部分矯正

部分矯正は後戻りしやすいの?どんな理由で起こるの?

部分矯正は後戻りしやすいの?どんな理由で起こるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

前歯だけの部分矯正の治療後に歯並びが後戻りしてしまう方がおられます。後戻りとはどういう状態をいうのか、そしてその原因、対処法についてご説明します。

部分矯正で起こりやすい後戻り

部分矯正で起こりやすい後戻りの原因は次のようなものです。

  1. 保定装置を使わなかった、または使う時間や期間が短かった
  2. 舌で前歯を押す癖や歯ぎしりなどが残っている
  3. 親知らずが歯を押している
  4. 本来ならば全体矯正でないと治療できない歯並びだった

1.保定装置を使わなかった、または使う時間や期間が短かった

リテーナー

歯列矯正の治療期間が終了すると、矯正装置を付ける必要がなくなる代わりに、保定装置(リテーナー)と呼ばれるものをつけます。

リテーナーにはいくつか種類があり、マウスピースなどの取り外し可能なものと、前歯の裏側に細いワイヤーをレジンで接着する固定式のものがあります。

取り外し可能な保定装置の場合は、1日の中で使う時間が決められていますので、きちんと装着時間を守っていない場合は歯が後戻りする原因になります。

リテーナーが壊れたりなくしたりして、リテーナーを全く使っていない患者さんの場合、保定を行うことが出来ないため後戻りが起こりやすいです。

2.舌で前歯を押す癖や歯ぎしりなどが残っている

歯ぎしり

下で前歯を押す癖があると、出っ歯や受け口の原因になります。そのため、癖を治さない限り出っ歯や受け口に再びなってしまうリスクがあります。

また、歯ぎしりや食いしばりなどの癖も歯に強い力がかかり、歯並びが悪くなる原因となります。これらの癖を治さない限り、常に歯が動く原因になってしまいます。

3.親知らずが歯を押している

隣の歯を押す親知らず

親知らずは殆どの場合、他の歯を常に押して生えてきます。生え方が悪いと他の歯を傷めてしまうため、既に親知らずを抜歯された方も多いと思います。

親知らずが生えてくる段階では親知らず自身も徐々に動いて位置を変えるため、他の歯を押して歯列を乱す原因になります。そして矯正治療後は、親知らずが後戻りの原因になることもあります。

4.本来ならば部分矯正では治療できない歯並びだった

部分矯正では、歯並びを治すために前歯の両サイドを僅かずつ削って、歯が動くためのスペースを作ります。

前歯の歯並びを整える為にそれ以上のスペースが必要な場合は、部分矯正での治療は出来ず、全顎矯正が必要になります。同様に、出っ歯や受け口がかなり重度の場合は、前歯を少し動かしただけでは改善出来ません。

では、重度の不正咬合を無理に部分矯正で治療した場合にどうなるかというと、歯を並べるスペースが足りないところに無理に歯を並べるため、一時的にはきれいに歯列が整っていても、後戻りを起こしやすくなります。

ガタガタの歯並びは治ったけれど、スペースが足りないために出っ歯になる場合もあります。

https://www.osaka-kyousei.com/column/5992.html

部分矯正って何?

歯並びの矯正治療は通常は全ての歯が対象になりますが、前歯の軽度の出っ歯やガタガタの場合は、部分的に矯正装置を付けて治療することが出来ます。これを部分矯正と呼びます。

軽いすきっ歯や軽い出っ歯の場合は部分矯正で比較的治りやすいのですが、不正咬合の程度によっては治せない、または治すのが難しい歯並びもありますので、ご自身の歯並びが部分矯正で治せるかどうか、まず矯正担当医の診断を受けることが必要になります。

部分矯正の診療で使用する装置はワイヤーとブラケット、マウスピースなどです。歯全体を動かす場合と比べると期間が短く、費用も抑えられますので、結婚式や成人式などのお祝い事や、面接などの大切な日に合わせて治療を開始する方も多くおられます。

部分矯正の症例

部分矯正の症例

矯正治療後の後戻りとは?どうして起こるの?

矯正の後戻りとは?

せっかく矯正治療を受けて歯並びをきれいにしても、その後歯並びが少しずつ元に戻ってしまう場合があります。これを後戻りと呼びます。

矯正治療には歯を動かして歯並びを整えていく期間と、整った歯並びの歯の位置を固定するための期間に分かれます。歯に矯正装置をつけるのは歯を動かす期間で、リテーナーをつけるのが歯の位置を固定する期間です。

部分矯正では前歯だけを動かしますので、それほど歯を動かしていないのにどうして後戻りが起こるのか疑問に思われるかもしれません。しかし歯は本来あった場所に戻ろうとする力が働くため、何も対策をせずにいるとどうしても歯槽骨の中で移動してしまい、歯列が乱れてきて後戻りが起こります。

リテーナーはいつまでつける?

可撤式リテーナー

歯列の後戻りを起こさないためには、矯正装置が外れたら必ずリテーナー(保定装置)をつける必要があります。では、リテーナーはどのくらいの期間つけなければならないのでしょうか?

歯の動きやすさには個人差があります。若い方は歯が動きやすく、矯正治療が早く終わる代わりに、後戻りも起こりやすいといえます。一般的にリテーナーは矯正に要した期間と同じくらいの年月つけることが望ましいのですが、歯が動きやすい方の場合はリテーナーをつける期間を長めにすることをおすすめします。

しかし基本的には患者さんの歯の動きをずっと観察してきた矯正担当医の指示に従うのが良いでしょう。

https://www.osaka-kyousei.com/column/6028.html

後戻りが起こってしまったらどうする?

矯正診療中

せっかくきれいに整えた歯並びが戻ってきてしまって、再び出っ歯やガタガタが気になり始めたら、すぐに矯正担当医に診てもらうようにしましょう。

どの程度後戻りを起こしているかによって、対処が違ってきます。その時点からでもリテーナーをしっかりつけることで後戻りを防げる場合もあれば、リテーナーをつけ始めた時点から歯がかなり動いてしまっており、再度矯正が必要になる場合もあります。

再治療の場合はごく軽度の不正咬合に対する部分矯正になります。

https://www.osaka-kyousei.com/column/2877.html

部分矯正は後戻りしやすいのかに関するQ&A

Q

部分矯正の治療後、後戻りが起こる主な原因は何ですか?

A

部分矯正の治療後に後戻りが起こる主な原因は、保定装置の不適切な使用、舌で前歯を押す癖や歯ぎしりの継続、親知らずの影響、本来全体矯正が必要な場合に部分矯正を行った場合などがあります。

Q

保定装置(リテーナー)はどのような役割を果たし、なぜ大切なのですか?

A

保定装置(リテーナー)は歯の位置を固定する役割を果たします。矯正治療が終了した後、歯が元の位置に戻るのを防ぐために使用されます。適切なリテーナーの使用は後戻りを防ぐ鍵です。

Q

舌で前歯を押す癖や歯ぎしりの影響は、部分矯正の後戻りにどのように関与しますか?

A

舌で前歯を押す癖や歯ぎしりは歯に強い圧力をかけ、歯並びを悪化させる原因となります。これらの癖が続いている場合、部分矯正の結果が後戻りしやすくなります。

まとめ

歯のキャラクター

前歯だけの部分矯正は治療期間が短く費用も抑えられますが、ごく軽度の不正咬合しか治せません。また、歯を動かすため、部分矯正といえどもどうしても後戻りが起こります。なるべく後戻りを防ぐために、リテーナーをしっかりと装着し、歯並びを悪くするような癖を出来るだけ治るようにしましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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