インビザライン

インビザラインで治らない歯並びとは?できないケースとその対処法

インビザラインでの治療が難しいケースはあるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

マウスピース矯正はワイヤー矯正とは全く異なった方法なので、治療の階梯やゴールについては、先生方の間でも様々な意見があります。

マウスピース型矯正装置のインビザラインはどんな不正咬合でも出来るのかどうかについてご説明します。

インビザラインってどんな歯並びでも治せるの?

インビザラインは多くの不正咬合に対応可能ですが、すべてのケースに適応できるわけではありません。ただし、技術の進化によって治療できる範囲はどんどん広がっています。

「透明なマウスピースでこっそり矯正できる!」と話題のインビザライン。
でも実際には、「本当にどんな歯並びでも対応できるの?」「自分も対象なのかな?」って不安になりますよね。

結論から言うと、インビザラインは軽度から中程度の不正咬合には高い効果を発揮しますが、重度の歯並びの乱れや骨格的な問題がある場合には適応外となることもあります。

インビザラインで治療しやすいケース

  • 軽度〜中度の出っ歯(上顎前突)
  • 軽度のガタガタ(叢生)
  • すきっ歯(空隙歯列)
  • 軽度の開咬(前歯がかみ合わない)

これらは、インビザライン単独でも比較的スムーズに対応できます。

治療が難しいかもしれないケース

  • 歯が大きくねじれている(90度以上の捻転)
  • 顎の骨のずれが大きい(骨格性の不正咬合)
  • 開咬や過蓋咬合が重度で、奥歯の高さ調整が必要な場合
  • インプラントや骨と癒着して動かない歯がある場合

こういったケースでは、ワイヤー矯正や外科矯正の併用が必要になることもあります。

でも安心して下さい!「組み合わせ治療」で対応可能なケースも。

「インビザラインだけじゃ治せない」と聞くとガッカリするかもしれませんが、実は他の矯正法と組み合わせることで対応できるケースも多いんです。

たとえば…

  1. 前半はワイヤー矯正→後半にインビザラインへ切り替える
  2. 難しい部分だけミニスクリューなどの補助装置を併用する
  3. 歯の形やサイズを整える処置を加える

など、あなたに合った方法を選ぶことで「できること」が広がります!

インビザラインは万能ではありませんが、「あなたの歯並びにとってベストな方法かどうか」は歯科医師の正確な診断で初めてわかります。

「無理かも」と自己判断せずに、ぜひ一度カウンセリングを受けてみてください。
あなたの笑顔にぴったりの治療法がきっと見つかりますよ。

インビザラインで治療が難しい症例の特徴

インビザラインでの治療が難しいのは以下のような場合です。

1. 重度の歯のねじれ(捻転)

歯が大きくねじれている場合、インビザラインのマウスピースだけでは十分に回転させるのが難しいことがあります。特に90度以上の捻転がある場合は、他の矯正装置が必要になることがあります。

2. 噛み合わせに大きな問題がある場合

顎が左右にずれていたり、開咬(前歯が閉じない)、過蓋咬合(上の前歯が下の前歯を覆い過ぎる)、深い噛み合わせなどで、重度の噛み合わせの問題がある場合、インビザラインだけでは十分に噛み合わせを改善することが出来ず、ワイヤー矯正を併用して治療が行われることがあります。

3. 歯の一部が骨に埋まっている場合

一部の歯が骨に埋まっている場合、歯を引っ張って骨から出さねばなりません。しかしインビザラインの力だけでは歯を引き出すことが難しいケースもあります。この場合、ワイヤー矯正に加えてゴムかけを行うことがあります。

4. 重度の歯の前突(出っ歯)

上の前歯が大きく前に出ている場合、インビザラインでは矯正が難しいことがあります。重度の出っ歯を引っ込めるためには、歯を大きく動かす必要があり、インビザラインで治療を行うと治療期間がかなり長くかかってしまうことがあります。また、骨格へのアプローチが必要な場合は、外科矯正が推奨されます。

5. 複雑な不正咬合

歯列全体にわたる複雑な問題(例:多くの歯が大きく重なり合っている、全体的な歯列のアーチが大きくずれている場合)では、インビザラインだけでは改善が不十分な場合があります。

6. 骨格性の問題

骨格的な要因(例:上下顎のサイズや位置の大きな不均衡)が原因で歯列不正が生じている場合、インビザラインだけでは矯正できないことがあります。このような場合は、外科的な矯正手術と組み合わせる必要があります。

7. 不適切な歯のサイズや形状

矮小歯があるなど、歯のサイズや形が不規則な場合、マウスピースが歯に正確にフィットしないことがあります。マウスピース矯正ではマウスピースが歯にフィットすることが絶対条件になりますので、インビザラインでの矯正治療が困難になることがあります。

8. インプラント、骨性癒着歯の場合

インプラントや骨性癒着歯(歯根が顎骨と癒着している)の場合は、歯の周りを保護する歯根膜がなくなっているため、インビザラインに限らず、矯正治療で歯を動かすことが出来ません。その場合は、動かない歯以外の歯を動かすことで、全体的な歯列のバランスをとることになります。

インビザラインは多くの歯列矯正ケースで効果的ですが、重度の歯列不正や骨格的な問題などの複雑なケースでは限界があります。こうしたケースでは、矯正担当医と相談し、最適な治療方法を選択することが重要です。他の矯正装置や外科的処置が必要になることも多いです。

【症例別】インビザラインが難しい理由と治療法

インビザラインでは対応が難しい症例には共通の特徴がありますが、必ずしも「不可能」ではありません。他の矯正方法と併用することで、解決できるケースも多くあります。

1. 歯のねじれ(捻転)が強い場合

難しい理由

歯が90度以上回転しているような「重度の捻転」では、マウスピースの摩擦だけでは歯をしっかり回転させるのが難しいことがあります。

治療法の選択肢

  • 軽度ならアタッチメントを工夫することで改善可
  • 重度はワイヤー矯正との併用で正確な回転が可能に

Point:回転のコントロールは「トルク(ねじれの力)」が必要なので、従来のブラケットの方が得意な動きなんだ。

2. 出っ歯(上顎前突)が重度の場合

難しい理由

歯の移動量が大きくなると、マウスピースだけでは前歯をしっかり引っ込められないケースがあります。特に抜歯を伴う場合、奥歯の anchorage(固定源)コントロールが難しくなります。

治療法の選択肢:

  • 中程度まではインビザラインで対応可
  • 抜歯症例や大きな前突はミニスクリューやワイヤー矯正併用が有効

Point:抜歯後のスペースを効率的に閉じるには、「根の傾き」まで考慮できるワイヤー矯正が有利!

3. 開咬(奥歯が噛んでも前歯が閉じない)

難しい理由

マウスピースでは上下方向の歯の動き(圧下・挺出)が苦手とされており、特に奥歯の沈み込みや前歯の持ち上げは限界があります。

治療法の選択肢

  • 軽度の開咬ならアタッチメント+エラスティック併用で改善
  • 重度の場合は外科矯正や固定装置の併用が必要

Point:開咬は骨格の問題が背景にあることも多く、「かみ合わせの高さ」を変えるのはマウスピース単体では限界があるよ。

4. 歯列のガタガタ(重度の叢生)

難しい理由

スペース不足が大きい場合、歯を正しい位置に並べるにはかなりの移動量が必要になり、インビザラインでは計画通りに動かないリスクが高くなります。

治療法の選択肢

  • 軽~中度:IPR(歯の側面を少し削る処置)で対応可能
  • 重度:抜歯を伴う治療+ワイヤー矯正が現実的

Point:ガタガタの歯並びは見た目だけでなく、歯磨きもしづらくなるから、しっかり計画立てて矯正したいね!

5. 骨格性のズレ(顎の位置や大きさのアンバランス)

難しい理由

骨格の問題は、歯だけでなく上下顎のバランスそのものに原因があるため、マウスピースではアプローチができない。

治療法の選択肢

  • 軽度:マウスピース+補助装置で対応することも
  • 中~重度:外科矯正(顎の手術)+ワイヤー矯正

Point:「見た目のズレ」や「発音」「噛みにくさ」に悩む人には、外科との連携がカギになるケースが多いよ。

6. インプラントや動かない歯がある場合

難しい理由

インプラントや骨と癒着して動かない歯(骨性癒着歯)は、マウスピース矯正に限らず、物理的に動かすことができない。

治療法の選択肢

  • 動かせる歯をインプラントを基準にして整える
  • 部分的な矯正+補綴治療で噛み合わせを調整する

Point:動かせる範囲でのバランス調整が重要!治療ゴールを明確にするのが大事。


インビザラインには限界もあるけど、工夫と組み合わせで解決できる!

インビザラインはたしかに万能ではないけれど、「どこまでならできるのか?」「どんな補助が必要か?」を見極めることが大切。
経験豊富な矯正歯科医の診断を受けることで、最適な治療プランが見えてきますよ。

インビザラインの治療計画と限界

インビザライン

インビザラインの治療計画

インビザラインの治療計画は、クリンチェックと呼ばれるソフトウェア上で設計します。クリンチェックでは患者さんの口腔内データをソフトに読み込ませ、治療終了までの歯の動きをアニメーションで表示させながら、担当医が変更を加えていき、最終的な治療計画が完成します。

クリンチェックの限界

クリンチェックでは、理論上は全ての症例の治療が可能です。しかし、コンピューター上で歯を動かした理論上の治療計画と、患者さんの実際の歯の動きが一致しない例は多くあります。それは、実際にはすべての歯が同じスピードで動くわけではないからで、動きやすい歯と動きにくい歯が存在します。

まとめ

インビザライン

インビザラインは一般的に、歯を大きく水平移動させたり、歯を上下方向に動かしたり、歯のねじれを治したりするのが苦手です。装置の種類を患者さんの不正咬合に合わせて選ぶことが、スムーズな矯正治療に繋がります。

 
この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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