小児矯正

子供の歯並びが悪くなる理由と対策

子供の歯並びが悪くなる理由と対策

良い歯並びは、単に見た目が良くなるというだけではなく、発音や食べ物を噛むための咀嚼機能、虫歯や歯周病のなりにくさにも繋がります。しかし現代では、多くの子供たちが顎の歯並びに問題を抱えています。子供の歯並びが悪くなる主な原因とその予防策についてご説明します。

子供の歯並びが悪くなる主な原因

1. 親からの遺伝で歯並びが受け継がれる場合

子どもの歯並びについて、遺伝は無視できない重要なポイントです。親の歯並びや顎の形などの特徴は、遺伝子を通じて子どもに受け継がれやすいという傾向があります。これが子供の歯の並びに大きく影響を及ぼし、親の顎の骨格や歯並びに個性的な特徴がある場合は、必ず遺伝するわけではないものの、注意が必要です。

親の歯並びが子供に与える影響

親子

親の歯並びや顎の大きさ、形などが良好であれば、子どもの歯並びや顎の形に親からの遺伝による問題が起こるということはあまり注意しなくても良いでしょう。

しかし、親が歯並びや特徴的な顎の形などの問題をもっている場合、それが遺伝し、子どもにも同様の問題が発生するリスクがあります。たとえば、親に骨格性の出っ歯や受け口といった特徴がある場合は、親の骨格が子供に遺伝する可能性があります。

遺伝と環境の相互作用

ただし、遺伝だけが子供の歯並びを決定するわけではありません。例えば、子どもの食習慣や舌の使い方、指しゃぶりや頬杖の癖、そして毎日の歯磨きの仕方も歯並びに影響を与えます。しかし、遺伝的要因は無視できない大きな問題ですので、子供の歯並びを考える上で重要なポイントとなります。

子供の歯並びが悪い場合、それが遺伝的なものか、それとも環境的な要因によるものかを知ることは、予防策や治療法を選択する上で役立ちます。親の歯並びや健康状態を考慮しつつ、子供の環境や習慣も見直し、最適なケアをすることで、子供の顎や歯並びに将来起こりえる問題を未然に防げる可能性があります。

2. 子供の生活習慣 おしゃぶり、頬杖、口呼吸の影響

子どもの日常的な習慣が歯並びに与える影響は意外と大きいものです。特に、長期にわたるおしゃぶりの使用、頬杖をつく癖、口呼吸は、子どもの顎の発達や歯並びに大きな影響を及ぼす可能性があります。

おしゃぶりと歯並び

おしゃぶり

おしゃぶりは、乳幼児に安心感を与える効果がある一方で、長期間使用し過ぎると歯並びに悪影響を与えることが知られています。特に、おしゃぶりの使用は上顎の成長を妨げ、上の前歯が前に押されて出っ歯になるリスクを高めることが指摘されています。そのため、親は適切な時期に、子供に対しておしゃぶりの使用をやめさせることが推奨されます。

頬杖の影響

頬杖

子どもが頬杖をつく癖がある場合、それが顔の一方に持続的な圧力をかけ、顎の非対称な発達を招くことがあります。この習慣が長期にわたると、顔全体のバランスや顎の形にも影響を及ぼす可能性があります。

また、うつ伏せに寝転んでクッションや枕で顎を支えながらスマホやゲームをする癖のある子どもは、下顎が前に押し出されて顎の長い風貌になったり、噛み合わせが悪くなることもありますので、注意が必要です。

口呼吸の問題点

口呼吸

口呼吸は歯並びに悪影響を与えるとされています。口呼吸が習慣化すると、口周りの口輪筋や頬の筋力の低下が起こり、口を常に開けているため唇を閉じる力が衰えて、唇が前歯を内側に抑える力が弱いために顎が狭い形に成長することがあり、これが歯並びの乱れに繋がります。

・舌の位置は正しい場所にありますか?

口呼吸の子供は低位舌と呼ばれる、舌の位置が常に下がった状態になっていることが多いため、正しい位置に改善する必要があります。正しい舌の位置は、上顎の前歯の内側(喉側)の少し窪んだところです。食事や喋っている時以外は、この場所に舌の先がぺたっと付いているのが、正しい位置です。

正しい舌の位置

これらの習慣は、子どもの歯並びにとってリスク要因となりますが、癖に気を付けて意識して改善することで、歯並びが悪くならないようにすることが可能です。

おしゃぶり、頬杖、口呼吸の習慣は特に早期から注意し、必要に応じて専門家の助言を求めることが大切です。

食生活の乱れ

野菜

子供の食生活は、歯並びに直接的な影響を及ぼします。バランスの取れた食事と適度な硬さや大きさの食べ物を噛むことは、顎の発育を促します。逆に、やわらかい食べ物ばかりを食べることは、顎の筋肉を十分に使わないため、顎の発育不足を招くことがあります。

子供が喋りにくそうにしている時は顎や歯が原因の場合も

子供が同じくらいの子供と比べて滑らかに話すことが出来なかったり、発音がしにくいという問題がある場合は、顎や歯に原因があることがあります。何かおかしいな、と感じたら、すぐに歯科を受診し、顎や歯の状態を調べてもらいましょう。

乳歯から永久歯への生え変わりと歯並び

大人になってからの歯並びをある程度けっていするのが、乳歯から永久歯への生え変わりの時期です。この時期には、子供の口内で多くの変化が起こり、将来の歯並びに重要な影響を及ぼすため、永久歯が正しい位置に生えて来るように、それを阻害する問題点があれば早めに解決することが推奨されます。

乳歯の役割と重要性

乳歯は、永久歯が正しい位置に生えるための「ガイド」の役割を果たします。乳歯が早い時期に失われたり、適切な時期に抜けずに長期にわたって残ったままになると、永久歯の生えるスペースが不足して、歯並びが悪くなる原因となります。

永久歯の生え方と歯並び

永久歯が生える順序やタイミングは、個人差がありますが、一般的には下の前歯から始まり、上の前歯、奥歯と続きます。この永久歯の生え方が順番通りに整然と進むことで、健康的な歯並びが形成されます。

しかし、何らかの理由で永久歯が順番通りに生えなかった場合、歯が正常な位置に生えず、将来的に矯正治療が必要になることもあります。子供によって個人差がありますので、心配のない場合もありますが、おかしいな、と感じたら、早めに小児歯科を受診しましょう。

乳歯から永久歯への生え変わり時の注意点

乳歯から永久歯へ生え変わる時期には、定期的な歯科健診が大変重要です。レントゲン撮影によって、まだ歯茎に埋まっている状態の永久歯の様子がわかるため、担当医は生え変わりの状況を詳しく知ることが出来ます。

また、乳歯同様、生えたての永久歯は柔らかく虫歯になりやすいため、生え変わりの時期には正しい歯磨き習慣を身につけ、食生活に注意を払うことも大切です。

咬合誘導による子供の骨格と歯並びの改善

子供の顎の成長と発達を利用して、自然に歯並びを改善する咬合誘導と呼ばれる治療法があります。子供の顎がまだ成長を続けている間に、子供の顎の形や大きさ、上下顎の位置などが適切な状態になるように成長を導きます。

具体的には、子供の歯並びや咬み合わせの問題を早期に特定し、矯正装置を使用して、子供の顎やお口周辺の筋肉の自然な成長を利用しながら治療を行います。

成長を利用した治療のメリット

咬合誘導の最大の利点は、子供の自然な成長を利用して顎を適切な大きさに発育させ、歯が無理なく1列に並べるだけのスペースを確保することで、ある程度きれいに永久歯が並ぶことです。これによって将来に矯正治療を受けることを避けられます。※歯並びの仕上げとして、永久歯が完全に生え揃った段階で、矯正治療を行い、更に美しい歯並びに整える場合もあります。これを2期治療と呼びます。

成長期における顎の発達を適切に管理することで、永久歯が正しい位置に生えるのを助け、将来的な歯並びの問題を最小限に抑えることが可能です。

子供の日常の習慣と歯並び

子供

子供の歯並びに良い影響を与えるためには、毎日の習慣が大変重要です。適切な食事による栄養の摂取と唇の正しい使い方は、健康的な歯並びに大きな影響を与えます。

食事の役割

バラエティに富んだ健康的な食事内容は子供の身体の発達に良い影響を与えます。また、食事は歯並びにも大きな影響を与えます。

硬い食べ物を噛むことは、お口周りの筋肉を鍛え、正しい噛み合わせを発達させるのに役立ちます。また、食事の栄養バランスは、健康な歯と顎の成長をサポートします。

口の周りの筋肉を正しく使う

唇の正しい使い方も、良い歯並びを促進します。例えば、口を閉じて鼻呼吸をする習慣は、舌や顎の正しい位置を維持し、適切な歯並びを形成するのに役立ちます。逆に、口呼吸や唇を噛む癖などがある場合は、子供の顎の成長に悪影響を及ぼし、歯並びに問題を引き起こすことがあります。

子供の歯並びが悪くなる理由と対策に関するQ&A

おしゃぶりが子供の歯並びにどのような影響を与えるのか解説してください。

長期間にわたるおしゃぶりの使用は、子供の歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。おしゃぶりを長期間使用し過ぎると、上顎の成長を妨げ、上の前歯が前方に押し出され、出っ歯のリスクを高めることが指摘されています。したがって、おしゃぶりの使用は適切な時期にやめさせることが推奨されます。

子供が口呼吸をすることで歯並びにどのような問題が起きるのか説明してください。

口呼吸は、子供の歯並びに悪影響を及ぼすことが知られています。口呼吸が習慣化すると、口の周りの筋力が低下し、口を開けた状態が常態化します。これにより唇が前歯を内側から抑える力が弱まり、顎の形状が狭くなることで歯並びが乱れる原因になります。また、舌の位置が不適切になることも歯並びを悪化させる一因です。

子供の食生活が歯並びに及ぼす影響について解説してください。

子供の食生活は、歯並びに直接的な影響を及ぼします。硬い食べ物を噛むことは、顎の筋肉を鍛え、顎の正しい発達を促し、健康的な歯並びが形成されます。一方で、柔らかい食べ物ばかりを食べると、顎の筋肉が十分に使われず、顎の発育不足を引き起こすことがあります。したがって、バランスの取れた食事と適度に硬い食べ物を噛むことが歯並びには重要です。

まとめ

子供の歯並びを悪くする原因は様々で、遺伝だけでなく日常生活の習慣も大きく関係しています。しっかり噛んで食べることや鼻呼吸、正しい舌の位置などは、健康な歯並びに不可欠です。

バランスの良い食事や正しい口輪筋の使い方など、小さな習慣が子供の顎や歯の健康に影響を与えますので、毎日のケアを大切にしましょう。

子供の歯並びが悪くなる原因として、遺伝的要因や環境的要因が挙げられます。また、子供の早期における口腔衛生の管理が不十分だと、将来的に歯列不正が発生しやすくなります。例えば、虫歯、不適切な口腔習慣(指しゃぶりなど)、歯のトラウマ、乳歯の早期喪失がこれに該当します。これらの問題を早期に管理し、適切に対処することで、歯列不正の発生を最小限に抑えることができます。【Zou et al., 2018

対策としては、定期的な歯科検診を受けることが重要です。歯科医師は、子供が歯並びに関連する問題を抱えているかどうかを評価し、必要に応じて早期介入を行うことができます。特に、7歳までには一度は評価を受けるべきです。子供の場合、発達途中の状態を利用して、将来的な歯並びの問題を改善するための処置が可能です。【Martonffy, 2015

子供の歯並びに関する注意とケアについて理解を深め、適切な対策を講じることが大切です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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