部分矯正

部分矯正で奥歯だけを移動するのは可能ですか?

部分矯正で奥歯だけを移動するのは可能ですか?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

部分矯正は主に前歯をきれいに整えるための方法ですが、稀に「奥歯だけを部分的に移動させたい」というご相談もあります。虫歯や歯周病で奥歯を失った方で、歯を抜いた後のスペースを奥歯を前に移動させる部分的な矯正で埋めたいというご希望です。

部分矯正という名前からして、部分的に簡単に歯を移動させる感じがしますが、頑丈な奥歯だけを動かすことが可能なのかについてご説明します。

奥歯を部分矯正で移動出来るか?

奥歯の部分矯正が可能かというご質問に対しては、「全体矯正では可能ですが、部分矯正では難しいかもしれない」とお答えするケースが多いです。

奥歯を移動させるのが難しい理由その1

何故奥歯は部分矯正の適用が出来なくて全顎の矯正となるのでしょうか。大臼歯の大きさや、奥歯の歯根の形が鍵となります。

大臼歯の大きさはおおよそ1cmですが、それを手前に動かすには、歯の動きを促すための固定源としてミニインプラント(アンカースクリュー)の使用が必要となります。ミニインプラントを併用してのインプラント矯正は、主にワイヤーを使って歯全体を動かす場合のオプション的な治療という位置づけです。

また、奥歯の場所や向きが正しくない場合は、たいてい咬み合わせのトラブルも併発しているケースが多く、噛み合わせの治療は部分矯正で行うことは出来ません。

https://www.osaka-kyousei.com/column/1131.html

奥歯を移動させるのが難しい理由その2

前歯の場合は歯根が1本だけなので、比較的肝がんに動きますが、奥歯の歯根は3~4本あって湾曲しているので、動かすためには力が必要で、痛みが伴いますし、かなりの時間もかかります。

部分矯正のメリットは時間や治療期間を短く出来ることですが、奥歯の場合は前歯に比べて噛むための負担がかかるため、かみ合わせも含めてきちんとした治療を行う必要があります。部分矯正では完全な改善は出来ないという意味です。

以上の点から、奥歯の位置や向きに問題がある場合は、上下左右ともに全体的に矯正をして、奥歯をしっかりと正しい位置へ導くというのがより良い方法です。

ただし例外として、奥歯が一本だけ歯列からずれて少しだけ内側に入っていたり、少しだけ捻れているような場合は、部分矯正が可能かもしれません。

部分矯正とは?

部分矯正は、歯並びを部分的に治す場合の治療法です。歯科医院によってはプチ矯正、前歯矯正とも呼ばれています。

前歯が少しすきっ歯になっている方は、部分矯正で短期間できれいに治せるケースが多いです。上の歯1本だけが後ろに引っ込んでしまっているので、その部分だけを綺麗に治したいというご希望も多いです。部分矯正では主に2~8本の前歯だけを動かして歯並びを整えます。

部分矯正で可能か全体矯正が必要かによって、費用や治療期間は大きく異なりますので、どちらの適用になるかは重要です。

部分矯正と全体矯正の違い

  全体矯正 部分矯正
治療期間 約2~3年 半年~1年
痛み あり あり
噛み合わせ 治る 基本的には治らない
抜歯 抜歯を選択できる 抜歯しない
治療の種類 噛み合わせの治療 見た目を良くする

部分矯正で治療可能か、それとも全体矯正になるのかは、患者さんのご希望をお伺いした上で、担当医の診断による最適な治療方法をご説明し、それぞれのメリットやデメリットをしっかり話し合いながら決定します。

歯の重なりが大きかったり、歯を大きく動かさなければならないような歯列の場合は、患者さんのご希望に添えないケースもあります。

不正咬合の程度によって部分矯正か全体矯正か決まるの?

歯の重なり(叢生)や、出っ歯(前突)、すきっ歯(正中離開)が、いずれも軽度であれば、部分矯正で治療できる可能性はあります。装置の選択肢としては、ワイヤーやインビザライン等で、それらを装着する事によって部分的に歯並びの治療を行う事は可能です。

ただし、八重歯が口腔内にあったり、受け口、オープンバイト(開咬)、ガミースマイル、噛み合わせに関わる(過蓋咬合など)症例のケースでは全体的な治療になります。基本的には、抜歯を伴うケースは、ほぼ全顎矯正で行います。

奥歯についての基礎知識

奥歯 第1~第3大臼歯

真ん中の歯を1番として数えると、奥歯とは6番、7番、8番の事を呼びます。専門的な名称で呼べば、第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯の事です。第1大臼歯は、6歳臼歯と呼ばれ6歳ごろに生えます。また、第2大臼歯は永久歯に生え変わる12歳ごろ、一般的には親知らずと呼ぶ第3大臼歯はだいたい18~22歳頃に生える方が多いです。

第1大臼歯の歯冠部という、目に見えている歯の部分は、男性の場合で上顎10.68mm、下顎で11.53mm、女性もおおよそ0.3mm程値が低いですが、大まかにはそのような大きさのものです。<参照先:J-STAGE「成人正常咬合者の歯,歯列,顎骨の形態変化」>

部分矯正で奥歯だけを移動するのは可能かに関するQ&A

Q

奥歯の部分矯正は可能なのですか?

A

奥歯の部分矯正については、全体矯正では可能ですが、部分矯正では難しい場合が多いです。大臼歯の大きさや歯根の形が制約となります。

Q

奥歯の部分矯正が難しい理由は何ですか?

A

大臼歯の大きさや湾曲した歯根の形や歯根の数が影響しています。また、力の必要性や治療期間の長さも挙げられます。

Q

奥歯の移動にミニインプラントが必要な理由は?

A

奥歯を移動させるためには、歯を強い力で動かすための固定源としてミニインプラント(アンカースクリュー)が必要です。これによって大臼歯の移動が可能になります。

まとめ

奥歯は噛み合わせが重要

奥歯の噛み合わせは歯全体の機能面で大変重要です。奥歯の移動は部分矯正では対応出来ない場合が多いのですが、クリニックによって方針は様々です。

「どうしても部分矯正で奥歯のみ治したい」「治療費を抑えたいから、絶対に部分矯正で治したい」とおっしゃる方は、是非複数の医院を受診してセカンドオピニオンを求めましょう。

あなたに合った治療方針で行ってもらえるドクターがきっと見つかると思います。ただ、後戻りのリスクや、メンテナンス、年齢などや、院内の設備などもしっかりと確認し、予約の上、受診されることをおすすめします。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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