部分矯正

上下前歯の部分矯正は同時に出来る?

部分矯正を上下とも行える?詳しく教えて

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

前歯の部分矯正を上下ともに行うことは可能でしょうか。部分矯正の治療についてご説明します。

上下の部分矯正と全体矯正の違い

部分矯正と全体矯正の違いは以下のようなものです。

  • 全体矯正・・全ての歯を正しい位置に動かす。重度や中程度の不正咬合の症例や、奥歯の噛み合わせも治療する
  • 部分矯正・・前歯のみを動かす。軽度の不正咬合の症例を治療する

部分矯正の特徴

1. 対象範囲

部分矯正は、主に見た目に影響を与える前歯など、特定の歯や歯列のみを対象とした治療です。対象となるのは通常、上または下の前歯6~8本程度です。上下の前歯を同時に治療することも出来ます。

2. 治療目的

部分矯正は主に前歯の矯正を行うため、審美的な改善を目的としています。歯並びやかみ合わせの軽度から中等度の問題を解決し、笑顔の印象を美しくすることが期待されます。

3. 治療期間

全体矯正に比べて治療期間は短く、数ヶ月から1年程度で終了することが多いです。

4. 費用

部分矯正では治療の対象となる歯が主に前歯の6~8本程度と範囲が限られているため、全体矯正に比べて治療費は低めです。

全体矯正の特徴

1. 対象範囲

全体矯正は、口腔内の全ての歯を対象とした治療で、上下の歯列全体の歯並びやかみ合わせの問題を解決します。

2. 治療目的

審美的な改善だけでなく、機能的な改善も目的としています。歯並びやかみ合わせの問題を根本から解決し、噛む機能の改善や顎関節症の予防など、口腔内の健康全体を向上させます。

3. 治療期間

全体矯正は、全ての歯を動かすことと、抜歯矯正が行われることが多いため、治療期間が長くなりがちです。一般的には2年から3年程度を要します。

4. 費用

全体矯正は、治療範囲が広く、治療期間も長いため、部分矯正に比べて費用が高くなります。

 
出っ歯やガタガタ、受け口など、不正咬合の程度がどの程度かで、部分矯正が可能かどうかが決まります。ガタガタの歯の重なりが大きい場合や、出っ歯の突出が大きい場合、また、噛み合わせの治療が必要な場合は、部分矯正で治療することが出来ず、全体矯正が必要になります。
 
患者さんご自身では不正咬合の程度がわからないと思いますので、部分矯正で歯列矯正をお考えの方は、歯科医院へご相談ください。
 

部分矯正を上下とも行うのは可能?

部分矯正は主に前歯の軽度のガタガタや前突を治すための治療なので、上の前歯のみを部分矯正で治療する方が多い傾向があります。しかし、もちろん下の歯並びにも部分矯正は行えますし、上下の前歯を同時に部分矯正で治療することも可能です。

下の前歯は上の前歯ほどは他人からはっきり見えません。そのため、上下の部分矯正を行う場合に、上の前歯は裏側矯正で、下の前歯はワイヤー矯正で治療をされる方もおられます。

上下前歯の部分矯正を同時進行で行うメリットとは?

メリット・デメリット
上下の前歯を同時に部分矯正で治療すると、以下のようなメリットがあります。

1. 治療期間の短縮

上の前歯と下の前歯の部分矯正を別々に行わずに同時に行うことで、全体の治療期間を短縮出来ます。

2. 費用の削減の可能性

同時に治療を行うことで、別々に治療を行う場合に比べて費用が抑えられる可能性があります。

3. 治療の統一性

同一の治療計画に基づき、矯正を行うことで、上下の歯並びのバランスを確認しながら治療を進められるなど、より一貫性のある結果を期待出来ます。

部分矯正の治療法

矯正治療には、全顎矯正(全体矯正)・部分矯正(MTM)と二種類があります。MTMは略称で、Minor Tooth Movementが正式名称です。矯正治療の費用はすべて保険適用外で自由診療となるため、医院によって料金の設定は異なります。

全顎矯正では大きく動かすため、小臼歯の抜歯をしてそのスペースを活用しますが、部分矯正ではスペースを作るために歯の大きさを削る処置を行います。これをIPR(ディスキング、スライス)と呼びます。

https://www.osaka-kyousei.com/kyousei4.html

部分矯正の矯正装置

歯並びを整える為に歯に付ける装置は、部分矯正でも全顎矯正でも同じで、下記の種類を取り扱うクリニックが多いです。

  1. ワイヤー矯正
  2. 裏側矯正
  3. マウスピース型矯正

1. ワイヤー矯正(普通矯正)

  • 歯の表側にブラケットという小さな装置をつけ、そこにワイヤーを通す矯正治療法
  • 他の矯正法と比較して安いのがメリットだが、審美性と言う点では目立つというのがデメリット※白いワイヤーを使用することも出来る

2. 裏側矯正(舌側矯正)

  • 歯の裏側にブラケットという小さな装置をつけ、そこにワイヤーを通す矯正治療法
  • 他人から装置が見えにくいのがメリットだが、オーダーメイドのワイヤーを海外で作製するため費用が高く、発音や発声に慣れるのに時間がかかるのがデメリット

3. マウスピース型矯正装置

  • 患者さん自身で取り外しが可能なマウスピース型の矯正装置
  • 食事前に外して普段通り噛むことができ、見た目で矯正しているとわかりにくい審美性が特徴
  • 1日22時間以上の装着が必要で、装着時間を守らなければ歯の動きが遅くなり、治療期間が延びるデメリットがある

矯正を始める動機

人と話している時や、歯磨き後に鏡で歯を見ている時など、自分の歯並びが気になるケースは様々あります。就活や社会に出られた際、人へ与える印象の大切さや、逆に他の人の印象を左右する話し方や口元などについて、気にするようになった方もおられるでしょう。それらが歯科矯正を開始したいと思われる理由になることもあります。
 
子供でも大人でも矯正治療を行えば、見た目だけではなく、噛み合わせや咀嚼機能の改善になります。胃腸への消化器官の負担が軽減して栄養素の吸収が良くなるので、噛むことで唾液分泌の量が増え、口腔内の汚れや歯垢(プラーク)を除去する自浄作用となり、結果的にご自身の天然歯を長持ちさせてお口の健康につながります。
 

部分矯正での上下顎の治療に関するQ&A

Q

部分矯正を上下顎ともに行うことは可能でしょうか?

A

部分矯正を上下顎ともに行うことは可能です。部分矯正は部分的な歯の不正咬合を修正する治療方法で、上下で異なる箇所の歯を矯正できます。

Q

部分矯正と全体矯正の違いは何ですか?

A

部分矯正は部分的に歯並びが気になる部分を修正する治療で、主に見た目を改善するために行われます。一方、全体矯正は前歯から奥歯まで全ての歯を正しい位置に移動させ、同時に噛み合わせも整える治療です。

まとめ

歯のキャラクター

部分矯正を行いたいと思われる際は、質問などをしやすい担当医がいる・レントゲンや歯科用CTなどの環境の整った医院・通院しやすいなどを基準に、クリニックを選択しましょう。また、保定の期間もきちんとリテーナー(保定装置)を装着し、歯列が後戻りをしないようにしっかりと固定することも必要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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