不正咬合の種類によっていつからスタートするかは違ってきます。
目次
子供の受け口はいつから治療を始めるのか?
受け口は、反対咬合と呼びます。お子さんの上と下の歯の重なりが逆になっている場合の不正咬合のことです。
受け口に限っては、早くから始めた方がいいです。私どもでは、3歳から受け口の治療を始めています。
3才から使える受け口治療用マウスピース「ムーシールド」
3歳という低年齢から使用できるムーシールドという名前の治療装置があります。
ムーシールドはマウスピース型の装置で、舌を正しい位置に置けるような構造になっており、それによって上あごの成長を促進するというものです。
ムーシールド以外のマウスピースは、もう少し年齢が上がった5~6歳から使います。受け口などを治すマウスピースがあり、それを使います。
上あごの成長を促す「上顎前方牽引装置」
受け口の原因を、皆様どうお考えでしょうか。受け口は下あごが成長して長くなっていると思っている方が多いです。ですが、本当は少し異なります。
受け口の方の多くは、上あごの成長不足です。専門的には劣成長と呼びますが、上あごの成長不足によって相対的に下あごが出てしまっているお子さんが多いです。
その場合には上顎前方牽引装置というもので、前に引っ張ります。上あごを前に引っ張ると、横顔のEラインが綺麗になります。
上あごを引っ張る治療は、大体9歳までに行います。遅くとも10歳まででないと、上あごを成長させるのは難しいですので、上あごの成長不足の方は、10歳までに行ってください。
何故かというと、上あごの成長は、10~11歳位で終わってしまいます。下あごは長管骨と言って、足や腕の骨と一緒です。身長は16~18歳まで伸びますが、下あごは足の骨と一緒なので、18歳まで伸びます。
ただ、上あごは11歳位で成長が終わるので、成長が終わるまでに、上あごを前方に引っ張って治すことは大事になります。
12才を過ぎたお子さんの下あごの成長を抑制する「チンキャップ」
12歳を過ぎたお子さんにはチンキャップという装置を使います。英語で下あごをchinと言いますが、下あごにキャップをつける方法です。それにより、下あごの成長を抑制する効果があります。
しかし現在ではこのチンキャップは下火になりました。チンキャップを使うと、顎関節に異常が出てくることがあります。とはいえ、悪い装置ではありませんので、これを使うこともあります。
骨格性の受け口の治療は3才から始める
受け口の方は3歳から治療を始めてください。3歳の時点では受け口でなくても、永久歯が生え揃った時点や、もしくは6~7歳に永久歯が生えてきた時点で、受け口になることがあります。
受け口の原因が骨格だった場合、直ちに治療を始める事をおすすめしますが、骨格に問題はなく、歯が1本だけたまたま逆になってしまったという事が実際にあります。
そういう場合は、直ちに治療を始めなくて良いです。微妙なところではありますが、受け口になっているとわかった場合にはとにかく低年齢で、矯正歯科医院に足を運んでください。
出っ歯の治療は6才から始める
出っ歯の場合は、受け口の場合よりも、急がなくていいです。6~7歳位から治療を始めても充分に治ります。出っ歯になる原因は、口呼吸を習慣にしているということがあげられます。
口呼吸をすると出っ歯になりますし、舌を出すくせがある場合も出っ歯になります。
あと出っ歯ではないのに、出っ歯に見えるケースがあります。下あごが後ろに下がっているだけの、下あごの劣成長によって出っ歯に見えることも実際にあります。
この場合、男の子なら18歳、女の子なら16歳まで下あごは成長しますので、あまり焦る必要はありません。治療を始めるまでに少し待っても大丈夫です。
上あごが出っ歯の場合、6~7歳から治療を始めて、原因から治す事はした方がいいですがストレートに骨格にアプローチをしたり、歯そのものに治療を行う事は、6~7歳位のお子さんの出っ歯の治療では行いません。
歯並びがガタガタになる原因
乳歯の時に歯並びが良いのに、永久歯で歯がガタガタになることが大変多いです。その理由は、乳歯よりも永久歯の方が大きいからです。乳歯で歯並びが綺麗に揃っていたとしても、乳歯より大きい永久歯が生えてきたら、どうしても歯と歯が重なってしまいます。
永久歯は6歳頃に、上の前歯や下の前歯が生えてきます。7~8歳になり、前歯が4本ずつ生えた時に、ガタガタになってしまうことがあります。
単純な原因としては、お口が小さいから、歯が重なって生えてしまいます。お口の小ささの解決法として、ただ単にお口を広げることも出来ますが、お口の小ささの原因そのものを、マウスピースで治す方法があります。
口呼吸や、舌のくせ、あとは食べ物も関係します。柔らかいものばかり食べると良くありません。食べ物については、柔らかい物ばかり食べていると、お口は小さくなると実証されています。
大学の実験室ではラット(ねずみ)を実験に使うのですが、ラットは、子供をすぐに産みます。ラットに柔らかい食事ばかりを与えると、親子孫わずか3代で、孫世代のラットのあごは小さくなります。
他には、江戸時代後期の徳川将軍は、あごが小さく細いという話があります。何故、あごが小さいかというと、お殿様は硬いものを好まず、柔らかいものばかり食べていたようです。それにより、徳川将軍のあごが小さくなりました。
歯並びがガタガタの場合はマウスピースまたは拡大装置で治す
歯がガタガタの場合は、お口が小さい事をマウスピースで原因から治す治療方法、あるいは、形態的に治すという方法があります。
形態的に治すとは、お口を大きくする拡大装置を使用する治療法です。これは拡大装置だけではなく、原因をマウスピースで治してから、拡大装置を行う治療法となります。
拡大装置だけでは厳しく、マウスピースだけでも治りにくい事も多いです。拡大装置は、種類が多く具体的には言いませんが、拡大装置以外にも、最近流行りのインビザラインというマウスピース型の矯正装置があります。
インビザラインの子供版でインビザラインファーストという装置がありますが、インビザラインファーストを使って、歯並びを治すという方法があります。
お子さんの場合は成長しますのでお口も大きくできるため、お口を大きくしながら、インビザファーストで歯並びを治すという事も出来ます。
まとめ
「子供の矯正はいつからするの?」という事につきましては、一概に答えはありませんが、まとめて言いますと、くせがある場合は直ちに、受け口の場合はできたら3歳から、出っ歯の場合は6~7歳がベストです。
ガタガタの場合は出来たら6歳、どれだけ遅くとも9歳までです。10歳以上になりますと、治らないことはないですが、ガタガタは治りにくいです。
10才から治療を始める場合は、「あと2年待って永久歯が生えそろってから治しましょう」「普通の大人の矯正をしましょう」となる可能性が高いです。
いずれにしても、子供の矯正は最低でも9歳までには治療を開始し、治していただければと思います。
舌で前歯を押すなどの癖が原因の場合は9歳でも治ります。ただ、癖は小学校の5~6年生位になれば、治りにくくなります。中学生になれば殊更治りにくいです。癖が原因の場合は、出来たら早めに癖を治す治療を開始されるのが良いでしょう。
つまり、舌の癖が原因の場合ならば、せめて10歳未満で治療を始めていただきたいです。ガタガタは9歳以下、出っ歯は6~7歳以下、受け口ならば3歳での治療をおすすめします。