部分矯正

部分矯正後に追加の治療が必要になるケースはある?

部分矯正後に追加の治療が必要になるケースはある?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

部分矯正後に追加治療が必要になるケースはある?

はい、部分矯正は気になる前歯などを整えるのに有効ですが、場合によっては追加治療が必要になることがあります。

この記事はこんな方に向いています

  • 部分矯正を検討しているが、本当に終わった後に満足できるか不安な方
  • 「追加治療」や「後戻り」のリスクについて事前に知っておきたい方
  • 全体矯正との違いを理解し、治療計画を慎重に立てたい方

この記事を読むとわかること

  1. 部分矯正後に追加治療が必要になる典型的なケース
  2. 追加治療が必要になる理由とその対策
  3. 部分矯正を選ぶ際に注意しておきたいポイント

 

部分矯正後に追加治療は必要になることがある?

部分矯正は短期間で前歯の見た目を整えたい方に人気の治療法です。しかし、治療範囲が限定されているため、全体的なかみ合わせや歯並びのバランスが十分に改善されず、追加治療が必要になるケースがあります。見た目の改善に成功しても、かみ合わせや機能面に問題が残れば、後から調整や全体矯正が必要となる可能性があります。

部分矯正後に追加治療が必要になることは珍しくなく、かみ合わせや歯並び全体のバランスが影響します。

なぜ部分矯正後に追加治療が必要になる場合があるの?

部分矯正が追加治療に発展する理由は「治療範囲の制限」と「全体のバランス不足」にあります。部分矯正は前歯や一部の歯を整える治療ですが、奥歯とのかみ合わせがそのまま残されるため、見た目は改善しても咬合のズレが残ることがあります。さらに、加齢や生活習慣によって歯並びが動くことで、後戻りが起きやすい点も理由のひとつです。

部分矯正は治療範囲が限られるため、全体のバランス不足が追加治療につながります。

具体的にどんなケースで追加治療が行われるの?

部分矯正後に追加治療が必要となるケースは、決して一部の例外ではありません。治療の目的や方法、生活習慣、加齢など、さまざまな要因が重なって発生します。代表的なものとして「後戻り」「かみ合わせの不具合」「見た目への不満」「成長や加齢による変化」がありますが、それぞれの背景には明確な理由が存在します。

これらを理解することで、部分矯正を検討する方が現実的な期待値を持ち、治療計画をより安心して進められるようになります。

追加治療は後戻り・咬合不良・見た目の不満・加齢変化などで必要になります。

1. 後戻りが起きた場合

部分矯正の最大のリスクは後戻りです。リテーナー(保定装置)の装着を怠ると、せっかく整えた歯が元の位置に戻ろうとします。

原因 → リテーナー未装着、歯ぎしり、食いしばり、舌癖

追加治療内容 → 再矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正による再度の歯列調整)

後戻りは患者さんの協力度に大きく依存するため、術後管理がとても重要です。

2. かみ合わせに不具合が生じた場合

前歯だけを整えても、奥歯のかみ合わせが乱れたまま残るケースがあります。

症状 → 奥歯に過度の負担、咬みにくさ、顎の疲れ

追加治療内容 → 全体矯正でかみ合わせを再構築、場合によっては顎関節治療も必要

見た目の改善と機能のバランスを取ることが難しい場合、部分矯正だけでは限界があるといえます。

3. 審美的な満足度が不十分な場合

「前歯のねじれは治ったけれど、笑ったときの全体的な歯並びがまだ気になる」など、仕上がりに不満を感じるケースもあります。

原因 → 部分的な移動では対応できない歯列不正

追加治療内容 → 全体矯正や補綴治療(被せ物・詰め物で形態修正)

美しさへのこだわりが強い患者さんほど、部分矯正だけでは満足できず追加治療を希望する傾向があります。

4. 成長や加齢による歯並びの変化

年齢に伴い歯や顎の位置は少しずつ変化します。とくに若年者は顎の成長が続いているため、治療後に歯並びが変化する可能性があります。

症状 → 再度のすき間、歯の重なり、顎のズレ

追加治療内容 → 再矯正、かみ合わせの調整、必要に応じて補綴治療

部分矯正は「その時点での歯並び」を整える治療であるため、将来的な変化まで完全に防ぐことは難しいのです。

5. 歯や歯周組織のトラブルが生じた場合

部分矯正後に虫歯や歯周病が進行すると、歯の位置が崩れて追加治療が必要になります。

原因 → 歯垢コントロール不足、歯磨き不良、定期健診の未受診

追加治療内容 → 虫歯治療、歯周治療後の再矯正

部分矯正を長期的に安定させるには、矯正後の口腔管理が不可欠です。

ケース 主な原因 起こりやすい症状 追加治療の内容
後戻り リテーナー未使用、歯ぎしり 歯が元に戻る 再矯正
咬合不良 奥歯のズレ 咬みにくさ、顎の疲れ 全体矯正・顎関節治療
審美的不満 部分矯正の限界 笑顔のバランスが悪い 全体矯正・補綴治療
加齢変化 顎の成長、歯の移動 再度の歯列不正 再矯正・かみ合わせ調整
歯の病気 虫歯・歯周病 歯列の崩れ 歯科治療+再矯正

このように、部分矯正後に追加治療が行われるケースは多岐にわたります。共通するのは「部分矯正だけでは歯列全体の安定性を確保しにくい」という点です。追加治療を防ぐためには、最初のカウンセリングで自分の希望と現実のギャップを確認し、予測されるリスクを理解しておくことが大切です。

追加治療を避けるためにできる工夫はある?

部分矯正後に追加治療を避けるには、日々のケアと定期的な健診が欠かせません。

  1. 保定装置(リテーナー)の適切な使用
     → 治療後に歯が動かないよう、リテーナーを医師の指示通りに使用することが大切です。
  2. 歯磨きと歯垢コントロール
     → 歯周病や虫歯で歯が失われると、歯列全体が崩れて追加治療のリスクが高まります。
  3. 生活習慣の見直し
     → 歯ぎしり、片側だけでの咀嚼、口呼吸といった習慣は歯列の安定を妨げるため、改善が必要です。
  4. 定期健診の受診
     → 矯正後も歯科医院で定期的にチェックを受けることで、歯の動きや咬合の問題を早期発見できます。

追加治療を避けるには、リテーナー・ケア・生活習慣改善・定期健診が重要です。

全体矯正と比較したときの追加治療リスクの違いは?

全体矯正は歯列全体をコントロールするため、かみ合わせや歯並びのバランスを総合的に整えられます。一方で部分矯正は治療範囲が限られるため、どうしても追加治療の可能性が高くなります。短期間・低コストというメリットと引き換えに、追加治療のリスクを理解したうえで選択することが大切です。

部分矯正は全体矯正より追加治療リスクが高い点に注意が必要です。

部分矯正を検討する方が知っておくべき注意点は?

部分矯正を検討している方は、事前に「どの程度の改善を望むのか」「将来的に追加治療が必要になる可能性」を理解することが重要です。歯科医師との相談では、部分矯正と全体矯正の両方の治療プランを比較検討するのがおすすめです。

  1. 自分の希望を明確にする
     → 「見た目だけ改善したいのか」「かみ合わせも含めて整えたいのか」を整理しましょう。
  2. 複数の治療法を比較する
     → 部分矯正と全体矯正、被せ物治療などの選択肢を比較して納得できる方法を選ぶことが大切です。
  3. 将来の変化を考慮する
     → 加齢や生活習慣による歯並びの変化も見据えて治療を計画しましょう。

部分矯正を検討する際は、希望・選択肢・将来性を考えて治療計画を立てましょう。

まとめ

部分矯正後に追加治療が必要になるケースは珍しくありません。後戻り、かみ合わせの不具合、審美的不満、加齢による変化などが原因です。しかし、リテーナーの使用や生活習慣の改善、定期健診によってリスクを抑えることができます。部分矯正を検討している患者さんは、メリットとリスクを理解した上で歯科医師と相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。歯科医師免許取得後、医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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