裏側矯正

裏側矯正中で喋りにくい。喋り方のコツを教えて

裏側矯正中で喋りにくい。喋り方のコツを教えて

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

裏側矯正の装置をつけると、滑舌が悪くなって喋りにくくなることが多いのですが、滑らかに喋れるようになるにはコツがありますので、ご説明します。

裏側矯正で発音しにくくなる音とは?

発声

裏側矯正は装置によって舌の動きが制限されるため、その状態に慣れるまでの間は、滑舌の悪い状態になる方が多いです。

殆どの方は慣れによって話しにくさは解消しますが、特定の音の発音しづらくなります。

日本語の場合は、前歯の裏側に舌を付けたり、接近させるような動きが必要な、「サ行」「ザ行」「タ行」「ダ行」「ナ行」「ラ行」などの音が発音しにくくなります。

裏側矯正でどうして滑舌が悪くなるの?

裏側矯正

元々不正咬合のために滑舌が悪い方は、歯並びの治療をすることで滑舌が改善することが多いのですが、裏側矯正の装置を歯の裏側に付けると、滑舌が悪くなり、発音しにくくなる方が多いです。

その理由は以下のようなものです。

  1. 装置によって舌の動く範囲が狭くなる
  2. 特定の音の発音で舌が装置に当たってしまう
  3. 歯の隙間から息が漏れて発音が変わる
  4. 装置によって口全体が動かしにくくなる

喋りにくさ解消のためのトレーニングとは?

舌のトレーニング

裏側矯正の装置によって話しにくい状態を解消するには、舌が動きやすくなるようにトレーニングするという方法があります。

  1. あいうべ体操・・口呼吸の改善のためのトレーニングとして知られていますが、口元の筋肉が鍛えられるため、裏側矯正の滑舌を改善するためにも一定の効果がみられます。
    ・「あ~」「い~」「う~」「べ~」と口を大きく動かして「べ~」の時には舌を思い切り下方向に伸ばすのを、ゆっくりと繰り返すだけです。声を出しても出さなくても効果があります。
  2. ガムを使ったトレーニング・・これも口呼吸の改善のためのトレーニングとして取り入れられているものですが、舌の筋肉を鍛えることが出来ます。
    ・ガムを噛んで軟かくしてから、舌を使って丸くまとめ、上顎全体にはりつけて、舌でガムを後ろに伸ばしていきます。

 

あいうべ体操

発声のトレーニング

  1. 早口言葉
  2. 母音のみで言葉を話す

母音のみで言葉を話すと、口をしっかり動かす必要があります。しっかりと声を出すには、腹式呼吸がおすすめです。

早口言葉

裏側矯正ってどんな装置をつけるの?

裏側矯正

裏側矯正は、舌側矯正、リンガル矯正とも呼ばれ、歯の裏側に矯正装置を付けます。外からは装置が見えないので、職業柄、目立つ矯正装置をつけられない方や、他人から矯正しているとわかるのが嫌な方などにおすすめです。

裏側矯正で付ける装置は、ワイヤーとブラケットです。当院ではインコグニトという名称の、ドイツで開発されたオーダーメイドの装置を使用しています。

インコグニトの特徴

  1. 患者さんの歯型に合わせてブラケットと作るのでぴったり歯に合った薄い装置が作れる
  2. 装置が薄いので、従来の発音のしにくさがやや改善されている
  3. 金合金なのでアレルギーが起こりにくい
  4. ワイヤーに食べ物が絡まったりして歯みがきが少し難しくなる
  5. 歯の表に装置を付けるワイヤー矯正よりも少し費用が高くなる

裏側矯正中での喋り方のコツに関するQ&A

裏側矯正で喋りにくくなる音はどのような音ですか?

裏側矯正を受けると、特に「サ行」「ザ行」「タ行」「ダ行」「ナ行」「ラ行」など、舌を前歯の裏側に接触させる音が発音しにくくなります。

裏側矯正によって滑舌が悪くなる理由は何ですか?

裏側矯正にはいくつかの理由があります。装置によって舌の動きが制限され、特定の音の発音が難しくなること、舌が装置に当たってしまうこと、歯の隙間から息が漏れて発音が変わること、口全体が動かしにくくなることが挙げられます。

裏側矯正の滑舌の問題を解消するためのトレーニング方法は何ですか?

滑舌の問題を解消するためのトレーニング方法には、あいうべ体操、ガムを使ったトレーニング、早口言葉、母音のみで言葉を話すなどがあります。これらのトレーニングは舌の動きや口元の筋肉を鍛えて、喋りやすさを向上させます。

まとめ

インコグニト

 

裏側矯正は歯の裏側にワイヤー、ブラケットを付けるため、舌の動きが制限されて発音がしにくくなります。喋りにくさは慣れとトレーニングなどで改善されますが、人と話すことの多い営業職や教師、アナウンサー、セミナー講師などの職業の方は、矯正装置によって話し方に影響が出ますので、事前に矯正担当医にご相談下さい。

裏側矯正中の話し方のコツに関する論文を2件ご紹介します。

1. C-lingualリトラクターと従来の舌側矯正ブラケットの比較
研究では、C-lingualリトラクターと呼ばれる装置と従来の舌側矯正ブラケット(LB)を使用した際の音声パフォーマンスと口内の不快感を比較しました。結果として、C-lingualリトラクターは音声産生に少しだけ影響があることが示されました。ただし、両グループで口内の不快感は経過とともに減少し、LBグループにおいては舌の刺激がより高いことが見られました。[ Khattab, Hajeer, & Farah, 2022]

2. アメリカにおける舌側矯正の実践と医師の意見と経験
舌側矯正を実践するアメリカの矯正歯科医師を対象にした調査によれば、舌側矯正は患者の不快感、コスト、治療時間の長さ、技術的困難さなどの課題があります。しかし、治療結果に対する満足度は高く、審美性の向上と診療所の差別化が舌側矯正の主な利点として認識されていました。[ Huh, Chaudhry, Stevens, & Subramani, 2021]

これらの論文によると、舌側矯正は音声に影響を及ぼす可能性があるものの、時間の経過とともに口内の不快感は減少することが示されています。また、患者の満足度は高く、特に審美性の向上が主な利点とされています。会話時の不快感や発音の問題には、徐々に慣れることが重要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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