を修正し、顔の外観を改善するための効果的な選択肢であることが示されています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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