歯科矯正全般

歯並びについて海外ではどんな風に思われているの?

歯並びについて海外ではどんな風に思われているの?

世界各国では、日本と比較して歯に対する意識が高い傾向にあるといわれます。国ごとにその考え方や矯正治療の費用には差が存在しますので、ご説明します。

アメリカにおける歯並びの意識

アメリカでは歯列矯正を受ける人の割合が50%といわれます。アメリカでの矯正治療は広く普及しており、歯並びの悪い子供の多くが歯列矯正を受けています。

歯並びが整っていないと、清潔感がないとか自己管理ができないと見なされることもあり、就職活動に悪影響を及ぼすとも考えられています。

アメリカでは歯列矯正に保険が適用されるため、矯正治療は日本よりも安価に行えるとされていますが、保険内容によってカバーされる範囲は異なります。

低所得層の方は高額な保険に入れないため、比較的安い保険に入りますが、安い保険では歯列矯正が保険でカバーされないということもあるようです。

スウェーデンにおける歯科治療

スウェーデンの歯科医療のイメージ

スウェーデンは世界有数の歯科先進国として有名です。特に1970年に虫歯と歯周病の予防が国家戦略として位置づけられてからは、予防歯科が義務化されたため、虫歯や歯周病の患者数は大変低い数値となっています。(義務化されるまでは虫歯が多かったとのことです)

スウェーデンでは20歳未満の国民は無料で歯科治療を受けることができ、予防意識が高いため、高齢になっても多くの歯を維持している人が多いです。

また、不正咬合に対しても国が定めた基準に基づいて治療が行われ、20歳未満であれば無料で矯正治療を受けられます。

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韓国の美容への意識

韓国は美容大国とも呼ばれ、美容に対する意識が大変高く、歯列矯正も積極的に行われています。

近年の韓国では美しい顔や歯並びが社会的なステータスと考えられるようになってきていることから、主に就職活動前の10~20代の学生の間に多くの人が矯正治療を受けるようです。

韓国では歯の治療は保険適用で、虫歯と言えども自費診療となります。歯列矯正もちろん自由診療です。

日本における歯列矯正の現状

日本では歯並びに悩んでいる方が多いものの、高額な費用と歯に装置をつけるわずらわしさから、矯正治療を受ける割合はまだ低いとされています。

日本人は特に矯正治療中の見た目や不便さを理由に治療を避ける傾向があります。しかし、近年では目立たないマウスピース矯正や裏側矯正など、日本でも治療法は進化しており、こうした治療法の普及により、今後矯正治療を受ける人が増えることが期待されます。

前歯の部分矯正のみにしか使えませんが、ここ数年で低価格のマウスピース矯正を扱う歯科医院が増えたため、急激に矯正患者数が増えています。

日本人は海外と比べると歯並びの悪い人が多い?

日本人は元々顎が小さいので、歯並びの悪い人が多いといえます。ほんの少しスペースが足りない場合は軽い出っ歯になりますし、もっとスペースが足りないと歯が重なって生えてきたり、歯並びがガタガタになります。歯が一列に並びきらずに犬歯が歯列から唇側に飛び出したのが八重歯です。

更に現代では、食生活の変化などから子供達の骨格が変わってきています。顎が小さく尖っている子供が多く、小さい顎に大きな歯が生えて来ると、歯並びがガタガタになってしまいます。

また、海外と日本では歯並びに対する意識が違っており、海外で見た目に対する意識が高い国では、歯並びによってその人がどんな人であるかを査定されてしまうということになりかねません。

その点、日本では歯並びが悪いことが直接社会的な評価に繋がることはないため、歯列矯正をそれ程重要視していなかったという事情があります。

まず、歯に対する意識が少しずつ根付いて行って、少しずつ意識が高まることで、虫歯や歯周病の予防を徹底して行うということから拡まると良いと思います。

まとめ

世界各国において、歯並びへの意識は日本と比べて一般的に高く、社会的なステータスとして考慮されることもあります。

アメリカでは歯並びは清潔感や自己管理の象徴として捉えられ、スウェーデンでは国家戦略の一環として予防歯科が重視されています。また、美容大国の韓国では歯列矯正は美容としての意識が強いです。

日本ではまだ矯正治療率が低いものの、低価格のマウスピース矯正(部分矯正)の普及や意識の変化が進んでいるため、今後はより多くの人が歯並びを重要視し始める可能性があります。

海外での歯並びに対する認識について、以下の二つの論文から得られた情報を紹介します。

1. Lombardoらによる2012年の研究「Dynamic evaluation of anterior dental alignment in a sample of 8- to 11-year-old children」では、8歳から11歳の子供106人を対象にした調査で、異なる前歯の配置に関する認識を評価しました。この研究では、顔全体や口元だけの笑顔を示す動画を使用し、正常な歯並び、中央の隙間、歯の密集、突出した前歯の4つの異なる配置を示しました。結果として、正常な歯並びの笑顔が美しさと肯定的な特徴で高い評価を受けました。一方、突出したり密集した歯の笑顔は低い評価を受けました。この研究は、一般的に正常な歯並びの笑顔に高い評価が与えられる傾向を確認しています。 (Lombardo et al., 2012)

2. Verdecchiaらによる2011年の研究「Influence of anterior tooth alignment on peer perception in 8- to 10-year-old children」では、8歳から10歳の子供121人を対象に、前歯の歯並びが同年代の子供たちに与える第一印象について調査しました。この研究では、2人の魅力的な子供(男の子1人、女の子1人)のカラー写真を使用し、Adobe Photoshop 5.0を用いて、良好な前歯の歯並び、上顎前歯の突出、中程度から重度の前歯の密集の3種類の笑顔のバージョンを作成しました。調査では、8歳から10歳の子供たちが、歯並びが調和している同年代の子供たちを、誠実さ、個人的な幸福感、知性に関してより好意的に見ることが示されました。しかし、調和のとれた歯並びと密集したり突出した前歯に関して、好意的さや外交的な性格に統計的に有意な違いは見られませんでした。 (Verdecchia et al., 2011)

これらの研究から、海外では一般的に正常な歯並びが美しさや肯定的な特徴と関連付けられていることがわかります。また、子供たちも、歯並びが良い同年代の子供たちをより好意的に見る傾向があることが示されています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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