裏側矯正

裏側矯正の治療中に生じる悩みと解決方法は?

裏側矯正の治療中に生じる悩みと解決方法は?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

裏側矯正は歯の裏側にワイヤーとブラケット等の装置をつける方法です。裏側矯正の治療中には、どんな悩みがあるのでしょうか? 代表的なものは①発音・滑舌が悪くなる、②食べ物が装置にひっかかる、③装置が当たって舌が痛い、というものです。それぞれについてご説明します。

裏側矯正の治療中の悩み

1. 発音・滑舌が悪くなる

見た目に関してはメリットの多い裏側矯正ですが、喋りづらくなったり、発音や滑舌に影響が出ることがあります。

言葉を発する時には舌が重要な働きをします。装置を歯の裏側につけるということは、舌を置くスペースが狭くなってしまい、発音や滑舌に影響を与えます。

しかし、実際に装置が発音の邪魔になるというよりは、無意識のうちに舌が装置を避けるような動きをして、発音がしにくくなるということが多いです。

発音や滑舌に関しては、装置がついた状態に舌が慣れることで自然に改善していきます。慣れるまでには個人差がありますが、早くて1週間、遅い方でも2~3週間で慣れてしまいます。

2. 食べ物が装置にひっかかる

装置に絡まりやすいなどの理由で食べにくい食べ物があります。特に絡まりやすいのは、細めの麺類や繊維質の細長いえのき、もやし、菜っぱ類などです。

これらの食品を食べる際には、普段よりも小さめにカットしたり、太めの麺類や短いパスタを選ぶと良いでしょう。

ワイヤーも歯の裏側に装着しますので、食べ物が絡まるのも歯の裏側で、他人からは見えません。そのため人目を気にすることなく食事が出来ます。

食後は早めに歯ブラシで食べカスを取らなければなりませんが、食事中は人の目を気にする必要がないというメリットがあります。

3. 装置が当たって舌が痛い

装置が当たって舌に痛みを感じることがあります。舌の周辺は敏感なので、ワイヤーや装置が少し触れただけでも痛むことがあります。最近開発された装置は、装置が舌に当たって痛むということは少なくなったものの、完全になくなったわけではありません。

ワイヤーが舌に刺さって痛みが生じる場合もあります。後方で余ったワイヤーが舌に刺さるために起こるのですが、患者さん自身では対処できないため、早めに歯科医院にご連絡頂き、ワイヤーの調整をすると痛みはなくなります。

治療中の悩みの解決方法

裏側矯正(舌側矯正)の治療中には、さまざまな悩みや不便を感じることがあります。以下に、その解決方法をご説明します。

1. 話しづらさを解決

裏側矯正では、舌に近い位置にブラケットが装着されるため、話しづらくなることがあります。

解決方法

  • 話す練習・・話すことに慣れるために、自宅で大声で読書をしたり、鏡の前で話す練習をします。
  • スピーチセラピー・・どうしても話しにくい場合は、必要に応じてスピーチセラピストの助けを借りることも考えられます。

2. 舌の痛みや傷

矯正器具が舌に触れて痛みや傷ができることがあります。

解決方法

  • ワックスの使用・・歯科医から提供される矯正ワックスを舌に当たっている装置の部分に塗り、当たりを柔らげます。
  • 口腔ケア製品・・口内炎や傷を防ぐために、マウスウォッシュやデンタルリンスなどの専用の口腔ケア製品を使用します。

3. 食事の不便

裏側矯正中は食べ物が矯正器具に引っかかりやすくなり、食事が不便になることがあります。

解決方法

  • 食事の工夫・・硬いものや粘着性の高い食べ物を避け、細かく切ったり、柔らかい食べ物を選びます。
  • 食後の歯磨き・・食事後にすぐ歯を磨くことで、食べ物のカスが装置についたままになることを防ぎます。外出先でも歯磨きが行えるよう、携帯用の歯ブラシを持ち歩くと便利です。

4. 歯磨きの難しさ

裏側矯正は通常の矯正に比べて清掃が難しいため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。

解決方法

  • 専用の歯ブラシの使用・・裏側矯正用の専用歯ブラシを使用して、細部までしっかりと磨いて汚れを落とします。
  • 定期的な歯科健診・・定期的に歯科医に診てもらい、プロフェッショナルなクリーニングを受けることが重要です。

5. 矯正器具の脱離

裏側矯正のブラケットやワイヤーが外れる(脱離する)ことがあります。

解決方法

  • 速やかに歯科医院に連絡する・・ブラケットやワイヤーが外れた場合は、すぐに歯医者に連絡して付け直してもらいます。
  • 外れやすい場合は注意が必要・・噛み合わせが強すぎる場合やスポーツをする場合は、特に注意します。

6. 異物感

最初の数週間は、矯正器具に対する異物感を感じることがあります。

解決方法

  • 慣れるまでの期間・・時間と共に口腔内の感覚は慣れてきます。最初の数週間は忍耐強く過ごします。
  • 正しい方法で歯磨きを行う・・口腔内を清潔に保ち、異物感を軽減するために口腔ケアを徹底します。歯の裏側の装置をきれいに清掃するにはコツがありますので、早くそれを会得しましょう。

これらの対策を実施することで、裏側矯正中の悩みを軽減し、快適な治療を続けることができます。矯正中に何か問題が発生した場合は、必ず担当の歯科医に相談することが大切です。

裏側矯正の仕組み

舌側矯正は歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーをつけますので、他人からは装置がほとんど見えず、人の目を気にすることなく矯正治療を受けることが出来ます。

ブラケットは小さなボタンのような装置で、各歯に貼り付けられます。ブラケットにワイヤーを絡ませることで歯に力が加わり、歯を動かしていきます。

裏側矯正インコグニトについて

裏側矯正インコグニト

当院で使用している裏側矯正用の装置はインコグニトと呼ばれるものです。

インコグニトの特徴

インコグニトは一般的な裏側矯正の装置と比べて、メリットがたくさんありますので、ご紹介します。

  1. 歯の裏側につけるので目だたない
  2. オーダーメイドで患者さんの歯のカーブにぴったり合っている為、従来の装置よりも薄く作れる
  3. ゴールドメタルを使用しているので金属アレルギーが起こりにくい
  4. 従来の装置よりも発音がしやすい
  5. アーチワイヤーはロボットによって作製するため効果的に歯を動かせる

インコグニトは患者さん毎にカスタマイズされた装置なので、効率よく歯が動いていきます。

裏側矯正治療中の悩みと解決方法に関するQ&A

Q

裏側矯正中に発音や滑舌の問題が発生する理由は何ですか?

A

裏側矯正中に発音や滑舌に問題が生じる主な理由は、矯正装置が歯の裏側に取り付けられるため、舌のスペースが狭くなり、舌の動きが制約されることです。

Q

裏側矯正中の発音や滑舌の問題は、時間とともに改善されますか?

A

はい、裏側矯正の装置に舌が慣れることで、発音や滑舌の問題は自然に改善されます。個人差はありますが、通常は1週間から2~3週間程度で慣れることが多いです。

Q

裏側矯正中に食べ物が装置にひっかかる問題がある場合、どのように対処すべきですか?

A

食べ物が装置にひっかかる場合、食事を小さめにカットするか、太めの麺類や短いパスタなどを選ぶことがおすすめです。また、食事後は早めに歯ブラシを使って食べカスを取り除く必要があります。

まとめ

歯のキャラクター

歯を動かす際には痛みが生じますが、それ以外に起こるお悩みとして、①発音・滑舌が悪くなる、②食べ物が装置にひっかかる、③装置が当たって舌が痛い、についてご説明しました。

慣れによって改善するものもあれば、歯科医院での処置が必要なものもあります。矯正治療中を出来るだけ快適に過ごすために、ぜひ参考になさってください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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