歯科矯正全般

歯並びは年齢によって変化する?大人になって出っ歯になった人はいる?

歯並びは変化する?大人になって出っ歯になった人はいる?

子どもの頃は綺麗な歯並びだったのに、最近鏡で見ると前歯が出ているように感じることはありませんか?

大人になってからの歯並びの変化は起こり得ます。特に奥歯等が歯が抜けたまま放っておくと、短期間で歯並びが変わることがあります。

また、歯周病による炎症で歯槽骨が溶けると、歯が動きやすくなって歯並びが変わることもあります。

昔より前歯が出てきた?

昔よりも前歯が出てきたと感じる方は、まず舌癖に注意しましょう。舌の癖には色々ありますが、その中でも歯並びに影響を与えやすい癖があります。

舌先で前歯の裏を押す癖があると、歯は少しずつ外に向かって押し出され、出っ歯や受け口の原因になります。他には、上下の唇の間から下を出す癖があると、奥歯を噛んだ時に上下の前歯が噛み合わない開咬になる場合があります。

舌癖は子供の時期に治してしまうのが好ましいのですが、大人になってから癖が出る方もおられます。

大人になってから前歯が出てきた場合の原因

大人になって歯並びが崩れてくる主な原因には下記のようなものがあります。

  1. 歯周病の進行によるもの
  2. 歯ぎしりの影響によるもの
  3. 親知らずが歯を押している
  4. 歯が抜けた部分を治療せずに放置している
  5. 前歯の前方への傾斜が大きくなってきている

1. 歯周病の進行によるもの

歯周病が進行してくると、歯槽骨が徐々に溶けて歯が動き出し、歯並びが変わっていきます。歯磨きすると歯茎から出血したり、歯がグラグラし出すと、歯周病の進行が疑われますので、早めに歯科で診てもらいましょう。

2. 歯ぎしりの影響によるもの

歯ぎしりは眠っている間に無意識下で起こるため、自分で気を付けてやめるということが出来ません。歯ぎしりをしている時には、歯に強い力がかかるため、歯が動いてしまうことがあります。

また、歯ぎしりをしている部分の歯が摩擦によって擦り減ってしまい、噛み合わせが深くなった結果、前歯が出たように見えることがあります。

歯ぎしりをやめる方法は医学的にはないのが現状ですが、歯をすり減らしたり歯を傷めることのないように、夜間にナイトガードと呼ばれるマウスピースをつけて寝るという対症療法があります。ナイトガードは保険適用ですので、気になる方は歯科でご相談ください。

3. 親知らずが歯を押している

隣の歯を押す親知らず親知らずが生えてきて手前の歯を押し続けていると、歯並びに影響が出ることがあります。親知らずが他の歯を押して歯並びが悪くなる恐れがあったり、虫歯になっていたり、悪影響が考えられる場合は、抜歯の対象になることもあります。

歯科医院で親知らずの抜歯が難しい場合は、近くの大学病院に紹介状を書いて紹介するシステムになっています。

4. 歯が抜けた部分を治療せずに放置している

歯を失った後、1本くらいは大丈夫とそのままにしている場合、隣の歯が傾いてくることがあります。隣の歯が斜めになってしまうと、いざ歯を失った部分の治療をしようと思った時には、隣の歯を真っ直ぐに起こす治療が必要になります。歯を失った場合は早めに治療することが望ましいです。

5. 前歯の前方への傾斜が大きくなってきている

前歯は元々少し前方に向かって傾斜していますが、歯周病や歯ぎしりなどによって傾斜が大きくなって出っ歯になる場合があります。

前歯が出てきたと思った時の対処法

前歯の前突が目立ち始めた場合、そのままにすると不正咬合が悪化していく可能性が高いです。前歯が出てきて目立つと感じ始めた時の対処法をご説明します。

1. 歯周病や虫歯があれば早めに治療する

歯周病が進行してくると歯が揺れて動き出します。また虫歯も歯並びを悪くする原因になりますので、早めに治療を受けましょう。

歯周病や虫歯を予防するためには、毎日の丁寧なケアが必要です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも使って、歯と歯の間や歯と歯茎の間にたまる汚れを除去しましょう。

食べかすなどの汚れの中には細菌がたくさんいますので、汚れを取って清潔な状態にするだけで歯茎の状態は改善していきます。ただし、既に失われた歯周組織は元に戻りません。

2. 親知らずを抜歯する

親知らずが真っ直ぐに問題なく生えて来る方は少なく、殆どの方は斜めに生えるか、全く生えないかということになります。親知らずは一番奥に生えるため、歯ブラシが届きづらく、きれいに汚れを取り去ることがなかなか出来ません。そのため、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。

また、親知らずが隣の歯を押すと、歯並びが悪くなる原因となります。他の歯に悪い影響を与えている場合や既に虫歯が広がっている場合に限り、親知らずの抜歯が推奨されます。

3. 就寝中にマウスピースを使用する

ナイトガード

歯ぎしりの癖があると、歯が擦り減って過蓋咬合という噛み合わせの深い状態になって出っ歯に見える場合があります。出っ歯でなくても、歯ぎしりの癖がある方は、歯ぎしりから歯を守るために就寝中にナイトガードと呼ばれるマウスピースを付けることをおすすめします。

ナイトガードの作製は保険診療で行うことが出来ますので、歯ぎしりのある方は歯科に相談しましょう。

4. 矯正治療で前歯を引っ込める

前歯の突出が目立つ場合は、奥歯の噛み合わせに問題がなければ、部分矯正という方法で矯正治療が出来ます。歯全体に矯正装置をつける全体矯正と比べて、部分矯正は主に前歯2本~8本程度の歯並びを治します。

大きく歯列が乱れる前に治すと、治療期間や費用が少なく済みます。

歯並びは年齢によって変化する?に関するQ&A

大人になってから歯並びが変わることはありますか?

はい、大人になっても歯並びは変わり得ます。歯が抜けたり、歯周病による歯槽骨の減少などが原因で、特に奥歯が抜けた場合には短期間で歯並びが変わることがあります。

大人になって前歯が出てきた場合の原因は何ですか?

前歯が出てくる原因には、歯周病の進行、歯ぎしり、親知らずの圧力、抜歯部分の放置、前歯の前方への傾斜などがあります。これらの要因は歯並びに影響を及ぼし、特に前歯の突出を引き起こすことがあります。

前歯が出てきたときの対処法は何ですか?

前歯の突出が気になる場合、歯周病や虫歯の治療、親知らずの抜歯、就寝中のマウスピース使用、必要に応じて矯正治療を検討することが対処法として挙げられます。

まとめ

大人になってから歯並びが変化し、特に前歯が目立つようになる原因とその対処法についてご説明しました。大人になってから出っ歯になる場合は、歯周病の進行、歯ぎしり、親知らずの影響など、様々な要因が関与します。

これらの問題に早期に対処することで、健康的な歯並びを保ち、自信のある笑顔を取り戻すことができます。

年齢と共に歯並びが変化するかどうかに関して、研究により異なる見解があります。一部の研究では、大人の歯並び、特に下顎の切歯の整列は、時間とともに変化する可能性があることを示唆しています。たとえば、Eslambolchiらの研究では、下顎の切歯の不整列指数が時間とともに増加することが確認されています。これは、歯並びが年齢と共に変化する可能性を示唆しています。(Eslambolchi, Woodside, & Rossouw, 2008)


また、大人になってから出っ歯になることについても、一部の研究が関連しています。Khosraviらの研究では、Invisalign装置を使用した成人患者において、上顎の深い噛み合わせが改善されたと報告されています。この研究結果は、成人になってからも歯並びが変化し、特定の治療によって改善される可能性があることを示唆しています。(Khosravi, Cohanim, Hujoel, Daher, Neal, Liu, & Huang, 2017)

これらの研究結果から、年齢と共に歯並びが変化する可能性があり、大人になってから出っ歯になることもあり得ると言えます。ただし、個々の状況は異なるため、専門家の意見を求めることが重要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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