不正咬合の出現についての過去の調査結果

不正咬合の出現についての過去の調査結果

今までに行われた不正咬合についての様々な調査の内容と結果について。どの種類の不正咬合が多いのか、男女で差があるかどうか等の調査結果をご案内します。

不正咬合と正常咬合の境目

悪い歯並び「不正咬合」の種類

不正咬合は、正常な咬合の範囲から外れた不正な咬合状態のことをいいます。正常咬合とみなされるものには一定の幅があるため、正常咬合と不正咬合の境目をどのように定めるかが問題になります。

また、正常咬合の範囲から外れているため不正咬合と診断された場合も、どの点に着目して、正常咬合からどの程度はずれているのかということにも着目する必要があります。

不正咬合の頻度の出現を調べる調査

不正咬合と診断された患者さんは矯正歯科治療の対象となります。では、ある集団の中でどの程度の頻度でその不正咬合は出現するのでしょうか?それを調べていくことは、矯正歯科治療が社会的にどの程度必要とされているかを考えていく上で参考になります。

不正咬合の出現に関する調査(イギリス)

グレインジャー(1967年)は、矯正歯科治療を受けたことのない12才の子ども375人に対して、不正咬合の治療優先度指数(TPI)の観点から、以下の10項目について調査を行いました。

  1. オーバージェット・プラス
  2. オーバージェット・マイナス
  3. 過蓋咬合
  4. 開咬
  5. 先天的欠如し
  6. 下顎遠心咬合
  7. 下顎近心咬合
  8. 臼歯部交叉咬合(上顎頬側)
  9. 臼歯部交叉咬合(上顎舌側)
  10. 転移歯

調査内容は、不正咬合の重篤度を0(正常咬合)から10(治療をぜひとも必要とする、きわめて重度の不正咬合)までの11段階として数値化し、調査結果から得られたデータを分析するというものです。

その結果、要治療者の比率は12.5%で、治療を受けた方が良いと思われるものを含めると44.5%でした。

不正咬合の出現に関する調査

要治療者の不正咬合の内訳は、オーバージェット・プラスが9%、転移歯が5.1%というもので、治療が選択的であったものも含めた不正咬合の割合は、オーバージェット・プラスが33.6%、過蓋咬合が4%、下顎遠心咬合が8.3%、臼歯部交叉咬合(上顎頬側)が1.3%、臼歯部交叉咬合(上顎舌側)が0.3%、転移歯が17.3%だった。(重複分を含む)

イギリスでは不正咬合を保険適用で治療する目的のために、不正咬合の正確な定義が必要になります。不正咬合を形態的、審美的の両面から詳細に定義しています。つまり、不整咬合の重篤度を数値化して、矯正歯科治療が必要か、必要でないかの判断を行っています。

※オーバージェットとは、上の前歯がどれくらい下の前歯に被っているかの水平方向の位置関係をいいます。

不正咬合の出現に関する調査(日本の厚生労働省による)

日本では1969年、1981年に行われた厚生労働省医務局の調査による「歯科疾患実態調査報告」のなかで不正咬合が取り上げられています。ここで行われた不整咬合の調査は、患者に咬頭嵌め合位をとらせて、側面から前歯部を観察するという比較的簡単な方法で行われました。

上下の組み合わせが上下的(垂直的)に深いものを「過蓋咬合」、下顎前歯が上顎前歯の前方に突出しているものを「反対咬合」、上下顎前歯が切端で咬合しているものを「切端咬合」、上顎前歯が前方に突出して下顎前歯の歯冠の半分以上を覆う状態になっているものを「上顎前突」、上下顎前歯部に数歯にわたり上下的(垂直的)な間隙があって咬み合わせることが出来ないものを「開咬」として定義し、これをもとに不整咬合の頻度を調査しています。

不正咬合の出現に関する調査

1969年に行われた21歳未満の7,716人(男子3,832人、女子3,884人)による調査結果では、矯正歯科治療が必要と考えられる上顎前突不正咬合の総数は13.6%で、そのうち反対咬合は4.22%、過蓋咬合が3.40%、切端咬合が3.32%、開咬が1.63%、上顎前突が0.79%でした。この調査によると男女差は殆どなかったとのことです。

1981年に行われた20歳未満の4,907人(男子2,456人、女子2,451人)の調査では、前回の調査に「叢生」、「離開(空隙)」の不正咬合が加えられています。ちなみにこれらの定義は、叢生が転移歯、捻転歯を伴うところの歯の錯そうした排列状態のもの、離開(空隙)が歯間に空隙のあるものとしています。

不正咬合の出現に関する調査

調査結果は、矯正歯科治療が必要と考えられる不正咬合の総数は17.99%で、そのうち叢生が6.50%、反対咬合は4.16%、切端咬合が2.32%、上顎前突が1.55%、離開が1.32%、開咬が1.24%、過蓋咬合が0.90%でした。男女の差では、不正咬合は女性にやや多く見られました。ただし、1969年の調査とは調査方法に若干の違いがあり、単純に比較は出来ないとしています。

不正咬合の出現に関する調査(日本の歯科医師による)

一方、矯正歯科治療に従事している歯科医師による調査として須佐美先生らの報告があります。(1971年)この調査は近畿北陸5府県の学校児童、生徒12,096人(男子6,204人、女子5,892人)を対象に行ったもので、不正咬合の定義をより具体的にしています。

つまり、観察対象の不正咬合を「上下歯列弓の異常」「歯列弓の異常」「個々の歯に限局される異常」に分け、オーバージェット、オーバーバイト、臼歯部近遠心・頬舌関係、歯列弓の叢生と空隙、個々の歯の位置についてミリメートルで表現するなど、より具体的な定義を行いました。

その結果、全体の49.6%(男子48.5%、女子50.8%)に何らかの不正咬合が認められました。また、不正咬合は男女間では女子の方が多い結果になりました。

個々の不正咬合のうち「上下歯列弓関係の異常」では、過蓋咬合が7.14%、開咬が5.37%、切端咬合が5.20%、上顎前突が5.18%、反対咬合が3.86%で、「歯列弓の異常」、「個々の歯に限局される異常」では、1-2歯の前歯逆被蓋が4.25%、上顎犬歯低位唇側転移が3.57%、前歯部叢生が上顎7.56%、下顎が6.21%、前歯部空隙が上顎3.82%、舌顎3.06%、正中離開が6.85%でした。ここから前歯部の叢生がかなりの高率であることがわかります。

以上の調査結果では、調査によって結果にかなりのばらつきが見られます。これには調査時の年代、調査対象の地域差などの要因が考えられますが、主な要因は不正咬合の定義の差にあると思われます。

不正咬合の出現に関する調査(日本の大学病院による)

以上の調査のほかに、大学病院の矯正歯科、その他の診療施設で来院患者を対象に数多くの調査が行われています。須佐美先生らの不正咬合の定義に沿って調査を行った永田先生の研究(1994年大阪大学歯学部付属病院矯正科)によると、男子においては反対咬合が25%、叢生が24%、上顎前突が15%、女性では叢生が31%、反対咬合が20%、上顎前突が16%でした。

まとめ

以上の調査によると、矯正患者における不正咬合の頻度には各調査間で差がみられます。
これらの差は、診療期間の地域による差に基づくものが多いと考えられます。また、調査年度によってもその頻度に動きがみられることも指摘されています。