インビザライン

インビザラインで歯茎が下がる?予防方法は?

インビザラインで歯茎が下がる?予防方法は?

矯正治療では歯茎が下がる可能性がありますが、マウスピース矯正のインビザラインではどうなのでしょうか。矯正中に歯茎が下がる原因やその影響、予防・対処法についてご説明します。

インビザラインとは

インビザライン

インビザラインは、透明なマウスピース型の装置を用いて歯列を整える方法です。取り外しが可能で、従来のワイヤー矯正と比べて目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外せるため、快適に食事が出来、お口の中を清潔に保ちやすいという特徴があります。

インビザラインはワイヤー矯正と異なり、

  • 取り外しが可能
  • 目立ちにくい
  • 食事や歯磨きがしやすい

といったメリットがあります。そのため、治療中もお口の中を清潔に保ちやすいのが特徴です。

▼インビザラインについてはこちらで詳しく解説しています。

歯茎が下がるってどういう状態?

歯茎が下がった状態とは

矯正治療にはいくつかリスクがあって、その一つに「歯肉退縮」があります。 これは歯を動かすにつれて、歯茎が下がって(減っていって)歯根が露出していってしまうものですこの「歯茎が下がる」という状態は、歯周病がある程度進んだ患者さんに起こりやすいのですが、矯正によっても起こる場合があります。

歯茎が下がると、見た目が悪くなったり、歯根の部分が露出して知覚過敏を起こすことがあったり、露出した部分はエナメル質に覆われていないために柔らかく、虫歯になりやすいという問題が起こります。

そのため、なるべく退縮が起こらないように気を付けながら治療を行う必要があります。

歯茎が下がる原因

インビザラインに限らず、治療中に歯茎が下がる主な原因として、以下の点があげられます。

歯周病

歯周病は、プラークが原因で細菌が増えて、炎症が起こる病気です。進行すると、歯槽骨が溶けてしまって、歯茎が下がることがあります。

インビザライン矯正中は、1日に22時間以上というかなりの長時間、マウスピースを装着した状態で過ごすことになるため、お口の中が細菌の増殖しやすい環境になりがちです。そのため、丁寧なケアとマウスピースを清潔に保つことが大切です。

強すぎる歯磨き

セルフケアは口腔内の清潔を保つために欠かせませんが、「しっかり磨かなきゃ!」と力を入れすぎると、逆に歯茎を傷つけて退縮の原因となることがあります。特に、サイズの合わない歯間ブラシを使ったり、デンタルフロスを強く当てすぎると、歯茎を傷つけてしまい、その刺激で退縮が起こることがあります。

噛み合わせの悪さ

矯正治療中は一時的に噛み合わせが変わることがあります。この変化によって一部の歯周組織に過度な負担がかかり、炎症や退縮を引き起こす可能性があります。

歯ぎしりや食いしばり

無意識のうちに行っている歯ぎしりや食いしばりは、歯周組織に大きな負担をかけます。これらの習慣があると、退縮が起こるリスクが高まります。また、インビザラインを使用している方の中には、アライナーが壊れやすくなるケースもあるため、注意が必要です。

歯の移動距離の長さ

不正咬合で大きく乱れているケースでは、治療での歯の移動距離が長い場合、歯槽骨や組織に負担がかかり、歯茎が下がることがあります。特に、歯列を外側に拡大する必要がある場合では注意が必要で、慎重に治療計画を立てる必要があります。

インビザラインで歯茎が下がる可能性は?

インビザライン

インビザライン治療中に退縮が起こる可能性は、患者さんの口腔内の状況やケアの仕方に左右されます。適切にケアを行い、治療計画を守ることで歯茎の下がりを最小限に抑えることが可能です。

特に注意すべきポイント

  • 歯周病の予防・・定期的な健診や丁寧な歯磨きを心がけましょう。
  • 正しいマウスピースの使用・・装着時間や取り扱い方法を守ることで、歯周組織への余分な負担を回避できます。
  • 矯正治療の進行・・過剰に歯を動かすことが歯茎に負担をかける可能性があるため、進行具合を担当医に確認してもらいましょう。

歯茎が下がった場合の対処法

もし治療中に歯茎が下がっていると感じた場合は、以下の対策が重要です。

担当医への相談

原因を特定し、適切な治療を受けることが最優先です。

歯肉移植術の検討

大きく歯茎が下がった場合には、歯肉移植術が選択肢となることがあります。

日常ケアの見直し

セルフケアの方法や使用している歯間ブラシを見直し、歯茎に負担をかけないように注意しましょう。

インビザライン治療中に歯茎が下がる可能性はありますが、それは主に口腔内のケア不足や個別の環境によるものです。マウスピースの正しい使用と毎日の丁寧なデンタルケアを心がけることで、歯周組織を守りながら矯正治療を進めることができます。

歯茎が下がることによる影響

退縮によって以下のような問題が起こる可能性があります。

見た目への影響

歯茎が下がると、歯が長く見え、笑ったときの印象が変わります。また、歯間に三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができ、見た目に影響を与えることがあります。

知覚過敏のリスク

歯茎が下がることで、根元が露出し、冷たいものや熱いものがしみるといった知覚過敏の症状が現れることがあります。

虫歯や歯周病のリスク増加

歯茎が下がると、歯肉との境目に食べ物がつきやすくなり、プラークが溜まりやすくなります。その結果、感染症のリスクが高まります。

歯茎が下がるのを予防するには

インビザライン一式

歯茎が下がるのを予防するためには、日々のケアやインビザライン矯正中の行動が重要です。歯茎が下がるのを防ぐために、次のようなポイントを意識しましょう。

お口の中とマウスピースを清潔に保つ

歯周病を予防するために、お口のセルフケアを丁寧に行うことと、マウスピースをきれいに洗って清潔な状態で使うことが大切です。

毎日の丁寧な歯磨き

  • インビザライン矯正中は、プラークが溜まりやすいため、毎食後に丁寧に除去しましょう。
  • 柔らかい毛先のブラシを使用し、歯茎を傷つけないように優しく磨くことがポイントです。

歯間ブラシやデンタルフロスの活用

  • 歯ブラシだけでは取りきれない歯間の汚れは、歯間ブラシやデンタルフロスを使用して清潔を保つことが重要です。

マウスピースの定期的な清掃

  • マウスピースは、専用の洗浄剤を用いて清潔に保ちましょう。口腔内の細菌増殖を防ぐためにも、マウスピースは使用するたびに洗浄してください。

お口の中とマウスピースを清潔に保つことは、歯茎の健康維持の基本です。歯垢を取り除く習慣を徹底することで、歯茎が下がったり歯周病のリスクを大幅に減少させることが可能です。

インビザラインを正しく使う

インビザライン

担当医の指示に従って、インビザラインを正しい方法で取り扱うことも大切です。

指示通りの装着時間を守る

インビザラインは、通常1日22時間以上の装着が推奨されています。これを守ることで治療がスムーズに進み、歯や歯茎に過度な負担がかかるのを防げます。

過剰な力を加えない

装着時や取り外し時に過剰な力を加えると、歯や歯茎に影響を与える可能性があります。正しい方法で装着・取り外しを行いましょう。

インビザラインの正しい使用は、治療の成功だけでなく歯茎を守るためにも重要です。医師の指導をしっかり守りながら使用しましょう。

正しい歯磨き方法の習得

歯磨き

正しい歯磨き方法をマスターして、歯や歯茎を大切にケアしましょう。

歯ブラシの選び方

柔らかい毛の歯ブラシを選び、歯茎に負担をかけないようにしましょう。ヘッドが小さいものだと細かい部分まで届きやすくなります。今まで硬い毛のブラシを使っていた場合は、最初は柔らかい毛だと頼りなくて磨いた気がしないかもしれませんが、少しずつ慣らしていきましょう。

歯磨きの角度

歯と歯茎の境目を磨く際は、歯ブラシを45度の角度で当てると、歯垢を効率的に除去できます。

過度な力を避ける

力を入れすぎず、軽い力で円を描くように磨くことで歯茎を傷つけるリスクを軽減します。力を入れてゴシゴシ磨く癖がある方は、歯も歯ぐきも擦り減ってしまうことがありますので、鏡を見ながら、ブラシを握る力を抜いて、歯を1本ずつ丁寧に磨くことを心がけましょう。

正しい歯磨き方法を習得することで、歯茎への負担を減らし、歯茎下がりを予防できます。適切なブラッシング技術を身につけるために、定期的に歯科医師や歯科衛生士に指導を受けるのも良いでしょう。

歯ぎしりや食いしばりの対策

  • 歯ぎしりは自分で気づかない場合も多いので、家族などに指摘された場合は、ドクターに相談しましょう。
  • 食いしばりがあるかどうかは、ドクターが歯を見ただけでわかる場合があります。その場合は、夜間はナイトガードを使用する等、負担を軽減する

歯茎が下がった場合の対処法

万が一歯茎が下がってしまった場合には、早期に対処することが大切です。以下の方法で改善が期待できます。

すぐに歯科医に相談する

歯茎が下がった原因を特定して、適切な治療を受けることが最優先です。特に歯周病が原因の場合、悪化させないためにはすぐに治療を始める必要があります。

歯肉移植手術

歯茎が大きく下がってしまった場合には、歯肉移植手術が選択肢となります。この手術では、口腔内の他の部位から採取した組織を移植し、歯茎を補強します。

デンタルケアの見直し

歯茎が更に下がるのを防ぐために、ブラッシングの仕方を見直し、正しいケアを継続することが大切です。

退縮が起こった場合でも適切な対処を行えば、進行を止めたり改善したりすることが可能です。担当医に早めに相談し、必要なケアを受けましょう。

学会での報告

1. AAO(アメリカ矯正歯科学会)

内容

  • アメリカ矯正歯科学会(AAO)の情報によると、マウスピース矯正を含むすべての矯正治療で歯肉退縮が起こる可能性があることが説明されています。
  • 特に、歯を大きく移動させるケース(特に出っ歯を大きく引っ込める場合)では、歯槽骨の薄い部分で歯ぐきが下がるリスクが高まることが指摘されています。

Risks of Orthodontic Treatment(矯正治療のリスクに関する説明)

2. 日本成人矯正歯科学会(JAO)

内容

  • 日本成人矯正歯科学会では、マウスピース矯正(インビザラインを含む)についての情報を提供していますが、公式サイト上で「歯ぐきの退縮」に直接言及したページは見当たりません。
  • ただし、学会誌や症例報告などでは、矯正治療全般におけるリスクの一つとして退縮が起こる可能性についての議論がされています。

https://www.jaortho.jp/

まとめ

インビザライン矯正中に歯茎が下がることを予防するためには、毎日のデンタルケアが何よりも大切です。特に、以下のポイントを意識してください。

  1. 口腔内とマウスピースを清潔に保つ
  2. 正しい装着時間と使用方法を守る
  3. 適切なセルフケアの習慣を身につける

また、退縮の兆候が見られた場合は、すぐに担当医に相談しましょう。定期的な健診を受けることで、早期発見と適切なケアが可能になります。お口の健康を守ることで、安心して治療を進めることができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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