マウスピース

八重歯はマウスピースで矯正できる?

八重歯って魅力的じゃない?マウスピースで治療できる?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

八重歯がチャームポイントとしてまかり通るのは日本だけってご存じでしょうか?八重歯は歯科医から見ますと叢生(そうせい)という不正咬合で、マウスピースで治療をおすすめする悪い歯並びの症例です。

八重歯とはどういう状態をいうのか、どうして八重歯になるのか、マウスピースで治す治療法についてご説明していきますね。

八重歯はマウスピース矯正で治る?

八重歯は写真のように犬歯が歯列の外に大きくはみ出たように見える状態のことをいいます。犬歯が外に飛び出していると同時に、隣の歯が引っ込んで歯列の内側に入ってしまっているケースが多いです。

八重歯の治療には抜歯が必要な場合が多い

八重歯

八重歯の場合は、歯の重なりが大きく、歯が重なっていない状態に歯列を整えるためには、抜歯(症例によっては非抜歯も可能)をして、歯が動くためのスペースを作る必要があります。※非抜歯で八重歯の治療を行えるのはごく少ないケースです。

その後、抜歯によって出来たスペースを利用して歯を動かしていきますが、歯を大きく動かさなければならないため、ワイヤー矯正で行うことが多いです。

ワイヤー矯正は目立つので嫌だとおっしゃる患者さんが多いのですが、当院では目立たない白いワイヤーを使った審美的にも美しいホワイトワイヤー矯正や歯の裏側にワイヤーをつける裏側矯正(舌側矯正)も行っています。

マウスピースでの抜歯矯正は可能?

ワイヤー矯正よりは少し治療期間が長くなりますが、抜歯後の矯正治療をマウスピースで行うことも可能です。治療期間が長くなるのは、マウスピース矯正は少しずつ歯を動かしていく矯正装置だからです。

抜歯したスペースを埋めるために、始めはワイヤー矯正を行い、途中でマウスピース矯正に装置をチェンジするという方法もありますので、担当医にご相談下さい。

マウスピース型矯正とは?

マウスピース矯正とは、透明な樹脂で出来た取り外し可能なマウスピース型矯正装置で行う歯並び矯正の治療で、当院ではインビザラインという装置を使用します。クリンチェックと呼ばれるソフトウェアですべての治療計画を立て、1日に22時間の装着を続けながら定期的にオーダーメイドのマウスピースを交換して歯を移動させ、最終的にきれいな歯並びにしていく治療方法です。

よくあるご質問で「マウスピースで八重歯は治りますか」というものがありますが、1日の装着時間をしっかりと守っていただければ、八重歯はマウスピース矯正で治ります。抜歯が必要なケースであっても、インビザラインで治療可能です。ワイヤー矯正と比べると歯の動くスピードは少しずつですので、治療期間は長めになりますが、矯正による痛みは少ないです。※早く治したい方にはワイヤー矯正をお勧めする場合もあります。

マウスピース矯正のメリット

目立たないので周囲の人に矯正中であるとバレない

マウスピース型矯正装置は透明な樹脂製ですので、装着していても周囲の人から矯正しているとわかりづらいというメリットがあります。

金属アレルギーでも安心

透明な樹脂で出来ていますので金属を吹くんで折らず、金属アレルギーの方でも安心して使用出来ます。

食事と歯磨きの時は取り外し可能

マウスピース型の装置は、接客業など、どうしてもワイヤー矯正ができない職業の方に人気の矯正装置です。目立たないことに加え、食事前に外せて食事内容に制限はありません。また、外した状態で歯磨きをしっかりしていただくことで、口腔内の状態が衛生的に保てます。

日本人の不正咬合でダントツで多いのが叢生(八重歯)

日本人の不正咬合の割合

日本人は先進国の中で歯が悪い人が多いと言われており、歯並びの悪い人も多いという調査結果が出ています。

悪い歯並びの中では叢生(八重歯)が最も多いという調査結果があります。厚生労働省の平成23年の調査ですが、現在でもこの割合はあまり変わっていないものと思われます。

八重歯ってどんな状態?どうして八重歯になるの?

八重歯とは?

八重歯とは上顎の犬歯という前から3番目の歯が歯列の外に飛び出した状態のことを指します。犬歯が飛び出しているため、犬歯はどの歯とも噛み合っておらず、噛み合わせの力になりません。すると、他の歯に犬歯分の力が余計にかかってしまうので、周囲の歯の弱り方も早くなるという理由で、将来的に歯の健康状態を保てないというリスクがあります。

どうして八重歯になるの?

八重歯になる原因は歯の生えてくる順番にあります。小児の生え替わりの時期の全体の最後に生えてくるのが犬歯です。日本人は顎が小さい方が多いのですが、顎が小さいと永久歯が生えてくる十分なスペースがありません。犬歯は最後に生えてくるために、既に生えてくる場所がなく、歯列からはみ出て外に生えてしまい、それが八重歯と呼ばれる不正咬合になるのです。

八重歯のままで治療しない場合のデメリット

八重歯のイメージ

八重歯は笑った時に目立つため日本ではかわいいと思われていますが、実は欧米ではドラキュラの歯と言われて嫌われています。

もちろん「デメリットがないなら程度もそこまでひどくないし、治療費がかかる事を考えると、歯科矯正はしなくていいんじゃない?」とおっしゃる患者さんがおられても不思議ではありません。矯正治療には長い治療期間と高い費用が発生します。八重歯のデメリットは以下のようなものです。

デメリット1.歯周病や虫歯になりやすい

上下左右の歯磨きがきちんと行き届かない事により歯垢が必ず溜まり、お口の虫歯菌が増殖し、歯周病や虫歯が起きやすくなります。毎日歯磨きを欠かさなくても予防歯科の観点から八重歯がありますと、きれいに磨くことができません。

そのため、歯の神経に痛みが生じると、後々ひどい場合は抜歯になるケースもあります。歯を抜かれて放置すると歯のない部分の骨が弱り、他の歯に影響を与え、全体的に残りの歯を保てなくなります。

デメリット2.顎関節症のリスクが高まる

八重歯になる歯の名称を犬歯と言いますが、上顎の犬歯と下顎の犬歯が接触していなければ、顎が八重歯のない方と比較して、不安定な状態となります。それが原因となり、顎関節に大きな力が必要となり、結果的に顎関節症のリスクが高まってしまいます。

デメリット3.口内炎や歯周組織のトラブル

前に張り出している犬歯は先が尖っているので歯肉に当たって口内炎になることがあります。歯が正常な位置にないために、常に歯肉に当たり続けることになり、慢性的な歯周組織のトラブルとなります。

八重歯を矯正で治した方が良いのは、このような口腔内や顎関節の健康上の理由からです。

デメリット4.八重歯では噛めないので他の歯を酷使することになる

八重歯は歯列から前に飛び出ていますので、噛み合う相手の歯がありません。八重歯が物を噛むときに全く役に立っていないため、噛むときには他の歯の負担が増し、他の歯を傷める原因になることもあります。

八重歯はマウスピースで矯正可能かに関するQ&A

Q

八重歯はマウスピース矯正で治る可能性はありますか?

A

はい、八重歯はマウスピース矯正で治ることが可能です。ただし、治療期間は通常ワイヤー矯正よりも長くなることがあります。マウスピースは少しずつ歯を動かすため、八重歯の場合もマウスピースを着用し、歯を整えることができます。

Q

八重歯の治療には抜歯が必要なのですか?

A

八重歯の治療では、歯の重なりが大きいために歯を正しい位置に整えるためのスペースが必要です。このため、場合によっては抜歯が必要です。歯を動かすためのスペースを作るために抜歯を行い、その後ワイヤー矯正などで歯を動かしていきます。

Q

マウスピース矯正で抜歯矯正は可能ですか?

A

はい、マウスピース矯正でも抜歯矯正は可能です。抜歯したスペースを埋めるためには、最初にワイヤー矯正を行い、その後マウスピース矯正に切り替える方法もあります。治療期間は通常長くなる傾向がありますが、選択肢の一つとして考えられます。

まとめ

歯のキャラクター

八重歯の治療を行うには、抜歯が必要になる場合が多いです。マウスピース型矯正装置でも抜歯矯正に対応出来ますが、マウスピースで歯を大きく動かす場合は、治療期間がやや長くなります。

治療を行うと、見た目がきれいになるメリット以外にも、歯のデコボコがなくなりますので歯磨きがしやすく、虫歯や歯周病になりにくく、結果的に歯の寿命が長くなります。治療のための費用が高いうえに、後戻りをしないように保定装置をつける時間が必要になりますので、メリットとデメリットの両方を知った上で判断して頂ければと思います。

八重歯の矯正にマウスピースを使用できるかについての直接的な研究は見つかりませんでしたが、アライナー(マウスピース)を使用した矯正治療の効果と適応範囲に関する情報を提供する以下の2つの研究が参考になるかもしれません。

1. Jae Hyun Park & T. W. Kim (2009) の研究では、抜歯や手術、その他の補助的な矯正装置を使用せずに歯の動きを修正できるアライナーの使用例が紹介されています。この研究では、アライナーが単一の歯の交差咬合の修正に役立つ事例が示されており、適切なケースでは従来の装置に対する代替手段として使用できる可能性があることが示唆されています。【Jae Hyun Park & T. W. Kim, 2009

2. V. D’antò et al. (2022) の研究では、アライナー治療(CAT)の予測可能性を評価し、仮想計画された歯の動きと15段階目の終了時に達成された歯の動きを比較しています。この研究は、アライナーを使用した治療が特定の歯の動きにおいて高い予測可能性を持つことを示していますが、すべてのケースにおいて仮想計画された結果が完全に達成されるわけではないことも指摘しています。【V. D’antò et al., 2022

これらの研究結果から、アライナーは特定の矯正治療、特に軽度から中等度の不正咬合の修正に有効な選択肢であり、個々の症例に応じて八重歯の矯正にも使用できる可能性があります。ただし、八重歯の矯正にアライナーを使用するかどうかは、矯正専門医の評価と計画に基づくべきです。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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