小児矯正

小児矯正の急速拡大装置のメリット・デメリットとは?

小児矯正の急速拡大装置のメリット・デメリットとは?

急速拡大装置は、上顎の横幅を拡大するための固定式の矯正装置で、主に子供に用いられます。短期間で顎の横幅を拡げるのが特徴なので名前に急速という言葉が付いています。

急速拡大装置とは

急速拡大装置この装置は主に主に上顎の骨を広げるためのもので、上顎全体の幅を広げることができます。

急速拡大装置

第1大臼歯と第1小臼歯にバンドで装着し、中央にある拡張ネジにピンを指して回すことで装置の横幅が広がります。

急速拡大装置

 

急速拡大装置

上顎は左右の骨が合わさって形成されており、中央には正中口蓋縫合と呼ばれる接合部があります。この部分を拡張することで上顎の骨を分離し、上顎全体の幅を広げることが可能です。

この装置は上顎が狭い方や交叉咬合を持つ方に特に有効で、患者さんの歯列の状況に応じて使用されます。

急速拡大装置の対象年齢

急速拡大装置は上顎の正中口蓋縫合の部分を拡大することで上顎の横幅を拡げます。上顎の正中口蓋縫合が閉じる時期がおおよそ10歳前後、顎の成長が完了するのが15歳前後とされています。

そのため、上顎の横幅を拡げるのに適した年齢は、10歳から15歳の間に治療を行うと成長期に合わせて自然に上顎を拡張することができ、理想的な結果を得ることができます。

急速拡大装置は大人に対してはあまり使われることはありませんが、症例によっては使用する場合もあります。

急速拡大装置のメリット

上顎拡大後は歯の後戻りが少ない

顎を拡げてから歯を動かしますので、後戻りが起こる心配はほとんどありません。

抜歯矯正の必要がない

大人の矯正では抜歯矯正を行うことが多いのですが、急速拡大装置で上顎を拡げて歯が並ぶための十分なスペースを既に作っていますので、抜歯が必要になる程の不正咬合になることはありません。

上顎を拡げることで鼻腔が拡がり鼻通りが良くなる

上顎を拡げると同時に鼻腔も拡がるので、鼻呼吸しやすくなり、その結果呼吸が楽になります。

また、口呼吸から鼻呼吸へ改善できると、空気が鼻のフィルターを通ってから体内に入るため、風邪やアレルギーを起こしにくくなります。

急速拡大装置のデメリット

装置によって痛みや違和感がある

上顎の骨を拡げる際に痛みが起こります。装置をつけてから3~4日は痛みや違和感が出やすくなりますが、次第に慣れます。

装置によって発音がしづらくなる

装置自体がかなり大きいため、違和感によって発音がしづらくなることがあります。次第に慣れますが、早く慣れるために歌を歌ったり声を出して本を読んだりしましょう。

顔の形が変わる場合がある

上顎を拡げることで顔の横幅が僅かに広くなり、目や鼻の周辺の見た目が少し変化します。

急速拡大装置はどのくらい使用するの?

急速拡大装置は2~3週間程度で上顎がかなり広がりますが、その後骨がしっかりと固まってその状態を維持できるようになるまで装置をつけ続けます。使用期間としては通常は6ヶ月~1年程度となります。

急速拡大装置使用の際の注意点

急速拡大装置で上顎の幅を広げると、一時的にすきっ歯になりますが、やがて永久歯がきれいに並びますので、上顎の広げすぎというわけではありません。

小児矯正の急速拡大装置のメリット・デメリットに関するQ&A

急速拡大装置の主な目的は何ですか?

急速拡大装置は、上顎の横幅を短期間で拡大することを目的とした固定式の矯正装置です。主に子供に使用され、上顎の骨を広げることが可能です。

急速拡大装置の適用年齢は何歳から何歳までですか?

急速拡大装置は主に10歳から15歳の間に適用されます。これは、上顎の正中口蓋縫合が閉じる時期がおおよそこの年齢だからです。

急速拡大装置を使用する主なメリットは何ですか?

主なメリットは、歯の後戻りが少なく、抜歯矯正の必要がないこと、そして上顎を拡げることで鼻腔が拡がり鼻通りが良くなることです。

まとめ

歯のキャラクター

急速拡大装置は、特に10歳から15歳の子供たちの小児矯正で、上顎の横幅を短期間で拡張し、不正咬合になる原因である「顎が小さい」という問題を改善することができます。

メリットとしては、上顎拡大後の歯の後戻りのリスクが少なく、抜歯矯正の必要がないこと、また鼻腔の拡大による呼吸の改善などがあげられます。

一方で、痛みや違和感、発音の困難、顔の形の変化などのデメリットも存在します。しかし、これらは一時的なもので、長期的な健康と美しい歯並びを実現するための一過程と考えられます。

小児矯正における急速拡大装置(RME)のメリットとデメリットに関する論文を2件ご紹介します。

1. 【メリット】:急速拡大装置は、小児において上顎の横方向の欠損を治療する標準的な方法です。Markana (2021) によると、伝統的な急速拡大装置は、上顎の骨格的な拡大を可能にし、小児の歯列矯正治療において有益な効果があります。しかし、この研究では、従来の急速拡大装置の負の効果についても言及しています。さらに、ミニスクリュー支援急速上顎拡大(MARPE)という改善された方法が開発され、より良い骨格的拡大を実現しています。(Markana, 2021)

2. 【デメリット】:Lopponi, Maino, Dalessandri (2021) の研究では、急速拡大装置の使用中に予期せぬ合併症が報告されています。この研究では、7歳の女児2名が、鞍鼻と眼窩下血腫、および非対称な口蓋拡大を経験しました。これらの合併症は、拡大装置の除去後の数ヶ月間で次第に後退しましたが、急速拡大装置を使用する際には慎重な診断と初期治療の週に頻繁な臨床フォローアップが必要であると指摘しています。(Lopponi, Maino, Dalessandri, 2021)

これらの研究から、小児矯正における急速拡大装置は上顎の骨格的な拡大に効果的ですが、使用にあたっては合併症のリスクも考慮する必要があることがわかります。

 
この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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