気になる前歯が1本だけ出っ歯で歯並びを治したい場合、部分矯正で治療出来るのでしょうか? 前歯1本の矯正治療についてご説明します。
目次
部分矯正のメリット・デメリット
部分矯正のメリット
前歯だけの部分矯正は、全体的に歯を動かす矯正治療と比べて、治療期間が短く、コストも抑えられることが多いのが特徴です。そのため、前歯だけが気になる場合、全ての歯を矯正する必要はなく、部分的に矯正装置をつける部分矯正で、歯並びの見た目を改善することが出来ます。
部分矯正は、主に前歯の一部の歯並びが気になる方で、噛み合わせに問題がない場合に適応されます。
- 治療期間が短い・・歯全体を動かすよりも短期間で治療を終えることが出来る
- 治療費が安い・・部分矯正は全体矯正よりも費用が安く設定されている場合が多い
- 痛みが少ない・・全体矯正ほど大きく歯を動かすことがないので痛みが少ない
部分矯正のデメリット
- 軽度の不正咬合しか治せない・・部分矯正は主に前歯2~8本程度の軽度の不正咬合に適用される
- 噛み合わせは治せない・・全体の歯並びを治すわけではないため噛み合わせは治せない
部分矯正とは?
例えば「前歯1本だけが前に飛び出ている」、「前歯1本だけがねじれている」、「前歯1本だけが隣の歯とわずかに重なっている」等、気になる歯1本だけ歯並びを改善したい方は多くおられます。その場合は、部分矯正と呼ばれる治療方法で治る場合が多いです。
部分矯正は、通常の全体矯正とは異なり、全ての歯をカバーするのではなく、特定の歯の歯並びのみを治療します。この方法は、前歯に対して行うことが多く、見た目の問題を解決するのに向いています。
全体矯正と比較して、部分矯正は治療期間が短く、患者さんの負担も少なくなることが多いです。また、部分矯正は、見た目の改善を希望する大人の患者さんに特に人気があります。
部分矯正は軽度の不正咬合に向いており、前歯1本だけの歯列を整えたいという場合でも、前歯が2本殆ど重なって二重に生えている場合などは、歯を大きく動かす必要があるため、部分矯正では難しいケースとなります。部分矯正が可能かどうかは、担当医の診断によって決まります。
部分矯正が適しているケース
部分矯正は、以下のようなケースに向いています。
- 軽度の不正咬合・・小さな重なりやわずかな傾きがある場合。
- 後戻りの治療・・以前に矯正治療を受けて歯並びがきれいになったが、時間が経過するにつれて歯が動いて元の位置に戻ってくる「後戻り」が起こっている場合。
部分矯正で治しやすいのは前歯2本~8本の範囲で、軽度のガタガタ(叢生)や出っ歯、受け口、一度矯正したけれどリテーナーの付け忘れなどでしっかり保定が出来ずに歯列が後戻りしてしまった場合などです。簡単に治る程度の不正咬合が部分矯正の適用となります。
軽度の不正咬合であっても、奥歯の噛み合わせに問題がある場合は、部分矯正での治療は難しいため、全顎矯正になります。そのため、気になる前歯1本だけを治したい場合でも、奥歯の噛み合わせを矯正で治す必要がある場合は、全顎矯正の適用となりますので費用と治療期間が部分矯正よりも多くかかることになりますので注意が必要です。
一般的に部分矯正では治せないケース
一般的に部分矯正では治せない不正咬合は以下のような場合です。
- 重度の叢生
- 全体の噛み合わせが悪い
- 八重歯
- 骨格上の問題がある出っ歯や受け口
前歯1本だけの問題でも部分矯正で治らないケース
前歯1本だけの問題でも、部分矯正で治らない場合があります。これにはいくつかの理由が関連しています。
1. 歯列全体の問題が隠れている場合
前歯1本だけに問題があるように見えても、その背後には全体的な噛み合わせの問題や顎の骨格の問題が隠れている場合があります。たとえば、歯列全体の不均衡や顎の位置のズレが、1本の前歯に異常な圧力をかけている可能性があります。このような場合、部分矯正では根本的な原因を解決できません。
2. 噛み合わせのバランスの考慮が必要な場合
歯並びの問題は、見た目の問題だけでなく、噛み合わせ(上下の歯が噛み合う関係)に大きく影響します。前歯1本だけを矯正する場合でも、その歯の位置変更が咬合に影響を与え、他の歯や顎の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、全体の咬合バランスを考慮せずに部分矯正を行うと、期待した結果が得られないことがあります。
3. 審美的に満足のいく結果が得られない場合
前歯の場合、見た目は非常に重要です。部分矯正を行った結果、その1本の歯が他の歯と異なる色や形になる可能性があります。また、隣接する歯や歯茎のラインの調和が取れなくなる場合があります。このような場合、全体的な審美性を考慮した治療計画が必要になります。
4. 複雑な治療計画が必要な場合
前歯1本だけの問題であっても、その歯の位置や状態によっては、移動に必要なスペースの確保や周囲の歯との位置の調整など、思いの外複雑な治療計画が必要になることがあります。場合によっては、部分矯正だけではなく、抜歯や他の矯正手法を組み合わせる必要が出てくるかもしれません。
これらの理由から、前歯1本だけの問題でも、部分矯正が適切でない場合があります。その場合、詳細な診断と矯正歯科医との相談によって、総合的なアプローチを選択することが必要になります。
前歯1本だけを動かすための矯正装置
以下の装置は部分矯正、全体矯正どちらにも使えます。
マウスピース矯正
インビザラインという透明のマウスピースを使います。まずiTeroと呼ばれる光学スキャンで歯型を取り、データ上できれいな歯並びに変わるまでのクリンチェックと呼ばれる治療計画のデータを作成します。
治療計画に合わせて、少しずつ歯が動いた状態のマウスピースが規定枚数作られ、患者さんは1日22時間マウスピースをはめ、2週間程度で新しいマウスピースに交換していくことで、歯を動かして歯列を整えていきます。
ワイヤー矯正
前歯6歯にブラケットと呼ばれる小さなボタンのような装置を貼り付け、それにワイヤーを通して歯に力をかけて歯を動かしていきます。全顎矯正の場合は全ての歯にブラケットとワイヤーをつけます。
当院ではブラケットは主に白いセラミック製のものを使用しますので、金属のブラケット程目立ちません。また、ワイヤーも銀色のワイヤーに白い樹脂を巻いたホワイトワイヤーを使うと目立ちにくくなります。
裏側矯正
ブラケットとワイヤーを歯の裏側につけます。当院ではインコグニトという名前の装置を使っており、従来の裏側矯正の装置よりも薄く、違和感が少ないです。
部分矯正、全顎矯正共に使用できます。
【動画】お手軽にできる部分矯正とは
歯を動かすスペースの作り方「IPR(スライス・ディスキング)」
部分矯正で歯を動かすスペースを作る場合に、殆どの場合で行われるのがIPRです。スライス、ディスキングなどとも呼ばれます。
IPRは前歯の両端のエナメル質の部分を0.25ミリ~0.5ミリだけ削ります。エナメル質自体の厚さは1.5ミリありますので、少し削ったくらいでは痛みを感じませんし、削った部分が虫歯になることもありません。
IPRで歯を削ることによる歯へのダメージは殆どありませんので、ご安心ください。
歯の1本1本に対してIPRの処置をする際には、患者さんは振動を感じます。しかしエナメル質には神経がないため、痛みを感じることはありません。
前歯1本だけの部分矯正に関するQ&A
前歯1本だけの歯並びはどのように治療すれば良いですか?
前歯1本だけの歯並びは、部分矯正で治療が可能な場合が多いです。前歯2~8本程度に矯正装置をつけて歯を移動させます。
部分矯正では、どのような歯の問題を治療できますか?
部分矯正は前歯1本だけのねじれ、歯とのわずかな重なり、前に突き出ている歯など、前歯1本に関連する歯並びの問題を治療するのに適しています。
部分矯正で前歯1本だけを治す場合、周囲の歯も動かす必要があるのですか?
はい、周囲の歯も動かす必要があります。歯をきれいに一列に並べるためには、気になる1本の歯だけを動かすのではなく、周囲の歯も移動させる必要があります。
まとめ
気になる前歯1本だけを治したい時には、部分矯正の適用となります。重度の不正咬合や噛み合わせの治療が必要な場合は、全顎矯正となります。