裏側矯正

裏側矯正は咀嚼しにくい? 噛みやすい食べ物とは?

裏側矯正は咀嚼しにくい? 噛みやすい食べ物とは?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

裏側矯正は歯の裏側に装置を付けますので、食べ物が装置に絡むと取るのに手間がかかります。なるべく装置に影響を及ぼさないためには、どのような食べ物に気をつければよいのかについてご説明します。

裏側矯正は咀嚼しにくい?

食事中

裏側矯正は歯の裏側にブラケットとワイヤーを付けます。そのため、装置を付けた状態で噛むと、上の歯の裏の装置が下の歯に当たってしまい、噛みにくくなる場合があります。

舌が矯正装置に当たったり、お口の粘膜に矯正装置が当たったりして、傷が出来て口内炎になる方もおられます。そうなると食べ物がしみたり、噛む度に気になったりします。

装置が当たって痛い場合や、どうしても噛みにくい場合は、早めに歯科医院にご相談下さい。

裏側矯正で咀嚼しにくい理由

裏側矯正の装置を歯つけた後、ものが噛みにくくなる理由は主に次のような点にあります。

1. 矯正装置が舌に触れるため

裏側矯正は歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着します。そのため口内が少し狭くなり、ブラケットとワイヤーが舌に触れやすいため、舌の動きが制限されて、食べ物が噛みにくくなることがあります。

舌は食べ物を歯で噛みやすい位置に動かすのに重要な役割を果たしているので、この動きの制限は咀嚼に影響を与えます。

2. 装置への慣れが必要

裏側矯正を始めたばかりの時期は、矯正装置が口内で異物感となりやすいため、普段とは異なる感覚に慣れる必要があります。慣れるまでの間は、ものが噛みづらく感じることが多いです。

3. 噛み合わせの変化


矯正治療で歯が動いていく過程で、噛み合わせが変化し、上下の歯が上手く当たらなくなることが起こります。噛み合わせの変化により、咀嚼がしにくく感じることがあります。

4. 装置による不快感

裏側矯正の装置が舌や口内の粘膜に触れることで、刺激や痛みを感じることがあります。この不快感が気になり、噛む動作に集中しにくくなることもあります。

これらの理由から、裏側矯正を始めたばかりの頃は食事の際に噛みにくい等の不便を感じることがありますが、多くの場合、時間が経つにつれてこれらの問題に慣れ、咀嚼に関する不快感は徐々に減少していきます。どうしても噛みづらい時は、矯正担当医に相談し、装置の調整を行ってもらうことで改善することがあります。

裏側矯正で食べにくい食べ物・気をつける食べ物

裏側矯正の装置が外れたり壊れたり、装置に絡まりやすい食べ物はどのようなものでしょうか。

1.装置が外れる、壊れる

餅

歯にくっつきやすいお餅やキャラメルなどは装置にもくっつき、噛んでいる間に装置が外れてしまうことがあります。

他には、硬い食べ物も力を入れて噛まねばなりませんので、装置が外れたり壊れたりすることがあります。硬い食べ物の例としては、ピーナッツなどのナッツ類や、バゲット、おせんべい、するめ、りんご、ステーキなどです。これらの食品は避けていただくか、小さく切ったり調理を工夫したりしてお召し上がりください。

2.装置にからまる

水菜

繊維質の多い野菜等は、装置に絡まってしまい、取るのに苦労します。水菜、ニラ、ネギなどの野菜や、野菜以外にもえのきや糸こんにゃく、麺類は絡まりやすいため、細かく切って召し上がるか、矯正装置がついている間は避けていただいた方が良いでしょう。

また、矯正治療中は歯が動いていますので、歯と歯の間に隙間が空いて、食べ物が挟まりやすくなります。上記の絡まりやすいもの以外に、肉やお刺身も装置に絡まったり歯の間に挟まりやすいのでご注意ください。

矯正治療中で痛みが強かったり、うまく噛めない時におすすめの食べ物

裏側矯正では、1~2ヶ月に一度の来院時に、ワイヤーを付け替えます。ワイヤーの交換をすると1~3日程度痛みを感じることがありますので、その際には出来るだけ柔らかい食事を選びましょう。

やわらかい食べ物

おかゆ

噛むと痛みがあるときには、柔らかい食べ物がおすすめです。具体的には、雑炊やおかゆ、柔らかめに煮たうどん、豆腐、卵料理、ひき肉を使った肉料理、野菜を柔らかく煮込んだスープなど。

食事がかなり辛い時に一時的に食べる物としては、スムージーやヨーグルトやプリン、ゼリーなどがあります。

調理の仕方を工夫しよう

料理矯正治療中は、あまり強く噛まずに食べられるように柔らかく煮込んだ料理がおすすめです。

しかし、柔らかい食べ物ばかりでは歯ごたえがないために飽きてしまいます。更に、消化のためにはしっかりと噛んで唾液を出すことも大切です。

装置に慣れて痛みが引いて来たら、少しずつ普段の食事に近いものも混ぜて、様々な歯ごたえのものを食べてみましょう。

ただし、あまり硬い食べ物は、噛んだ時に装置が外れたり壊れたりする場合がありますので、硬すぎる食べ物は避けましょう。

裏側矯正は咀嚼しにくい?に関するQ&A

裏側矯正はなぜ咀嚼に影響があるのですか?

裏側矯正は歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着するため、咀嚼(そしゃく、つまり噛むこと)に影響を及ぼします。装置が舌に触れ、舌の動きが制限されること、装置への慣れが必要なこと、噛み合わせの変化、装置による不快感などが主な理由です。これらの要因により、食べ物を噛む際の舌の役割が十分に果たせず、噛む動作がしづらくなることがあります。

裏側矯正中に食べにくい食べ物は何ですか?

裏側矯正中に食べにくい食べ物には、装置が外れる・壊れるリスクが高い食べ物や、装置にからまる食べ物が含まれます。具体的には、お餅やキャラメルのように歯にくっつきやすいもの、硬い食べ物(ナッツ類、バゲット、おせんべい、するめ、りんご、ステーキなど)、繊維質の多い野菜(水菜、ニラ、ネギなど)、糸こんにゃくや麺類などが挙げられます。これらの食品は矯正装置に絡まりやすく、取り除くのが難しくなるため、注意が必要です。

矯正治療中に食べやすい食べ物は何ですか?

矯正治療中、特に装置の調整後の痛みが強い時やうまく噛めない時には、柔らかい食べ物がおすすめです。例えば、雑炊、おかゆ、柔らかく煮たうどん、豆腐、卵料理、ひき肉を使った肉料理、柔らかく煮込んだ野菜スープなどが挙げられます。また、スムージーやヨーグルト、プリン、ゼリーなども適しています。

まとめ

歯のキャラクター

裏側矯正の装置を歯に付けてすぐや、ワイヤーを付け替えたりする調整した後は、痛みや違和感が出やすく咀嚼しにくくなります。そのため、硬い食べ物はさけて柔らかめの食べ物を召し上がってください。次第に装置に慣れてきて痛みも減ってきますので、そうなったら少しずつ普段の食事に近づけていきましょう。

裏側矯正(リンガルオーソドンティクス)における咀嚼に関する不便さについては、いくつかの研究が行われています。

1. 裏側矯正と口腔内の不快感
裏側矯正装置に関するシステマティックレビューおよびメタ分析では、裏側矯正は舌への痛み、発音の困難、適切な口腔衛生の維持において問題を生じることが示されましたが、食事の困難さに関しては統計的な違いは見られませんでした。【Ata-Ali, Ata-Ali, Ferrer-Molina, Cobo, de Carlos, & Cobo, 2016】

2. 裏側矯正装置と患者の応答
別の研究では、裏側矯正装置を装着した患者は、咀嚼時の痛みや舌の刺激、口腔衛生の維持において中程度の困難を経験していましたが、発音や口腔衛生の維持においては大きな困難は報告されていませんでした。【Kantharaju, Manohar, & Shivaprakash, 2021】

これらの研究から、裏側矯正装置は咀嚼においてある程度の不便さを引き起こす可能性があることが分かりますが、この不便さは時間と共に減少する可能性があります。また、患者は裏側矯正の審美性と口腔衛生の維持に満足していることが示されています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

▶プロフィールを見る