歯科矯正全般

歯科矯正用アンカースクリューとは?

歯科矯正用アンカースクリューとは?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

矯正治療で時々使われるアンカースクリュー(ミニインプラント、ミニスクリューともいいます)についてご説明します。

アンカースクリューの役割とは?

ミニスクリュー

矯正治療を行う際のアンカースクリューの主な役割は、固定源として機能することです。歯列矯正は歯を引っ張って移動させるため、歯に力をかける必要があります。

出っ歯の場合、奥歯を固定源として前歯を後ろに引っ張って下げていきますが、その際に、奥歯に反作用が働き、前歯に引っ張られて奥歯が少し前に動くということが起こります。

これを防ぐために、歯ではなくアンカースクリューを顎骨に直接埋め込んで歯を引っ張る為の固定源とすることで、奥歯を前に動かすことなく、前歯だけを後ろに下げることが出来ます。

また、抜歯した部分のスペースを閉じるためにアンカースクリューが使われることもあります。

固定として使用されるアンカースクリューとは?

歯科矯正用アンカースクリューは、口腔内の顎骨に埋め込んで固定として利用するためのスクリューで、チタン製の直径1.4mm,長さ6mm程度の医療用ねじのことです。

歯を移動させるためのけん引力を働かせる際の固定源として使用します。

アンカースクリューによって可能になった歯の移動

アンカースクリュー出っ歯の場合

今までの矯正治療では、臼歯が前にひっぱられて前に移動してしまうのを最小限に抑えるために、ヘッドギアやリンガルアーチなどの様々な装置を併用しなければなりませんでした。

アンカースクリューが開発されてからは、これまでは難しいとされていた

  1. 歯の近遠心移動(前方、後方への移動)
  2. 上顎歯列の遠心移動(出っ歯を引っ込める)
  3. 下顎歯列の遠心移動(受け口、反対咬合を引っ込める)
  4. 前・臼歯部の圧下(歯の根っこ方向への移動)

などが比較的容易になってきました。

【動画】ミニスクリュー

アンカースクリューのメリット・デメリット

アンカースクリューは矯正治療では大変利便性の高いものですが、担当の歯科医師には技術と経験が求められます。以下のメリット・デメリットを十分に理解して処置する必要があります。

アンカースクリューのメリット

  1. 比較的容易に顎骨に埋め込むことが出来る
  2. 比較的安価で出来る
  3. 患者さんの負担は軽度
  4. 顎骨に埋めるため患者さんの協力なしに固定源に出来る

アンカースクリューのデメリット

  1. 稀にスクリューが動いたり抜けたりすることがある
  2. 埋め込んだ位置によっては歯根に接触する可能性がある
  3. 麻酔の処置が必要となる

アンカースクリュー埋入後のセルフケア(歯磨き)について

歯磨き

アンカースクリューが抜けてしまうのには様々な要因がありますが、スクリューの周囲の組織に炎症が起こったためというのが一つの原因になります。

それを防ぐためには、アンカースクリューを埋め込んで2週間経過した時から歯肉の上に顔を出しているスクリューのヘッド部分に汚れがたまらないように清掃を行うことが大切です。

矯正装置のブラッシングと同じように、ヘッド部分に歯垢が溜まらないように、丁寧に汚れを除去する必要があります。

注意点としては、ブラッシングの力を入れすぎないようにすることと、歯ブラシの背など硬い部分が当たらないように気をつけます。

また、食事の際には硬い食べ物がスクリューのヘッド部分に当たらないように気をつけましょう。口内洗浄液の使用も効果的です。

アンカースクリューはどうやって外すの?

矯正治療が進み、アンカースクリューで強く引っ張る必要がなくなった時には、スクリューの周囲に表面麻酔を塗って抜き取ります。麻酔なしでもごく小さな痛みで済ますし、スクリューを抜いた後の歯肉も数日で治って目立たなくなります。

また、スクリューが埋まっていた骨も一ヶ月程度で自然に再生され、元通りになります。

歯科矯正用アンカースクリューとはに関するQ&A

アンカースクリューの主な役割は何ですか?

アンカースクリューの主な役割は、歯科矯正治療において固定源として機能することです。歯を引っ張って移動させる際に、アンカースクリューは歯に力をかけずに、顎骨に埋め込まれて歯を安定させる役割を果たします。このようにして、歯の移動を効果的に制御することができます。

アンカースクリューはどのような場合に使用されますか?

アンカースクリューは、特に出っ歯の矯正治療や歯の移動における固定源として使用されます。出っ歯の場合、奥歯を前に引っ張って前歯を下げる必要がありますが、アンカースクリューを使用することで奥歯の位置を安定させ、前歯だけを後ろに移動させることができます。また、抜歯した部分のスペースを閉じるためにもアンカースクリューが使用されます。

アンカースクリューの材料とサイズについて教えてください。

アンカースクリューは一般的にチタン製で、直径は約1.4mm、長さは約6mm程度の医療用ねじです。このサイズと材料は、顎骨に埋め込んで固定源として使用するのに適しています。

まとめ

歯のキャラクター

アンカースクリューは抜歯矯正で歯を大きく動かす必要がある時に、固定源として効果を発揮します。患者さんの不正咬合の種類によって担当医が必要だと判断した時に使用しますが、事前に患者さんには十分にご説明しますので、ご心配には及びません。

歯科矯正用アンカースクリュー(ミニスクリュー、マイクロスクリューとも呼ばれる)は、歯科矯正治療における固定源(アンカレッジ)として使用される小さなスクリューです。以下の研究が、アンカースクリューの使用とその効果について述べています。

1. アンカースクリューを用いた審美的改善
ある研究では、アンカースクリューを使用して上下顎突出の2症例において口元と唇の審美性を改善し、口閉じの完全な閉鎖を容易にする治療が行われました。この治療では、上顎の中切歯を10mm、下顎の中切歯を3mm後退させることで、上唇を3mm、下唇を5mm後退させることに成功しました。これにより、審美性が向上しました。【Katada, 2019】

2. アンカースクリューを用いたアンカレッジ喪失の修正
別の研究では、ミニスクリューが直接または間接的なアンカレッジとして使用され、その配置の容易さや即時荷重による絶対的なアンカレッジが拡大する分野として注目されています。この臨床症例を通じて、アンカレッジのコントロールが失われた症例の修正にミニスクリューの有効性を示しています。【Houb-Dine & Zaoui, 2017】

これらの研究から、アンカースクリューは歯科矯正治療において重要な役割を果たし、審美性や機能性の向上に寄与することが理解されます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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