インビザライン

インビザラインでの治療が難しいケースはあるの?

インビザラインでの治療が難しいケースはあるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

マウスピース矯正はワイヤー矯正とは全く異なった治療方法なので、治療の階梯やゴールについては、先生方の間でも様々な意見があります。

マウスピース型矯正装置のインビザラインはどんな不正咬合でも治療出来るのかどうかについてご説明します。

インビザラインで治療が難しいケースとは?

インビザラインの治療計画は、クリンチェックと呼ばれるソフトウェア上で設計します。クリンチェックでは患者さんの口腔内データをソフトに読み込ませ、治療終了までの歯の動きをアニメーションで表示させながら、担当医が変更を加えていき、最終的な治療計画が完成します。

クリンチェックでは、理論上は全ての症例の治療が可能です。しかし、コンピューター上で歯を動かした理論上の治療計画と、患者さんの実際の歯の動きが一致しない例は多くあります。

特に外科矯正の適応となる骨格性の出っ歯や受け口の場合は、インビザラインのみで治療することは事実上は不可能です。加えて、インビザラインでの治療が難しいとされるのは、重度の不正咬合で抜歯を伴うケースです。

抜歯して歯を大きく動かす場合に、インビザラインの装置と歯の間にずれが起こってくることがあります。その場合はアライナー(マウスピース)が歯に合わなくなる度に作り直さねばならず、アライナーの到着までは、歯が動かないようにマウスピースで固定させながらの待ち期間となります。つまり、全体の治療期間が予定よりも長くなってしまいます。

インビザラインでの治療が困難になりやすい症例は?

  1. 前歯の咬み合わせが深い(過蓋咬合)・・抜歯矯正
  2. 前歯が内側に倒れている(舌側傾斜)・・抜歯矯正
  3. 重度の出っ歯(上顎前突)
  4. 受け口(下顎前突)の小児矯正
  5. 顎に左右のズレがある小児矯正
  6. 顎骨の過成長による出っ歯や受け口・・外科矯正

インビザラインファーストでの小児矯正が難しいケースとは?

インビザラインには小児矯正専用の「インビザラインファースト」というラインナップがあります。近年、小児矯正をマウスピースで行う子供たちが増えています。

インビザラインファースト

小児矯正では顎を適切な大きさに成長させながら歯を並べていきますが、マウスピースでは難しいケースは以下のようなものです。

  1. 歯が大きく捻じれている
  2. 埋伏歯がある
  3. 骨格を大きくする必要がある
  4. 大臼歯を大きく移動させる必要がある
  5. マウスピースを規定時間装着できない場合

奥歯の噛み合わせの大きなずれを伴う、重度の出っ歯や受け口の子供や、あるいは奥歯や顎に左右方向のずれがみられる子供の場合は、インビザラインでの治療は難しいです。

インビザラインでの治療方法

インビザライン

インビザラインは透明なプラスチック製のマウスピースを7~10日毎に付け替えて、マウスピースの形に従って歯を動かしていく矯正方法です。

とても目立ちにくいので人気のある矯正方法ですが、1日22時間以上の装着が推奨されていますので、治療計画通りに治療を進めるためには、毎日の装着時間をきちんと守ることが必要不可欠となります。

インビザラインでの治療が難しいケースに関するQ&A

インビザラインの治療計画はどのように立てられますか?

インビザラインの治療計画は、クリンチェックというソフトウェアを使用して設計されます。このソフトウェアでは、患者の口腔内データを読み込み、歯の動きをアニメーションで表示しながら治療計画を立てます。しかし、理論上の計画と実際の歯の動きが一致しない場合が多々あります。特に、外科矯正が必要な骨格性の不正咬合の場合や、重度の不正咬合で抜歯を伴うケースでは、インビザラインだけでの治療が難しいとされます。

インビザラインで治療が困難な症例にはどのようなものがありますか?

インビザラインで治療が困難な症例には、前歯の咬み合わせが深い過蓋咬合、前歯が内側に倒れている舌側傾斜、重度の出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)などがあります。これらの症例では、骨格の問題や、大きな歯の移動が必要となるため、インビザラインのみでの治療が難しくなることがあります。

インビザラインファーストでの小児矯正が難しいケースとはどのような場合ですか?

インビザラインファーストは小児矯正専用の治療法ですが、歯が大きく捻じれている、埋伏歯がある、骨格を大きくする必要がある、大臼歯を大きく移動させる必要があるケースなどでは治療が難しいです。また、マウスピースを規定時間装着できない場合も治療が困難になります。

まとめ

インビザライン

インビザラインは一般的に、歯を大きく水平移動させたり、歯を上下方向に動かしたり、歯のねじれを治したりするのが苦手です。装置の種類を患者さんの不正咬合に合わせて選ぶことが、スムーズな矯正治療に繋がります。

インビザラインでの治療が難しいケースには、以下のようなものがあります。

1. 重度の不正咬合や深刻な混雑
Giancottiらの2006年の研究によると、重度の不正咬合や混雑を伴う症例では、インビザラインのみでの治療が困難で、固定装置の使用が必要になることがあります。特に、上顎第一前臼歯を抜歯する場合、スペース閉鎖の段階で適切な根の傾斜を得るために固定装置が必要になることが示されています[Giancotti, Greco, & Mampieri, 2006]

2. 技術の進化に伴う可能性の拡大
Kenji (2017)によると、初期のインビザライン治療では、重度の混雑や複雑な抜歯症例、開咬症例、下顎臼歯の遠心移動症例などが治療が難しいとされていました。しかし、アライナー素材、アタッチメント、新しい力のシステムの導入により、これらの症例に対する治療可能性が広がっています[Kenji, 2017]

これらの研究によると、インビザラインは初期には複雑な症例の治療には限界がありましたが、技術の進歩により、より難しい症例にも対応可能になってきています。それでもなお、重度の不正咬合や混雑の症例では、固定装置との併用が必要になることもあります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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