矯正治療を始める時期に関しては、矯正担当医の間でも様々な意見があります。ここでは一般的な治療時期をご説明します。
目次
2種類の矯正治療「歯列矯正」と「骨格矯正」
矯正治療は、歯列矯正と骨格矯正に分かれます。
歯列矯正は歯並びをきれいにするための矯正治療で、ガタガタを真っ直ぐに治したり、出っ歯を引っ込めたりするものです。
骨格矯正は顎の骨が原因で歯が出ていたり、顎の過成長が原因で受け口になっている場合に、場合によっては外科手術を行って顎骨の形を整えるという治療を行います。
成長期に小児矯正を受けるメリット
成長期に小児矯正治療をすれば、子供の成長を利用しながら顎の発育を促進したり、逆に抑制することが出来ます。
受け口のお子さんには早期治療(3歳頃~)のメリットあり
一般的に受け口は遺伝的要素が強いため、ご両親のどちらかが受け口の場合、お子さんも受け口になる可能性があります。
少しでもお子さんに受け口の兆候が見られたら、その時点で小児矯正の相談をされることをおすすめします。
早い時期に治療を開始すると、顎が過成長して受け口がひどくなる前に、顎の成長を抑えながら歯を並べていくことが出来ます。
受け口の場合は成長期を逃すと、成人してから歯列矯正をしても、歯はきれいに並んでも、横顔を見ると顎が前に出た状態になっていることが多く、外科手術をしないと下顎を引っ込めることが出来ません。
受け口の治療は3~4歳から可能です。
顎が小さいお子さんには顎を成長させるための床矯正(5~6歳頃から)
顎が小さく、乳歯の状態で既に歯が並びきらないお子さんも、成長期であれば床矯正という装置を使って顎の横幅を広げるような方向に成長を促進することが出来ます。
このように、骨格性の不正咬合の場合は子供の成長を利用して骨格の大きさや形を整えていきます。出っ歯や叢生の場合は、乳歯から永久歯に生え変わる5~6歳になったら治療を行うことが出来ます。
大人の矯正治療
大人になると、もう顎骨は成長しませんので、主に歯を動かして歯並びを整えていくことになります。大人の矯正で特に多いのは、抜歯によって歯が並ぶためのスペースを作る矯正方法です。
出っ歯や叢生の場合はその程度によって、抜歯が必要かどうかが決まります。八重歯の場合は、糸切り歯が大きく前に飛び出しているため、抜歯してスペースを作らなければ、八重歯を正常な位置に戻すことが出来ません。
骨格性の出っ歯の場合は、歯を引っ込めただけでは口元が前に出た感じが改善しませんので、外科矯正も視野に入れる必要があります。
受け口の場合は、骨格性のものが多いため、歯の向きを変えただけでは横顔がきれいになりません。しかし外科矯正をすればきれいになります。外科矯正は20歳以降に行うのが一般的です。
シニアの矯正患者さんもおられますが、歯周病になっている方は、先に歯周病の治療を受けて頂き、ある程度歯茎などの歯周組織の炎症がおさまって、健康な歯茎になってから矯正治療を開始します。
虫歯も同様に、矯正治療開始前に治療を終える必要があります。
矯正治療の時期についてのその他の要因
歯を動かすということだけを考えると、適した年齢は12歳から20歳位が良いといえます。この時期は顎骨の成長のピークを越えており、中高年の方と比べて骨が柔らかいため、歯が動きやすいです。
骨の成長のピークは、男子は12歳から13歳、女子は11歳頃といわれています。その後は男子で18歳~20歳ぐらいまで、女子で16歳~17歳くらいまでゆっくりと成長が継続すると考えられています。
また、受験期に歯列矯正が重なると、ストレスが大きくなる可能性があるため、受験期より前に矯正治療を終えられるように、治療時期を考えるのも良いでしょう。
最近では大人の矯正は一般的になりましたし、30歳前後までは矯正することに問題はありません。それ以降の年代では、個人差が大きくなりますが、若い方と比べると矯正治療の期間がやや長くなります。歯や骨に異常がなければ、歯列矯正は可能です。
まとめ
歯列矯正の場合は、5~6歳くらいから矯正治療が可能です。受け口の子どものみ、3~4歳からの治療開始をおすすめします。大人になっても矯正治療は可能です。骨格が原因の出っ歯や受け口の方は、20歳以上になると外科矯正も視野に入れる必要があります。