マウスピース

マウスピース矯正の装着をサボったらどうなる?

矯正のマウスピースをサボったらどうなる?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

マウスピース矯正のインビザラインでは、1日20時間~22時間以上の装着が推奨されています。もしマウスピースをつけるのをサボって装着時間が短くなったら、治療計画通りに歯が動かない、後戻りが起こるなど、矯正治療に支障が出ますので、ご説明します。

マウスピースをサボった時間が長いとどうなる?

時計

マウスピースを付けずに過ごす時間が長い場合、歯を治療計画通りに動かすことは出来ません。そればかりか、歯が元の位置に戻ろうとする力が働きますので、若干の後戻りが生じます。

せっかく歯をきれいに並べようとしているのに、マウスピースをつけない時間が長いせいで、元のガタガタや出っ歯などに戻ってしまうというわけです。治療計画通りに矯正治療を進め、一日も早くきれいな歯並びになるためには、マウスピースの装着時間を厳守する必要があります。

後戻りとは?

後戻りとは矯正治療によってきれいに整えた歯並びがまた乱れてきてしまうことを指します。矯正治療中や矯正治療直後の歯は周囲の骨がまだ不安定なので動きやすい状態になっています。矯正治療終了後は後戻りを防ぐためにリテーナーと呼ばれる装置をつける必要があります。

マウスピースの装着をサボってしまった時はどうしたらいいの?

インビザライン

マウスピースをうっかりつけ忘れてしまった場合、歯の後戻りを最小限に抑えるためにはどうすれば良いのでしょうか?

1日サボった場合

マウスピースを外していたのが1日程度であれば、すぐにマウスピースをつけることで、歯列を殆ど後戻りさせずに済みます。その後はしっかりと装着時間を守るようにしましょう。

結構長い日数サボってしまった場合

マウスピースをつけていない時間が長くなると、歯に元の位置に戻ろうとする力が働いて後戻りが発生します。歯がかなり動いてしまった場合は、次に装着する予定だったマウスピースを歯につけようとしても、歯にはまらなくなっている可能性が高いです。

無理につけると痛みが強く出ることがありますので、長期間マウスピースをつけていなかった場合は、まず担当医にご相談下さい。この場合は、マウスピースを再度作り直すことになりますが、新しいマウスピースが届く迄の間はリテーナー(保定装置)を歯につけることで、現在の歯の位置を固定させる必要があります。

※マウスピースを作り直す場合は、歯科医院によって追加費用がかかる場合と、かからない場合があります。

マウスピース矯正はマウスピースをつけないと歯が動かない

インビザライン

マウスピース矯正はマウスピースを一定期間つけ続けて、その後新しいマウスピースに替えていくことで、マウスピースの形通りに少しずつ歯が動いていく仕組みです。マウスピース1枚あたりで約0.25ミリ程度とわずかな動きですが、マウスピースをきちんと装着していれば、殆どの場合で歯はマウスピース通りに動きます。

そのため、マウスピース矯正においては、装着時間を守ってしっかりマウスピースを歯に付け続けるということが必須条件となります。推奨される装着時間は1日20~22時間以上です。

マウスピースを外していいのは食事と歯磨きの時だけ

インビザラインでは、マウスピースをしたままでの飲食はNGです。食事と歯磨きの時間は必ずマウスピースを外して行います。1日のうち、マウスピースを外していいのは1日に合計2時間までです。

マウスピースを外していいタイミング

その2時間を、1日の中で食事と歯のケアの時間に振り分けなければなりません。しっかり自己管理をして1日22時間以上の装着時間を守れるかどうかで、インビザラインでの治療を成功させられるかどうかが決まります。

※稀に動きにくい歯や、骨と癒着して動かない歯があります。その場合は他の歯を動かすことで歯列を整えていくような治療計画を作成します。

マウスピース装着をサボらない為の工夫

マウスピースの装着を忘れてしまいがちな方には、マウスピースの装着のタイミングを忘れないようにする工夫が必要です。以下のことがヒントになるかもしれません。

1.毎日の生活の中でのルーチンを決める

マウスピースの着用をつい忘れてしまうという方には、毎日の生活の中で具体的にどのタイミングでマウスピースを付けるかを決めておく必要があります。食事に要する時間を予め決めておき、食事終了のアラームをかけるなど、工夫しましょう。

2.後戻りが起きた時の影響を知る

マウスピースを装着しなければならないのにサボりが多くなってしまうと、治療計画通りに歯が動かないため、マウスピースが実際の歯と合わなくなってはまらないということも起こり得ます。そうなると、マウスピースの作り直しになり、出来上がって治療を再開するまでに2週間程度のロスが起こってしまいます。そうならないためにも、毎日しっかりとマウスピースの装着時間を守りましょう。

マウスピース矯正の装着をサボったらに関するQ&A

マウスピース矯正で装着をサボるとどのような問題が生じますか?

マウスピース矯正のインビザラインでは、1日に20~22時間以上の装着が推奨されています。装着をサボると、歯が治療計画通りに動かなくなり、後戻りが起こるリスクが高まります。歯は元の位置に戻ろうとする自然な力に影響されるため、マウスピースをつけない時間が長いと、矯正治療の効果が減少し、歯がもとの不揃いな状態に戻ってしまう可能性があります。

一日だけマウスピースの装着をサボった場合、どのように対処すべきですか?

一日だけマウスピースの装着をサボった場合、すぐにマウスピースを再装着することが重要です。一日程度であれば、歯列の後戻りを最小限に抑えることが可能です。ただし、その後は装着時間を厳守し、規則正しくマウスピースを使用することが重要です。

長期間マウスピースの装着をサボった場合はどうなりますか?

長期間マウスピースの装着をサボると、歯が元の位置に戻る力が働き、後戻りが起こります。この場合、次に装着する予定のマウスピースが歯に合わなくなる可能性があります。長期間サボった後は、無理にマウスピースを装着するのではなく、担当医に相談し、場合によっては新しいマウスピースの作成が必要になることもあります。

まとめ

マウスピース矯正治療中にマウスピースをつけるのをサボってしまった場合は、つけていない期間がどのくらいの長さかで、その後の対応が変わります。歯が大きく後戻りをおこしている場合は、お手元のマウスピースが歯に合わなくなっている可能性がありますので、一度矯正歯科を受診されることをお勧めします。

マウスピース矯正(クリアアライナー療法)の装着を怠った場合の影響について、以下の論文を参考に回答します。

1. Timmらによる研究では、クリアアライナー療法(CAT)における患者のコンプライアンス(治療への従順性)と関連する要因を後ろ向きコホート研究で評価しました。結果として、患者の36.0%が完全なコンプライアンスを示し、38.3%が適度なコンプライアンス、25.7%が低いコンプライアンスを示しました。この研究は、コンプライアンスが治療の成功に重要であることを強調しており、装着を怠ると治療の効果が低下する可能性があることを示唆しています。【Timm et al., 2021

2. Gognaらによる文献レビューでは、クリアアライナー療法における患者のコンプライアンス、臨床的有効性、社会的相互作用、および医原性の影響について概説しています。このレビューでは、治療への従順性が療法の成果に大きな影響を与えることが強調されており、マウスピースの装着を怠ると、治療の有効性や目標達成に影響を与える可能性があることが示唆されています。【Gogna et al., 2023

これらの研究に基づいて、マウスピース矯正の装着を怠ると、治療の効果が低下し、目標とする歯列の改善が遅れるか、期待した結果が得られない可能性があると言えます。患者のコンプライアンスは、治療の成果に直接的な影響を与える重要な要素です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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